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5-1.オオカミとウサギさん*
今からそんなで耐えられそう?
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「ちょっと寒いかな」
そのまますぐそこの暖房がきいた応接室に入れば良かったかもしれない。
(けどあの部屋にはベッドがないし、それに――)
実篤はちょっと迷って、結局くるみを抱き抱えたまま廊下を抜けると、突き当たりにある十畳間――自室――に彼女を連れ込んだ。
「ここ……」
「――俺の部屋」
不安そうに自分を見上げて来るくるみに端的に答えると、腕の中の愛しい彼女をベッドにそっと下ろしてもふもふ手袋を脱ぎ捨て、暖房のスイッチを入れる。
そのまま性急にくるみの上に覆いかぶさるようにして彼女をベッドに縫いとめながら、付けっぱなしになっていた頭の獣耳も乱暴に外してベッド下に落とした。
「ホンマは部屋が温もるまで待ってあげたいところなんじゃけど……ごめん。――俺が待てそうにないけん」
言いながら、実篤が熱っぽい目でくるみを見下ろすと、
「実篤さんだけズルイ。一人だけ耳も手袋も外してからに。何かうちだけ取り残されてコスプレしちょるん、恥ずかしいじゃ……?」
照れ臭さを誤魔化すためだろうか。
くるみがわざと悪戯っぽく睨み付けてくるのがいじらしくてたまらない。
実篤はクスッと笑ってそんなくるみの唇を指先でなぞった。
「ねぇ、それ、本気で言いよぉーる? 今から俺、くるみちゃんが着ちょるん全部脱がして、もっともっと恥ずかしい格好にするつもりなんじゃけど。――今からそんなで耐えられそう?」
わざと声を低めて意地悪く問いかけて。
くるみの口元をなぞっていた指を彼女の頬に添えると、実篤はグッと顔を近付けた。
そのまま唇が触れるか触れないかの距離で一旦止めて、「口、開けて?」とささやくようにくるみをそそのかす。
***
「実篤、さん……」
そんな実篤をくるみが潤んだ目で見上げてきて――。
オオカミに変装させたからだろうか?
いつもヘタレワンコな実篤が、やけに強気に攻めてくるのが落ち着かないくるみだ。
自分が望んだ状況のはずなのに、いざ実篤にこんな風にガンガン迫ってこられると、経験値の低いくるみはどうしたらいいか分からなくなる。
***
実篤はくるみの頬に触れた指先をほんの少し動かして、彼女の耳たぶに掠めるように触れて。
「くるみは俺に食べられたいんじゃろう? 素直に言うこと聞いてくれんと、凄く食べ辛いんじゃけど?」
いつもは「ちゃん」付けで呼びかける名前を敢えて呼び捨てにして、スリスリと赤らんで熱を持ち始めた耳をくすぐったら、
「ふぁっ、……実篤さっ、そこ、ダメぇっ……っ」
くるみがくすぐったそうに首をキュッとすくませて、小さく抗議の声を漏らした。
実篤はその瞬間を逃さず、くるみのセリフを言葉半ばで封じるように口付ける。
初めてのキスがいきなりディープなものだったからだろうか。
くるみは驚いたようにビクッと身体を撥ねさせた。
それをあやすみたいに口中を優しく舌先で撫でると、おずおずと彼の求めに応じるように舌を差し出してくれて。
そのぎこちなさがたまらなく愛しく感じられた実篤だ。
そのまますぐそこの暖房がきいた応接室に入れば良かったかもしれない。
(けどあの部屋にはベッドがないし、それに――)
実篤はちょっと迷って、結局くるみを抱き抱えたまま廊下を抜けると、突き当たりにある十畳間――自室――に彼女を連れ込んだ。
「ここ……」
「――俺の部屋」
不安そうに自分を見上げて来るくるみに端的に答えると、腕の中の愛しい彼女をベッドにそっと下ろしてもふもふ手袋を脱ぎ捨て、暖房のスイッチを入れる。
そのまま性急にくるみの上に覆いかぶさるようにして彼女をベッドに縫いとめながら、付けっぱなしになっていた頭の獣耳も乱暴に外してベッド下に落とした。
「ホンマは部屋が温もるまで待ってあげたいところなんじゃけど……ごめん。――俺が待てそうにないけん」
言いながら、実篤が熱っぽい目でくるみを見下ろすと、
「実篤さんだけズルイ。一人だけ耳も手袋も外してからに。何かうちだけ取り残されてコスプレしちょるん、恥ずかしいじゃ……?」
照れ臭さを誤魔化すためだろうか。
くるみがわざと悪戯っぽく睨み付けてくるのがいじらしくてたまらない。
実篤はクスッと笑ってそんなくるみの唇を指先でなぞった。
「ねぇ、それ、本気で言いよぉーる? 今から俺、くるみちゃんが着ちょるん全部脱がして、もっともっと恥ずかしい格好にするつもりなんじゃけど。――今からそんなで耐えられそう?」
わざと声を低めて意地悪く問いかけて。
くるみの口元をなぞっていた指を彼女の頬に添えると、実篤はグッと顔を近付けた。
そのまま唇が触れるか触れないかの距離で一旦止めて、「口、開けて?」とささやくようにくるみをそそのかす。
***
「実篤、さん……」
そんな実篤をくるみが潤んだ目で見上げてきて――。
オオカミに変装させたからだろうか?
いつもヘタレワンコな実篤が、やけに強気に攻めてくるのが落ち着かないくるみだ。
自分が望んだ状況のはずなのに、いざ実篤にこんな風にガンガン迫ってこられると、経験値の低いくるみはどうしたらいいか分からなくなる。
***
実篤はくるみの頬に触れた指先をほんの少し動かして、彼女の耳たぶに掠めるように触れて。
「くるみは俺に食べられたいんじゃろう? 素直に言うこと聞いてくれんと、凄く食べ辛いんじゃけど?」
いつもは「ちゃん」付けで呼びかける名前を敢えて呼び捨てにして、スリスリと赤らんで熱を持ち始めた耳をくすぐったら、
「ふぁっ、……実篤さっ、そこ、ダメぇっ……っ」
くるみがくすぐったそうに首をキュッとすくませて、小さく抗議の声を漏らした。
実篤はその瞬間を逃さず、くるみのセリフを言葉半ばで封じるように口付ける。
初めてのキスがいきなりディープなものだったからだろうか。
くるみは驚いたようにビクッと身体を撥ねさせた。
それをあやすみたいに口中を優しく舌先で撫でると、おずおずと彼の求めに応じるように舌を差し出してくれて。
そのぎこちなさがたまらなく愛しく感じられた実篤だ。
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