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4-1.ハッピーハロウィン!―前編―
ダメに決まっちょろーが!
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***
「――っていう事があったんよ」
夜。
お互いの仕事が終わって恋人と電話で話している時に、実篤は昼間職場であったアレコレを溜め息まじりにつぶやいた。
くるみはその話を聞いてクスクス笑うばかり。
電話口から聞こえてくるその笑い声が心地よく耳をくすぐって、実篤は(俺、いまめちゃくちゃ幸せじゃん!)と実感する。
それと同時、(通話先のくるみも同じように感じていてくれたらええのぉー)と願わずにはいられない。
そんなささやかな希望を抱きはするものの、イマイチ自分に自信が持てない実篤だ。
「俺としちゃあさ、まだくるみちゃんが俺なんかでええっ言うてくれちょるん自体、未だに夢現じゃけん。若い衆からそんなん言われたら凄い不安になるんっちゃ」
宇佐川が言ったように、年齢から言うとくるみと同い年な彼の方が、どう考えても有利に思えたし、二つ、三つ程度の年の差なら気にならない実篤も、さすがに七つも離れているとあっては気にしないではいられないわけで。
「だって考えてみたらさ、俺が中学に入学した時、くるみちゃんはまだ幼稚園児だったわけじゃろ?」
そう考えると、何だか犯罪に近いものを感じてしまう実篤だ。
(こんな俺がくるみちゃんみたいに可愛らしい女の子を独り占めしてもええんじゃろうか)
情けないとは思うけれど、そんな漠然とした不安が、常に実篤の頭の片隅を占拠している。
『うちが実篤さんがええって言いよーるのに、何でそんな卑屈な言い方するん? いくら実篤さん本人でもうちが好きな人のこと〝俺なんか〟っ言うて卑下するんは聞き捨てならんのじゃけど』
電話の向こうから、ぷぅっと頬を膨らませた子リスみたいなくるみの姿が見えるようで、実篤は思わず笑ってしまった。
怒られていると言うのは分かっていても、(くるみちゃん、可愛いのぅ)と思わずにはいられない。
くるみと同い年の妹・鏡花がやっても太々しくしか見えないだろうに、惚れた弱みというやつは厄介だ。
『そんなん言いよってじゃけど、それならうちがその……宇佐川さんじゃったっけ? その彼と付き合うことにしました、っ言うたら実篤さん、大人しく引き下がるん?』
「バカ! ダメに決まっちょろーが!」
『それだったらつべこべ言わんと堂々としちょって下さい! それでうちを誰にも負けんくらい思いっきり愛されちょるってとろけさせて?』
「はい!」
くるみからの畳み掛けるような口撃に、思わず背筋をピーン!と正して即答してしまってから、実篤は心の中で
(くるみちゃん、小悪魔じゃ!)
と思わずにはいられない。
(そこがホンマ可愛ゆーて堪らんのじゃけど!)
そんなくるみが、電話先で『実篤さん、いま確かに「はい!」っておっしゃいましたよね?』と言質を取ってきて、実篤は心の中、「こっ、今度は何なん? くるみちゃぁ~ん!」と叫ばずにはいられなかった。
「――っていう事があったんよ」
夜。
お互いの仕事が終わって恋人と電話で話している時に、実篤は昼間職場であったアレコレを溜め息まじりにつぶやいた。
くるみはその話を聞いてクスクス笑うばかり。
電話口から聞こえてくるその笑い声が心地よく耳をくすぐって、実篤は(俺、いまめちゃくちゃ幸せじゃん!)と実感する。
それと同時、(通話先のくるみも同じように感じていてくれたらええのぉー)と願わずにはいられない。
そんなささやかな希望を抱きはするものの、イマイチ自分に自信が持てない実篤だ。
「俺としちゃあさ、まだくるみちゃんが俺なんかでええっ言うてくれちょるん自体、未だに夢現じゃけん。若い衆からそんなん言われたら凄い不安になるんっちゃ」
宇佐川が言ったように、年齢から言うとくるみと同い年な彼の方が、どう考えても有利に思えたし、二つ、三つ程度の年の差なら気にならない実篤も、さすがに七つも離れているとあっては気にしないではいられないわけで。
「だって考えてみたらさ、俺が中学に入学した時、くるみちゃんはまだ幼稚園児だったわけじゃろ?」
そう考えると、何だか犯罪に近いものを感じてしまう実篤だ。
(こんな俺がくるみちゃんみたいに可愛らしい女の子を独り占めしてもええんじゃろうか)
情けないとは思うけれど、そんな漠然とした不安が、常に実篤の頭の片隅を占拠している。
『うちが実篤さんがええって言いよーるのに、何でそんな卑屈な言い方するん? いくら実篤さん本人でもうちが好きな人のこと〝俺なんか〟っ言うて卑下するんは聞き捨てならんのじゃけど』
電話の向こうから、ぷぅっと頬を膨らませた子リスみたいなくるみの姿が見えるようで、実篤は思わず笑ってしまった。
怒られていると言うのは分かっていても、(くるみちゃん、可愛いのぅ)と思わずにはいられない。
くるみと同い年の妹・鏡花がやっても太々しくしか見えないだろうに、惚れた弱みというやつは厄介だ。
『そんなん言いよってじゃけど、それならうちがその……宇佐川さんじゃったっけ? その彼と付き合うことにしました、っ言うたら実篤さん、大人しく引き下がるん?』
「バカ! ダメに決まっちょろーが!」
『それだったらつべこべ言わんと堂々としちょって下さい! それでうちを誰にも負けんくらい思いっきり愛されちょるってとろけさせて?』
「はい!」
くるみからの畳み掛けるような口撃に、思わず背筋をピーン!と正して即答してしまってから、実篤は心の中で
(くるみちゃん、小悪魔じゃ!)
と思わずにはいられない。
(そこがホンマ可愛ゆーて堪らんのじゃけど!)
そんなくるみが、電話先で『実篤さん、いま確かに「はい!」っておっしゃいましたよね?』と言質を取ってきて、実篤は心の中、「こっ、今度は何なん? くるみちゃぁ~ん!」と叫ばずにはいられなかった。
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