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3.月が綺麗ですね

実篤のジレンマ

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(いやいやいや、そんなわけなかろーよ!?)

 心の中では盛大に全否定している実篤さねあつだったけど、くるみが物凄く可愛らしい顔で自分を見上げてくるせいで、やたら照れ臭くて声が出せない。

 それをと判断したらしいくるみに、

もぉ~はぁ~! 真っ赤になってからに、可愛いーんじゃけぇ!」

 クスクス笑われて、実篤さねあつは内心タジタジだ。

「そーうトコは確かに乙女チックじゃけど……うちには実篤さねあつさん、見えちょらんですけぇね? 下さい」

(いや、安心してくれ言われても……)

 もとより自分は怖い顔の男にしか見えないと自覚しまくっている実篤さねあつだ。
 何故そうなった?という斜め上の持論を展開して慰められても困る。

 しかも――。

(くるみちゃん、いま俺のことカッコええとかーてくれんかった?)

 社交辞令だとしても照れるではないか。

 それに――。

(男として認識してくれちょるなら何で夜に俺のこと自宅に呼べたんじゃろ? それじゃったら普通、くるみちゃん的に全然安心できる要素ない思うんじゃけど)


 くるみに、自分は彼女に対して性的興奮を覚えない無害な男とでも思われちょるんじゃろうか?と考えたら何気に複雑な心地がした実篤さねあつだ。

(どうやったら、自分は他の誰よりも隙あらば彼女のことをどうこうしてやりたいと思うちょるなんかを分からせてやることが出来るじゃろうか?)

 気が付いたら、そんなアホなことを真剣に考えてしまっていた。

 だって悔しいじゃないか。
 こんなにくるみのことが好きなのに、そう言う風に思われていないと言うのは――。

 だけどそれと同じぐらい、ふたりきりで彼女の自宅にいる現状で、それに気付かせてくるみを怖がらせるような愚かな真似はしたくないとも思ってしまって。

(何じゃこれ。物凄ものすげぇジレンマなんじゃけど)

 考えれば考えるほど頭を抱えたくなった実篤さねあつだ。



「――実篤さねあつさん、さっきから黙り込んで。どうなさいましたかしちゃったんですか?」

 実篤さねあつの心の葛藤かっとうを知ってか知らずか、当のくるみは呆気らかんとしたもので。
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