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7-1.過日交わした約束のアレ
紅茶のお店にて
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***
正月休み最終日の一月四日。
くるみは実篤と一緒に広島市内へショッピングに来ていた。
「よぉ考えてみたら実篤さんと広島来るん、初めてですね」
思えば九月から付き合い始めて四か月ちょっと。
デートと言えばお互いの家を行き来することが中心で、こんな風に高速を飛ばして出かけたこと自体なかった。
今日はぶらぶらと目的を定めず本通商店街をウィンドウショッピングしようと言う話になって。
ゲームセンターでクレーンゲームを楽しんだり、買うあてもないくせに服屋や靴屋に立ち寄ったりした二人は、歩き疲れた足を癒すため、たまたま目についた紅茶専門店『愛しい香り』で一休みすることにした。
「紅茶のお店でランチが食べられるじゃなんて……思うちょりませんでした」
くるみが席に着くなり、実篤がさっきゲームで取ったカワウソのぬいぐるみを抱いたままキラキラと瞳を輝かせる。
「俺も」
コーヒーより紅茶の方が好きなくるみに、お茶をするついで。販売コーナーで美味しそうな茶葉――ティーバッグなど――を買えたらええな……と軽い気持ちで入った店だったのだが。
何の気なしにメニューを見ると、【ランチ】という文言が目について。
載っている写真がどれもとても美味しそうだったから、「そのまま食事も済ませようか」という話になった。
時計は十一時半を指している。
ランチには少し早い気もするが、注文して出来上がるのを待っていたりしたら、きっとそこそこいい時間になるだろう。
「うち、甘いもんも楽しみたいんで、アフタヌーンティーセットにしてみようかと思うちょります」
ウキウキした面持ちで、くるみがぬいぐるみの鼻先で指し示した先には
――――――
【アフタヌーンティーセット・フリーホットティー 付き】
おすすめスイーツのアフタヌーンティーと、ハーフサイズのお食事プレート付き。
下記の三品からお好きなプレートをお選びいただけます。
――――――
と書かれていて。
選べるプレートの選択肢として、その下に
――――――
〝瀬戸の豚「せと乙女」を使った豚の生姜焼きプレート〟
〝西条の山内醤油「かぼすポン酢しょうゆ」を使った海老と揚げ茄子の甘酢和えプレート〟
〝瀬戸の豚「せと乙女」を使った湯引きポーク~かぼすポン酢添え〟
――――――
が挙げられていた。
「プレートはどれを選ぶつもりなん?」
くるみと一緒にメニューを覗き込みながら聞いたら、「どれも美味しそうで迷うちょるんですけど……」とつぶやいたくるみが、「うち、甘酢が好きなんで、海老と揚げ茄子のにしてみます!」と、まるで清水の舞台から飛び降りるみたいな神妙な面持ちで、真ん中の写真を指さす。
「ほいじゃあ俺は湯引きポン酢にしようかのー」
何気なく言った実篤の言葉に、くるみが名残惜しそうに生姜焼きの写真を撫でたのが目に入って。
それに気付いた実篤は思わず続けていた。
「――それと、腹減ったけん、単品で生姜焼きも頼もうかな。一人で食うには多過ぎるけぇ、くるみちゃんも加勢してくれるじゃろ?」
恐らく今の自分達みたいに候補を絞りきれない客への配慮だろう。
単品メニューでライス抜きのおかずのみが頼めるようになっていた。
正月休み最終日の一月四日。
くるみは実篤と一緒に広島市内へショッピングに来ていた。
「よぉ考えてみたら実篤さんと広島来るん、初めてですね」
思えば九月から付き合い始めて四か月ちょっと。
デートと言えばお互いの家を行き来することが中心で、こんな風に高速を飛ばして出かけたこと自体なかった。
今日はぶらぶらと目的を定めず本通商店街をウィンドウショッピングしようと言う話になって。
ゲームセンターでクレーンゲームを楽しんだり、買うあてもないくせに服屋や靴屋に立ち寄ったりした二人は、歩き疲れた足を癒すため、たまたま目についた紅茶専門店『愛しい香り』で一休みすることにした。
「紅茶のお店でランチが食べられるじゃなんて……思うちょりませんでした」
くるみが席に着くなり、実篤がさっきゲームで取ったカワウソのぬいぐるみを抱いたままキラキラと瞳を輝かせる。
「俺も」
コーヒーより紅茶の方が好きなくるみに、お茶をするついで。販売コーナーで美味しそうな茶葉――ティーバッグなど――を買えたらええな……と軽い気持ちで入った店だったのだが。
何の気なしにメニューを見ると、【ランチ】という文言が目について。
載っている写真がどれもとても美味しそうだったから、「そのまま食事も済ませようか」という話になった。
時計は十一時半を指している。
ランチには少し早い気もするが、注文して出来上がるのを待っていたりしたら、きっとそこそこいい時間になるだろう。
「うち、甘いもんも楽しみたいんで、アフタヌーンティーセットにしてみようかと思うちょります」
ウキウキした面持ちで、くるみがぬいぐるみの鼻先で指し示した先には
――――――
【アフタヌーンティーセット・フリーホットティー 付き】
おすすめスイーツのアフタヌーンティーと、ハーフサイズのお食事プレート付き。
下記の三品からお好きなプレートをお選びいただけます。
――――――
と書かれていて。
選べるプレートの選択肢として、その下に
――――――
〝瀬戸の豚「せと乙女」を使った豚の生姜焼きプレート〟
〝西条の山内醤油「かぼすポン酢しょうゆ」を使った海老と揚げ茄子の甘酢和えプレート〟
〝瀬戸の豚「せと乙女」を使った湯引きポーク~かぼすポン酢添え〟
――――――
が挙げられていた。
「プレートはどれを選ぶつもりなん?」
くるみと一緒にメニューを覗き込みながら聞いたら、「どれも美味しそうで迷うちょるんですけど……」とつぶやいたくるみが、「うち、甘酢が好きなんで、海老と揚げ茄子のにしてみます!」と、まるで清水の舞台から飛び降りるみたいな神妙な面持ちで、真ん中の写真を指さす。
「ほいじゃあ俺は湯引きポン酢にしようかのー」
何気なく言った実篤の言葉に、くるみが名残惜しそうに生姜焼きの写真を撫でたのが目に入って。
それに気付いた実篤は思わず続けていた。
「――それと、腹減ったけん、単品で生姜焼きも頼もうかな。一人で食うには多過ぎるけぇ、くるみちゃんも加勢してくれるじゃろ?」
恐らく今の自分達みたいに候補を絞りきれない客への配慮だろう。
単品メニューでライス抜きのおかずのみが頼めるようになっていた。
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