【完結】【R18】結婚相手を間違えました

鷹槻れん

文字の大きさ
224 / 228
■しあわせのカタチ(祝・完結の書き下ろし)

本文+あとがき

しおりを挟む
結葉ゆいは。たまにはゆっくり風呂入ってこいよ。りんは俺が寝かしつけといて

 そうが、もうじき二歳になる一人息子の琳をよいしょと抱き上げたら、父親の腕の中。
 想によく似た三白眼に、結葉譲りのくっきり二重の幼子おさなごが、父親の言葉尻を捉えてたどたどしく「やっか!」と繰り返した。

 小さいのに何でもかんでも父親を真似たがる琳は、片言の合間合間にまるで想のような口ぶりを混ぜてくる。

 それがちょっぴり悩みの種だったりする結葉だ。

「琳くん、お口が悪いですよ?」

 自分を気遣ってくれる想に、「想ちゃん有難う」と礼を言いながら、彼に抱かれてちょっぴり結葉を見下ろす位置にいる息子にメッ!と怖い顔をしてみせると、琳がすぐさまペコリと頭を下げてごめんなさいをする。

 それが可愛くて、思わず背伸びしてヨシヨシと琳の頭を撫でたら、想が堪らないみたいに空いた方の手で結葉の腰を抱いて、妻を腕の中に引き寄せた。

「想ちゃっ⁉︎」

 その瞬間、二人にサンドイッチされる形になった琳が、嬉しそうにキャッキャと笑い声をあげて。

 結葉は照れながらも、想の腕の中、ささやかな幸せを噛み締めた。





 元々お兄ちゃん気質が板についているそうは、我が子に対してもとても子煩悩な父親で。

 りんが生まれてすぐから、出産で弱った結葉を気遣っては率先して子供の面倒を見てくれた。

 琳は新生児の頃から本当に寝ない子で、結葉ゆいはは授乳しながらついつい寝落ちしてしまうのだけれど、すぐに琳の泣き声で起こされて、朝も昼も夜も三〇分以上まとめて眠ることが出来ない日々が続いた。

 息子を産んだ直後からたくさんたくさんおっぱいの出た結葉は、ミルクを足す必要もなく、完全母乳で琳を育ててきたのだけれど、だからと言って琳はおっぱいしか吸えないという子でもなかった。

 それはひとえに想が、琳が産院から戻ってすぐから、結葉があらかじめ搾乳してストックしていた母乳を哺乳瓶で与えて人工乳首に慣らしてくれていたからに他ならない。


 想は出産を機に仕事を辞めた結葉と違って、日中は普通に山波やまなみ建設で働いていたのだけれど、そんなことお構いなしに睡眠時間を削って結葉を気遣ってくれて。

〇時じゅうにじから三時までは俺が見てるから、結葉はしっかり休め」

 睡眠不足で目の下に隈ができた結葉を見兼ねて、毎晩別室に息子を連れて行って、結葉に数時間のまとまった睡眠をくれた。

 それが、当時の結葉にとって、どれだけ有難かったか。

 あの時、想が率先して助けてくれなかったら、結葉はきっと倒れてしまっていただろう。



 そんな想は、結葉にも甘々だけど、息子のりんにもデロッデロに甘い。

 結葉は、想が自分を見つめる時とは違う、りんに向けた父親としての慈愛に満ちた眼差しの柔らかさが大好きだった。


***


 そうが買ってきてくれた、良い香りのする入浴剤を入れた湯船にゆっくり浸かって幸せな気持ちでお風呂から出てきたら、家の中がしんと静まり返っていて――。


「想ちゃん? りんくん?」

 恐る恐る寝室を覗いてみたら、ベッドサイドに灯された仄かな明かりの中、想と琳が重なり合うようにくっ付いて眠っていた。

 右腕を伸ばした想の腕の真下に埋もれるように頭を置いた琳が、何故か父親と同じように右腕を伸ばした真おんなじのポーズで眠っているのが、何だかとっても微笑ましく思えた結葉ゆいはだ。

(そっくり)

 クスクス笑いながらそんな二人を写真に収めて。

(想ちゃんには内緒♥)

 そんなことを思って、琳を挟むようにそっとベッドへ潜り込んだ。





 翌朝結葉と琳より少し早く目覚めた想が、キューッと手足を縮こめて全く同じポーズで眠る妻と息子の寝姿を見て、「くっそ可愛いな」とつぶやいて、写真を撮って一人悶えたのは結葉には内緒の話。


 
  END(2022/07/02)




✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼

【あとがき】

 子供と三人で暮らすようになった山波やまなみ一家の、何ということのないひとこまを抜き取ってみました。


 そう結葉ゆいはの子供は男の子で、名前は山波やまなみりん


 実は『こんまち』。

 偉央いお以外のメインキャラ二人の名前の中には、調味料が潜んでいました。


御庄みしょう結葉ゆいは=み「しょうゆ」いは=醤油

山波やまなみそう=やまな「みそ」う=味噌

 結葉ゆいはそうと結婚して醤油ではなくなりましたが、代わりに息子を参入させました(笑)。

山波やまなみりん=やまな「みりん」=味醂


 私、結構キャラの名前に変な縛りを作るのが好きで、焼酎の銘柄で苗字を縛ったり(オト温)、歴史に名を残した人の名前で苗字(や名前)を縛ったり(コノカレ)、ある童謡の中に出てくる歌詞を連想させる名前を苗字に持ってきてみたり(チョココロネ)。

 はい。
 苗字を考えるのが苦手だから変な縛りを設けて名付けを助けてもらおうとしています(笑)。

 そんなことを本編のあとがきで書こうと思っていたんですが、書き忘れたのでこちらで(笑)。

 因みに水面下で書いている新作もそんな縛りを設けてキャラ達を名付けた(野菜縛り)ので変な名前になってます(笑)。
 えへへ♥


  鷹槻たかつきうなの
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

処理中です...