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39.余計なことは考えなくていい*
このままじゃ、…ダメ?
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「……ごめ、なさっ」
そこで、かつて偉央から「すぐ濡らすとか、結葉はどこまで淫乱なんだよ」と罵られたことを思い出した結葉は、半ば条件反射のように謝って。
その声に想の手がピタリと止まった。
「何で謝るんだよ」
聞かれて、結葉はハッとしたように瞳を揺らせて。
何も言えなかったけれど、それだけで想は察してくれたらしい。
「俺が触ったから、こんなに感じてくれてんだろ? 全然恥じることなんかねぇし、悪いと思う必要もねぇ。寧ろ俺的にはすっげぇ嬉しいんだからな? そこんトコ肝に銘じとけ」
言われて入口そば。敏感な突起を、押しつぶす要領でそっと擦られた結葉は、頷く暇も与えられずにビクッと身体を仰け反らせた。
「ああ、んっ、想ちゃ……っ、それ、ダメぇ」
「結葉。余計なことは考えなくていいから。安心してもっと俺の手で乱れてみせろ」
想ちゃんは、自分が乱れても蔑んだり落としたりしないでいてくれる。
そう思えるだけで結葉は胸が締め付けられるくらい嬉しくて。
「想ちゃ、大、好きっ」
譫言のように吐息混じり。
想の名前を呼びながら高みに追い上げられていった。
ビクッと結葉の身体が跳ねて。弓形に反った後、ふっと脱力したのを見届けた想は満足したように結葉の下腹部から手を離すと、快楽の余韻でトロンと潤んだ目をした結葉にキスを落とした。
*
「結葉、俺もお前のことが大好きだ。……お前、色々あったばっかだし、今はまだ余り考えらんねぇかも知れねぇけど、俺、結婚するなら結葉しか居ねぇって思ってっから」
それこそ、子供の頃からずっと――。
束ねていた手を離して結葉の耳元、吐息を吹き込むみたい密やかに「愛してる」と囁いたら、結葉がゆるゆると手を伸ばしてきてそっと想の頬を撫でた。
「想ちゃ、ありがと……。私、すっごく……幸せ」
今にも泣きそうな顔をしてにっこり微笑む結葉が愛しくて、想はもう一度結葉に口づけをして。
「続き、していいか?」
コクッと頷く結葉を見て、「手際悪くてごめん。ゴム取るからちょっと待っててな?」と、汗で額に張り付いた結葉の髪の毛を手櫛で避けながら声をかける。
そうしながら、想が(こんなことになると分かってりゃあ、最初から箱ごと手近なトコに置いといたんだがな)と思ったのは仕方あるまい。
避妊具は、結葉に明け渡したベッドの宮棚に忍ばせてあったから。
想はゴムを取るついで。
結葉に触れて興奮した余韻で暑くなった身体から潔く上を脱ぎ捨てて、結葉から離れようとして。
「想ちゃ……。私、ゆくゆくは想ちゃんと、……ちゃんとした家族になりたいの。だから」
結葉に引き留めるように手を握られて、懇願するような眼差しで見上げられて、思わず動きを止めた。
そうして、見下ろした先。結葉の妖艶さを孕んだ危うさに、思わず息を呑んでしまう。
「結、葉……?」
「このままじゃ、……ダメ?」
想は結葉の言葉の意味がすぐには理解できなくて、無意識に「え……?」と小さくつぶやいて。
幼馴染みの、今まで見たことがないくらいに真剣な眼差しに、彼女の真意を理解した。
「結葉、お前……それ、本気で言ってんのか?」
もちろん、想は幼い頃からずっと。それこそ結葉が御庄偉央と結婚したと知った後でさえ――結葉と一緒になれたらと恋焦がれてきた。
結葉が離婚した今、その思いが身のうちで更に燃え上がっているのは言うまでもない。
だけど、結葉はどうだろう?
現状に流されているだけということはないだろうか。
「……もしこの一回で子供でも出来たりしたら……お前、後には引けなくなるんだぞ?」
想としては結葉との間に子供が出来たらと考えたら、嬉しい気持ち以外何もない。
結葉と結婚して子供に恵まれて……。それこそ両親のようなおしどり夫婦になっていけたら最高だと思っている。
だけど――。
結葉の気持ちが自分と同じラインまで育っていないかも知れないと考えたら、滅多な行動は取れないと思ってしまった。
結葉のことが誰よりも大事だからこそ。
彼女の一生を左右するようなことだけに、あやふやなまま手を出したくはないのだ。
想が結葉の覚悟を探るみたいに彼女からじっと視線を逸らさずにいたら、
「――私ね、今まで男性からきちんと愛された経験が一度もないの」
ポツン、と。
結葉が今にも消え入りそうな声音つぶやくから。
想は瞳を見開いた。
「え、でも結葉。……お前、結婚……」
「……もちろん偉央さんは偉央さんなりに私を愛してくれていたんだと思う。でも……彼は私とは子供が欲しくない人だったから……」
前に結葉からチラリとそんな話を聞いたことがある想だ。
だけどこうしていざ彼女と愛し合おうという段になって改めてその話を聞かされると、妙な実感を伴うだけにかなり衝撃的で。
想は今更のように何と答えたらいいのか分からなくなってしまった。
しかも、風の噂で偉央には子供が出来たと聞いたばかりなのだ。
結葉はその話をどんな心持ちで受け止めたのだろう。
「……私、愛する人からちゃんと愛されて、みたいの」
言葉を選びながら一生懸命言い募ってくる結葉の心中を慮ると、想は居た堪れない気持ちになる。
何故偉央が結葉に対してのみそういう気持ちになれなかったのかは、想には分からない。
分からないけれど――。
「ごめんなさい。……想ちゃんも……私とは赤ちゃん欲しくないって……思ったり、してる、の……かな?」
「バカ! んなワケねぇだろ!」
結葉の誘いに即座に返答出来なかった想に、にわかに不安そうな顔をして結葉が言って。
そんな結葉に対して、絶対にそれだけはない!と断言出来ると思った想だ。
いや寧ろ――。
雄としての本能が、『愛する女に自分の子を孕んでもいいと言われるとか、男冥利に尽きんだろ!』と下腹部が痛いくらいに存在を誇示しているくらいだ。
「お前の望み通りこのまま抱いてやるよ、結葉。けど――」
想の言葉に、結葉が泣きながら頷いた。
そこで、かつて偉央から「すぐ濡らすとか、結葉はどこまで淫乱なんだよ」と罵られたことを思い出した結葉は、半ば条件反射のように謝って。
その声に想の手がピタリと止まった。
「何で謝るんだよ」
聞かれて、結葉はハッとしたように瞳を揺らせて。
何も言えなかったけれど、それだけで想は察してくれたらしい。
「俺が触ったから、こんなに感じてくれてんだろ? 全然恥じることなんかねぇし、悪いと思う必要もねぇ。寧ろ俺的にはすっげぇ嬉しいんだからな? そこんトコ肝に銘じとけ」
言われて入口そば。敏感な突起を、押しつぶす要領でそっと擦られた結葉は、頷く暇も与えられずにビクッと身体を仰け反らせた。
「ああ、んっ、想ちゃ……っ、それ、ダメぇ」
「結葉。余計なことは考えなくていいから。安心してもっと俺の手で乱れてみせろ」
想ちゃんは、自分が乱れても蔑んだり落としたりしないでいてくれる。
そう思えるだけで結葉は胸が締め付けられるくらい嬉しくて。
「想ちゃ、大、好きっ」
譫言のように吐息混じり。
想の名前を呼びながら高みに追い上げられていった。
ビクッと結葉の身体が跳ねて。弓形に反った後、ふっと脱力したのを見届けた想は満足したように結葉の下腹部から手を離すと、快楽の余韻でトロンと潤んだ目をした結葉にキスを落とした。
*
「結葉、俺もお前のことが大好きだ。……お前、色々あったばっかだし、今はまだ余り考えらんねぇかも知れねぇけど、俺、結婚するなら結葉しか居ねぇって思ってっから」
それこそ、子供の頃からずっと――。
束ねていた手を離して結葉の耳元、吐息を吹き込むみたい密やかに「愛してる」と囁いたら、結葉がゆるゆると手を伸ばしてきてそっと想の頬を撫でた。
「想ちゃ、ありがと……。私、すっごく……幸せ」
今にも泣きそうな顔をしてにっこり微笑む結葉が愛しくて、想はもう一度結葉に口づけをして。
「続き、していいか?」
コクッと頷く結葉を見て、「手際悪くてごめん。ゴム取るからちょっと待っててな?」と、汗で額に張り付いた結葉の髪の毛を手櫛で避けながら声をかける。
そうしながら、想が(こんなことになると分かってりゃあ、最初から箱ごと手近なトコに置いといたんだがな)と思ったのは仕方あるまい。
避妊具は、結葉に明け渡したベッドの宮棚に忍ばせてあったから。
想はゴムを取るついで。
結葉に触れて興奮した余韻で暑くなった身体から潔く上を脱ぎ捨てて、結葉から離れようとして。
「想ちゃ……。私、ゆくゆくは想ちゃんと、……ちゃんとした家族になりたいの。だから」
結葉に引き留めるように手を握られて、懇願するような眼差しで見上げられて、思わず動きを止めた。
そうして、見下ろした先。結葉の妖艶さを孕んだ危うさに、思わず息を呑んでしまう。
「結、葉……?」
「このままじゃ、……ダメ?」
想は結葉の言葉の意味がすぐには理解できなくて、無意識に「え……?」と小さくつぶやいて。
幼馴染みの、今まで見たことがないくらいに真剣な眼差しに、彼女の真意を理解した。
「結葉、お前……それ、本気で言ってんのか?」
もちろん、想は幼い頃からずっと。それこそ結葉が御庄偉央と結婚したと知った後でさえ――結葉と一緒になれたらと恋焦がれてきた。
結葉が離婚した今、その思いが身のうちで更に燃え上がっているのは言うまでもない。
だけど、結葉はどうだろう?
現状に流されているだけということはないだろうか。
「……もしこの一回で子供でも出来たりしたら……お前、後には引けなくなるんだぞ?」
想としては結葉との間に子供が出来たらと考えたら、嬉しい気持ち以外何もない。
結葉と結婚して子供に恵まれて……。それこそ両親のようなおしどり夫婦になっていけたら最高だと思っている。
だけど――。
結葉の気持ちが自分と同じラインまで育っていないかも知れないと考えたら、滅多な行動は取れないと思ってしまった。
結葉のことが誰よりも大事だからこそ。
彼女の一生を左右するようなことだけに、あやふやなまま手を出したくはないのだ。
想が結葉の覚悟を探るみたいに彼女からじっと視線を逸らさずにいたら、
「――私ね、今まで男性からきちんと愛された経験が一度もないの」
ポツン、と。
結葉が今にも消え入りそうな声音つぶやくから。
想は瞳を見開いた。
「え、でも結葉。……お前、結婚……」
「……もちろん偉央さんは偉央さんなりに私を愛してくれていたんだと思う。でも……彼は私とは子供が欲しくない人だったから……」
前に結葉からチラリとそんな話を聞いたことがある想だ。
だけどこうしていざ彼女と愛し合おうという段になって改めてその話を聞かされると、妙な実感を伴うだけにかなり衝撃的で。
想は今更のように何と答えたらいいのか分からなくなってしまった。
しかも、風の噂で偉央には子供が出来たと聞いたばかりなのだ。
結葉はその話をどんな心持ちで受け止めたのだろう。
「……私、愛する人からちゃんと愛されて、みたいの」
言葉を選びながら一生懸命言い募ってくる結葉の心中を慮ると、想は居た堪れない気持ちになる。
何故偉央が結葉に対してのみそういう気持ちになれなかったのかは、想には分からない。
分からないけれど――。
「ごめんなさい。……想ちゃんも……私とは赤ちゃん欲しくないって……思ったり、してる、の……かな?」
「バカ! んなワケねぇだろ!」
結葉の誘いに即座に返答出来なかった想に、にわかに不安そうな顔をして結葉が言って。
そんな結葉に対して、絶対にそれだけはない!と断言出来ると思った想だ。
いや寧ろ――。
雄としての本能が、『愛する女に自分の子を孕んでもいいと言われるとか、男冥利に尽きんだろ!』と下腹部が痛いくらいに存在を誇示しているくらいだ。
「お前の望み通りこのまま抱いてやるよ、結葉。けど――」
想の言葉に、結葉が泣きながら頷いた。
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