56 / 230
5-1.オオカミとウサギさん*
大丈夫なので続行の方向でよろしくお願いします
しおりを挟む
「そんな顔せんで?」
言ってくるみの頬をそっと撫でると、
「今のはくるみちゃんを笑うたんじゃなくてね。使用期限大丈夫じゃって思うたら、凄くホッとしてさ。俺、そんなにくるみちゃんとしたかったんじゃって自覚したら、自分の猿っぷりが急に可笑しゅうなったんよ」
言って、くるみのおでこにチュッと口付けると、
「ねぇ、くるみちゃん。ゴムも大丈夫じゃけ、このまま続けるけどさ、もし――もし不安で今日はやっぱり無理って思うんじゃったら今のうちに言うて? 始めてしもうたら俺、途中でやめてあげられる気がせんけぇ」
実篤は、先ほどまでとは打って変わって真剣な顔でくるみを見下ろした。
くるみはそんな実篤をじっと見上げて小さくうなずく。
「え、えっと……大、丈夫なの、で……その……続行の方向で……よ、よろしくお願いします?」
小首を傾げて言うのが可愛くて、実篤は思わずくるみの手を引いて起き上がらせると、腕の中にギュッと抱きしめた。
「実篤さっ、苦し……っ」
くるみが小さな声で抗議して、慌てて腕の力を緩めて――。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
実篤はくるみの耳元でそうつぶやいた。
(えっと……この首んトコの紐を解いたらええんじゃろうか?)
女の子の服にうとい実篤は、とりあえず目の前にある蝶々結びにされたホルターネックの紐を引っ張りながらそんなことを考える。
どうやらパッと見た感じ、どこにもファスナーはないようで。
前についた三つのボタンも飾りボタンの様だし、それを外したからといって前が開くと言う感じでもない。というか、そもそもただ縫い付けてあるだけで、外せるボタンではないみたいだ。
「あの……くるみちゃん、これ……」
結局情けなくも、「脱がし方が分かりません」とくるみ本人にSOSを出す羽目になってしまった実篤だ。
(八雲じゃったら、こんな変わり種の服が相手でも卒なく脱がしてしまえるんじゃろうか)
そんなどうでもいいことまで考えてしまう始末。
腕の中のくるみが実篤の言葉に「ん?」と身動いで、二人の間にほんの少し隙間が出来る。
「どう脱がしたらええんか分からんのじゃけど……。情けのぉーてホンマごめん」
オオカミになる!と決めてもこれ。
自分のグダグダっぷりに思わず眉根を寄せた実篤に、くるみが一瞬だけ瞳を大きく見開いてから、すぐさまクスッと笑った。
「うち、実篤さんのそういうところが凄く好きです……」
つぶやくようにポツンと言って、くるみが実篤の肩に額を載せる。
コツン、と軽くもたれかかってきたくるみの小さな頭の感触に、実篤はドキドキを抑えられない。
「実篤さん、うちより年上じゃけぇ、ホンマは沢山そういう経験があるんかな?とか思うてちょっと悔しかったりしたんです。だからもし慣れた手つきで服、脱がされてしもうたら、逆にモヤモヤしちょったかもしれんです」
顔を伏せたままくるみが言って。
実篤は思わず「え……?」とこぼした。
言ってくるみの頬をそっと撫でると、
「今のはくるみちゃんを笑うたんじゃなくてね。使用期限大丈夫じゃって思うたら、凄くホッとしてさ。俺、そんなにくるみちゃんとしたかったんじゃって自覚したら、自分の猿っぷりが急に可笑しゅうなったんよ」
言って、くるみのおでこにチュッと口付けると、
「ねぇ、くるみちゃん。ゴムも大丈夫じゃけ、このまま続けるけどさ、もし――もし不安で今日はやっぱり無理って思うんじゃったら今のうちに言うて? 始めてしもうたら俺、途中でやめてあげられる気がせんけぇ」
実篤は、先ほどまでとは打って変わって真剣な顔でくるみを見下ろした。
くるみはそんな実篤をじっと見上げて小さくうなずく。
「え、えっと……大、丈夫なの、で……その……続行の方向で……よ、よろしくお願いします?」
小首を傾げて言うのが可愛くて、実篤は思わずくるみの手を引いて起き上がらせると、腕の中にギュッと抱きしめた。
「実篤さっ、苦し……っ」
くるみが小さな声で抗議して、慌てて腕の力を緩めて――。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
実篤はくるみの耳元でそうつぶやいた。
(えっと……この首んトコの紐を解いたらええんじゃろうか?)
女の子の服にうとい実篤は、とりあえず目の前にある蝶々結びにされたホルターネックの紐を引っ張りながらそんなことを考える。
どうやらパッと見た感じ、どこにもファスナーはないようで。
前についた三つのボタンも飾りボタンの様だし、それを外したからといって前が開くと言う感じでもない。というか、そもそもただ縫い付けてあるだけで、外せるボタンではないみたいだ。
「あの……くるみちゃん、これ……」
結局情けなくも、「脱がし方が分かりません」とくるみ本人にSOSを出す羽目になってしまった実篤だ。
(八雲じゃったら、こんな変わり種の服が相手でも卒なく脱がしてしまえるんじゃろうか)
そんなどうでもいいことまで考えてしまう始末。
腕の中のくるみが実篤の言葉に「ん?」と身動いで、二人の間にほんの少し隙間が出来る。
「どう脱がしたらええんか分からんのじゃけど……。情けのぉーてホンマごめん」
オオカミになる!と決めてもこれ。
自分のグダグダっぷりに思わず眉根を寄せた実篤に、くるみが一瞬だけ瞳を大きく見開いてから、すぐさまクスッと笑った。
「うち、実篤さんのそういうところが凄く好きです……」
つぶやくようにポツンと言って、くるみが実篤の肩に額を載せる。
コツン、と軽くもたれかかってきたくるみの小さな頭の感触に、実篤はドキドキを抑えられない。
「実篤さん、うちより年上じゃけぇ、ホンマは沢山そういう経験があるんかな?とか思うてちょっと悔しかったりしたんです。だからもし慣れた手つきで服、脱がされてしもうたら、逆にモヤモヤしちょったかもしれんです」
顔を伏せたままくるみが言って。
実篤は思わず「え……?」とこぼした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
82
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる