【完結】【R18】結婚相手を間違えました

鷹槻れん

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23.新生活の準備

結葉の涙が乾いていますように

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***


 そうがホームセンターから沢山の荷物を抱えて戻ってくると、結葉ゆいは雪日ゆきはるの入ったトートバッグを傍らに置いて、隅っこの方で小さくなってうずくまっていた。

 そうがリビングに入ってきたのに気付くと、ハッとしたように抱えていたひざを開放して「そうちゃん、お帰りなさい」と何でもないみたいに微笑んでくれた。
 その健気な姿が堪らなくそうの胸を締め付ける。

 だが、結葉ゆいはが一生懸命取り繕っているのに、下手な言葉を掛けて彼女を傷付けたくないと思ったそうだ。

「おう、ただいま」

 特に何も指摘せずに、買ってきた荷物をドサリと床に下ろすと、結葉ゆいはがソワソワした様子でそれを覗き込んできた。

「帰って来た時に『お帰り』って言われんの、すげぇいいな。――久々すぎてキュンときたわ」

 ククッと笑いながら言ったら、結葉ゆいはが照れ臭そうにそうを見上げてきて。

 思わずその頭を軽く撫でてやると、「いい子にして待ってたか?」と無意識の行動を誤魔化すみたいに結葉ゆいはを茶化したそうだ。

「もう、そうちゃん! またそうやって私を子供扱いする!」

 結葉ゆいはが昔みたいにぷぅっと頬を膨らませて怒ってくれて、そうはこんな調子で少しずつ本来の結葉ゆいはを取り戻してやれたら、と思わずにはいられない。


***


 買ったものもは全部、大きな衣装ケースの中に入れて持ち帰って来た。

 衣装ケースに貼られたお買い上げシールを剥がすついでに、販促用に貼られた商品名やサイズなどが書かれた紙も剥がす。

「それ、一番大きいサイズ?」

 その衣装ケースを見て結葉ゆいはがそう問い掛けて来たから「ああ、せっかくだしな」と答えて両サイドのロックを外してフタを開ける。

「……バーベキューの網と結束バンド?」

 結葉ゆいはが中に入ったものを見て小首を傾げるのを横目に、「それ使って飼育ケース仕上げるからな。楽しみにしとけ」とニヤリと笑ってから、「あー、あと……回し車なんかも買ってきたぞ」と、ペットコーナーから探してきた品々をケースから取り出しては床に並べていく。

「餌、回し車、トイレ、トイレ用の砂、巣箱、餌入れ、それと吸水ボトルな……。あー、あとは床材も足り臭ぇから買ってきといたぞ」

 床材の入った袋をポンポンと軽く叩きながら「雪日そいつの飼育用品一式、こんなモンで足りるっけ?」と付け足しながら顔を上げたら、結葉ゆいはの顔が思いのほか近くてドキッとさせられる。

「十分すぎるくらい。……そうちゃん、……本当に有難う」

 言って、感激のためかウルッと涙目になった結葉ゆいはを間近に見てしまって、そうは(何故そこで涙腺を緩ませる!)と内心慌てまくりだ。

 結葉ゆいははすごく整った顔をしているから、瞳を潤ませられたりしたらかなりのパンチ力がある。

 幼い頃から見慣れているから少しは免疫があるつもりのそうだったけれど、長いこと会っていなかった上にこういう不意打ちはやはりまずかった。

 ブワリと身体の中の血が沸騰するような錯覚に襲われたそうは、その空気を一新するみたいに

「伊達にせりの兄ちゃんやってねぇかんな。大いに褒めろ」

 努めて明るくおちゃらけて見せたら、結葉ゆいはが「うん、そう……だね」とポロリと涙を落として。

(あー、俺のバカ!)

 対応を間違えたことを後悔しまくりのそうだ。

 きっとこういう時は何も反応せずに淡々と作業を進める、が正解ルートだった気がしたけれど、後の祭り。

 泣き虫結葉ゆいはを前に、(ちっさい頃は俺、コイツが泣いた時、どうしてたっけ?)と頭をフル回転させてみた。
 けれどサッパリ対処法が思い出せなくて弱ってしまう。

 結果、ここは結葉ゆいはの涙には気付かないふりで行こう、と今更ながらスルー作戦を敢行することにしたそうだ。


「カッターナイフとか取ってくるな」

 言って立ち上がると、そう結葉ゆいはのそばをさり気なく離れる。

 どうか戻ってきた時には結葉ゆいはの涙が乾いていますように、と祈りながら。
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