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19.結葉の決断
初めての反乱
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「雪日、ママとずっと一緒にいようね」
ケージの掃除をした後で、移動用キャリーの準備をしながら、結葉は自分をまん丸な目で見上げてくるハムスターの雪日に声をかけた。
こうしていると、かつて想の妹・芹から譲り受けた初代のハムスター・福助のことを思い出す。
雪日は偉央が連れ帰ってきたハムスターだけど、結葉の中では何故か想や両親の思い出と繋がって。
監禁生活のなか、結葉の心が平常に保てていたのは、雪日の存在があったからに他ならなかった。
今日は足枷が外されているから、いつもより心も身体も軽く感じられる結葉だ。
ただ、偉央は結葉が思うほど甘くはなくて――。
部屋の暖房がいつも以上に高めに設定されて稼働しているのは、結葉が下着以外身につけることを許可されていないからだ。
部屋中を探してみたけれど、足枷が外されたと同時に結葉の服はこの家の中から消えていて。
そればかりか偉央の服もクローゼットに一着も残されていなかった。
結葉が下着姿では外には出られないと偉央には分かっているのだ。
でも――。
結葉はこのチャンスを逃す気はない。
お風呂場からバスタオルを持ってきて、膝の上に載せたまま、黙々と雪日を連れ出す手筈を整えている。
このマンションは、下に降りれば日中ならば女性のコンシェルジュが二名常駐しているはずだから。
結葉はそれに賭けることにしたのだ。
もしも今日に限って男性コンシェルジュだったら……と考えると怖かったけれど、それはそれで開き直ろう、とも思った。
頭の中でエレベーターに乗り込んでロビーに向かうまでの道のりを何度も何度も思い浮かべて。
結葉は雪日を移動用キャリーに移すと、使い捨て懐炉とともにトートバッグに入れた。
身体にしっかりバスタオルを巻き付けて、書類を束ねるクリップで留めて。
キッズ携帯は、もしも偉央から連絡があった時に備えてロビーまでは持って行こうと雪日のキャリーが入っているトートバッグに押し込んだ。
時計を見ると午前九時四十分。
診察が始まって間もない時間帯だから、きっと偉央は診察室に詰めているはずだ。
ギュッと拳を握り締めると、結葉は結婚して初めて。明確に偉央の意志に逆らった。
優柔不断で流されやすい結葉だったけれど、終わりの見えないこの監禁生活だけは――どうしても耐えられなかったから。
ケージの掃除をした後で、移動用キャリーの準備をしながら、結葉は自分をまん丸な目で見上げてくるハムスターの雪日に声をかけた。
こうしていると、かつて想の妹・芹から譲り受けた初代のハムスター・福助のことを思い出す。
雪日は偉央が連れ帰ってきたハムスターだけど、結葉の中では何故か想や両親の思い出と繋がって。
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今日は足枷が外されているから、いつもより心も身体も軽く感じられる結葉だ。
ただ、偉央は結葉が思うほど甘くはなくて――。
部屋の暖房がいつも以上に高めに設定されて稼働しているのは、結葉が下着以外身につけることを許可されていないからだ。
部屋中を探してみたけれど、足枷が外されたと同時に結葉の服はこの家の中から消えていて。
そればかりか偉央の服もクローゼットに一着も残されていなかった。
結葉が下着姿では外には出られないと偉央には分かっているのだ。
でも――。
結葉はこのチャンスを逃す気はない。
お風呂場からバスタオルを持ってきて、膝の上に載せたまま、黙々と雪日を連れ出す手筈を整えている。
このマンションは、下に降りれば日中ならば女性のコンシェルジュが二名常駐しているはずだから。
結葉はそれに賭けることにしたのだ。
もしも今日に限って男性コンシェルジュだったら……と考えると怖かったけれど、それはそれで開き直ろう、とも思った。
頭の中でエレベーターに乗り込んでロビーに向かうまでの道のりを何度も何度も思い浮かべて。
結葉は雪日を移動用キャリーに移すと、使い捨て懐炉とともにトートバッグに入れた。
身体にしっかりバスタオルを巻き付けて、書類を束ねるクリップで留めて。
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ギュッと拳を握り締めると、結葉は結婚して初めて。明確に偉央の意志に逆らった。
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