【完結】【R18】社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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終章.最上級の愛をキミに

俺、キミに見せたいもんがあるんよ

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「ねぇくるみ、さっきからずっとゴソゴソしちょるけど身体、大丈夫なん? つらくしんどぉない?」

 数日前まで何もしていなくても真っ青な顔をして横になっていることが多かったくるみが、新居へ移ってきた初日だからだろうか。

 やたらハイテンションにチョロチョロと動き回っているのが不安でたまらない実篤さねあつだ。

 引っ越し自体は体調がかんばしくなかったくるみの負担を減らしたくて業者に頼んでほぼ済ませてあったし、荷解きもあらかた実篤が終わらせていた。

 それでも細々としたものはやはりくるみも手出しがしたいようで、今みたいにリビングへ飾るパネル選びに余念がないのだ。

 三月三十一日――。
 たまたま大安吉日だった今日は水曜日で、実篤が休みの日だったから。
 三月十九日に引き渡しのあった新居へ、いよいよこの日から本格的に拠点を移そうということで、くるみを連れてきたのだけれど。

 くだんのようにくるみがやたらとテンション高めではしゃぐから。実篤はそれが心配でたまらないのだ。

「え? 大丈夫ですよ。このところ気持ち悪いんもなくなってのぉなって食欲も戻ってきましたけん。うち、絶好調です」

 そこでこぶしを振り上げるようにして元気、元気とニコッと笑うと、
「先の健診でも、順調にすくすく育っちょるって病院の先生も太鼓判押してくれたじゃないですか。――お忘れですか?」

 言いながら、くるみがほんの少し目立ち始めたお腹を愛しそうにすりすりと撫でる。

「むしろ動ける時は動いた方が安産にも繋がる言われたん、実篤さんも一緒に聞きましたいね?」

 大きな目でじっと見詰められた実篤は、「それはそうなんじゃけど」と小さく吐息を落とした。

 今、くるみは妊娠五ヶ月目の、いわゆる妊娠中期。
 前述のように少し前までつわりに苦しんでいたけれど、数日前から症状が改善されて調子がいいらしい。

 胎動も感じられるようになって、実篤にもよく「あ! いま動いちょります」と触らせてくれる。


***


実篤さねあつさん、壁に穴開けるんはやっぱり忍びないですけぇ、パネルはこのローチェストの上に並べるんでもええでしょうか?」

 散々壁にアレコレ試してみたくるみだったけれど、結局はそういう結論に達したらしい。

 リビングへ作り付けられたローチェスト上にパネルを並べてから実篤を振り返った。

「ねぇ実篤さん。そう言えばこのローチェストの木材、うちの実家を取り壊した時に出た廃材を利用しちょるんでしたいね? 表面が綺麗に削られちょるけん全然古い木を使つこうちょるようには見えんですけど……何かそれを知っちょると、こうやって触れただけで気持ちがほこほことあったこぉーなる気がします。わざわざうちのために気ぃつこぉてもろぉーて、ホンマに有難うございます」

 言いながらくるみがうるりと瞳を潤ませるのに小さくうなずきながら、実篤はパントリーに仕組んだをくるみに見せるのは『今だ』と思った。

「ところで。写真のことはひとまず後にして、ちょっとこっちに来ん? 俺、キミに見せたいもんがあるんよ」

 ちょいちょいとアイランドキッチンに手をついた姿勢で、リビングのくるみへ手招きをする。

 くるみは実篤の招きにキョトンとした顔をしてから、ちょっと迷って。
 手にしていた三枚のパネルを作り付けのローチェストの上へ落ちないよう丁寧に伏せて置いた。

「見せたいもんってなぁーん?」

 そうしてから、こちらへゆっくりと近付いてくるくるみの、気持ち膨らんだお腹を見て、実篤は(これをくるみちゃんへ見せてあげるん、随分おそぉなってしもうたな)と一人反省した。
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