【完結】【R18】社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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4-3.ハッピーハロウィン!―後編―

実篤さんも今夜はちゃんと狼になって、うちを食べて?

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「あんね、実篤さねあつさん。うち、今日はウサギなんよ」

 ――うん、そうほうじゃね。見れば分かるよ?


 実篤さねあつは、大きく開いたくるみの胸の谷間が気になって仕方がない。


「ほいでね、実篤さねあつさんは狼男なん」

 ――そうじゃね。くるみちゃんがそうするように衣装渡してくれたけん、そうなっちょるね。


 心の中では返事出来るのに、声に出したら震えてしまいそうで何も言えない実篤さねあつだ。


 そんな実篤さねあつの表情を、うかがうようにじっと見上げてくるみが言った。


「知っちょってですか? 実篤さねあつさん。狼はね、ウサギを食べるんです。だからほいじゃけ、――実篤さねあつさんも……今夜はちゃんと狼になって……うちを食べて?」


***


 一瞬、くるみが何を言ったのか理解できなかった実篤さねあつだ。

「え……?」

 思わず間抜けな声を出したら、くるみが泣きそうな顔をして実篤さねあつを見上げてきた。

実篤さねあつさん、うち、手ぇ出すの躊躇ためろぉーてしまうほど魅力ない? 付き合い始めて一ヶ月以上……キスもしてくれんのんはうちが子供っぽい所為せぇなん?」

 畳み掛けるように言いながら、実篤さねあつの手をぎゅっと握ったくるみの手が小さく震えているのを感じて、実篤はハッとした。

 暖房を付けた応接室と違って廊下は寒い。
 だけど、くるみのこの震えはきっとそれだけじゃないはずだ。


「お願いじゃけ……イヤって言わないでんちょいて? うちを拒まんといて?」

 実篤はくるみに握られた手をかわして、逆にもふもふの手で包み込むように挟みこんでから、くるみの顔をじっと見つめる。

「くるみちゃん、俺……! ホンマごめんっ!」

 そうして一言謝ると、実篤からの謝罪を拒絶と受け取って表情を一気に曇らせたくるみを、「そうじゃないけぇ」と言う気持ちを込めてギュッと腕の中に抱き寄せた。

「俺、もうはぁ年が離れちょるとか何とか……くだらん負い目は全部捨てる」

 低く押し殺した声音でそうつぶやくと、実篤さねあつは何の前触れもなく腕の中のくるみを横抱きに抱き上げる。

実篤さねあつさんっ⁉︎」

 突然お姫様抱っこをされてびっくりしたくるみが、実篤にギュッとしがみついてきて。
 それが、実篤の鼓動をどんどん早くした。

「これからは俺、くるみちゃんに触れるん、一切我慢せんけぇ。――覚悟して?」

(女の子にここまで言わせて何もせんとか……男がすたるじゃろ!)

 いくら自分がヘタレワンコでも、そのぐらいは分かる。

(俺を狼男に化けさせたのじゃって、くるみちゃんなりの必死のアピールじゃったんじゃろ?)

 ずっと、くるみとの年の差にひるんでキスさえままならなかった実篤だけど、キスはもちろん、その先だってずっとずっとしたいと思っていた。

 欲望を理性で抑え付けるようにして、年の離れたくるみを傷付けないよう、真綿にくるむような付き合い方をしてきた実篤だったけれど。

 それが逆にくるみを傷付けていたんだと思い至った。
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