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4-1.ハッピーハロウィン!―前編―

ダメに決まっちょろーが!

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「――っていうっちゅう事があったんよ」

 夜。

 お互いの仕事が終わって恋人くるみと電話で話している時に、実篤さねあつは昼間職場であったアレコレを溜め息まじりにつぶやいた。

 くるみはその話を聞いてクスクス笑うばかり。

 電話口から聞こえてくるその笑い声が心地よく耳をくすぐって、実篤さねあつは(俺、いまめちゃくちゃぶちくそ幸せじゃん!)と実感する。

 それと同時、(通話先のくるみも同じように感じていてくれたらええのぉー)と願わずにはいられない。

 そんなささやかな希望をいだきはするものの、イマイチ自分に自信が持てない実篤さねあつだ。


「俺としちゃあさ、まだくるみちゃんが俺なんかでええっちゅうてくれちょるん自体、未だに夢現ゆめうつつじゃけん。若いしゅからそんなん言われたら凄いぶっ不安になるんっちゃ」

 宇佐川うさがわが言ったように、年齢から言うとくるみと同い年な彼の方が、どう考えても有利に思えたし、二つ、三つ程度の年の差なら気にならない実篤さねあつも、さすがに七つも離れているとあっては気にしないではいられないわけで。

「だって考えてみたらさ、俺が中学に入学した時、くるみちゃんはまだ幼稚園児だったわけじゃろ?」

 そう考えると、何だか犯罪に近いものを感じてしまう実篤さねあつだ。

(こんな俺がくるみちゃんみたいに可愛らしい女の子を独り占めしてもええんじゃろうか)

 情けないとは思うけれど、そんな漠然とした不安が、常に実篤さねあつの頭の片隅を占拠している。


『うちが実篤さねあつさんがええって言いよーるに、何でそんな卑屈な言い方するん? いくら実篤さねあつさん本人でもうちが好きな人のこと〝俺〟っちゅうて卑下ひげするんは聞き捨てならんのじゃけど』

 電話の向こうから、ぷぅっと頬を膨らませた子リスみたいなくるみの姿が見えるようで、実篤さねあつは思わず笑ってしまった。

 怒られていると言うのは分かっていても、(くるみちゃん、可愛いのぅ)と思わずにはいられない。

 くるみと同い年の妹・鏡花きょうかがやっても太々ふてぶてしくしか見えないだろうに、惚れた弱みというやつは厄介だ。

『そんなん言いよってじゃけど、それならほいじゃあうちがその……宇佐川うさがわさんじゃったっけ? その彼と付き合うことにしました、っちゅうたら実篤さねあつさん、大人しく引き下がるん?』

バカバッ! ダメに決まっちょろーが!」

それだったらほいじゃったらつべこべ言わんと堂々としちょって下さい! それでほいでうちを誰にも負けんくらい思いっきり愛されちょるってとろけさせて?』

「はい!」

 くるみからの畳み掛けるような口撃こうげきに、思わず背筋をピーン!と正して即答してしまってから、実篤さねあつは心の中で
(くるみちゃん、小悪魔じゃ!)
 と思わずにはいられない。

(そこがホンマ可愛ゆーて堪らんやれんのじゃけど!)


 そんなくるみが、電話先で『実篤さねあつさん、いま確かに「はい!」っておっしゃいましたよね?』と言質げんちを取ってきて、実篤さねあつは心の中、「こっ、今度は何なん? くるみちゃぁ~ん!」と叫ばずにはいられなかった。
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