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16.ある冬の寒い日に
想ちゃんにはやっぱり敵わない
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「……あ、うん。ごめんね。変えたっていうか……。仕事も辞めて家にずっと居るようになったから必要ないかなって解約しちゃったの」
今現在、偉央が管理しているキッズ携帯を必要に応じて持たされている結葉だけど、そんなのは恥ずかしくて言えなかった。
「そっか。だから電話してこなかったんだな」
ふっと少し寂しそうな顔をして想が結葉を見詰めてきて。
結葉は想の表情に、ギュッと胸が締め付けられる。
「ごめんね。想ちゃん、心配してくれてたのに」
連絡出来なかった非礼を詫びて頭を下げたら、「馬鹿。――んなの俺の自己満で番号渡しただけだろ。気にすんな」って下げたままの頭にそっと触れられた。
その感触に、偉央からの暴力を思い出した結葉は、思わずビクッと身体を跳ねさせてしまう。
「あっ、スマンっ、つい」
それを、不用意に夫がある女性に触れたことへの警戒だと思ったらしい想が、慌てて手を引っ込めて謝ってきて。
結葉は、ただただ昔のように優しいだけの想に、気を遣わせて謝らせてしまう自分のことが嫌になった。
「ごめんね、想ちゃん」
想は結葉を傷つけたりしないのに、条件反射のように怯えた所を見せてしまったことがたまらなく恥ずかしくて申し訳なかった結葉だ。
「バカ。だから謝んなって。人妻相手に軽率だった俺が悪いだけだろ?」
なのにやっぱり想はどこまでも結葉に優しくて。
結葉は久しぶりに感じる他者からの優しさに、ついホロリと泣きそうになってしまう。
「あ、りがと。想ちゃん。――想ちゃんは全然変わらないね」
自分はこんなにも変わってしまったのに。
そう胸の中でつぶやきながら、一生懸命ニコッと笑ったら「なぁ結葉。俺の前では無理して笑わなくてもいいんだぞ?」って吐息を落とされた。
「え……?」
思わず想の方を見つめたら、「俺が知ってる結葉の笑顔はそんなんじゃねぇんだわ」って眉根を寄せられる。
三白眼で目つきが鋭いからどうしても怖そうに見られがちな想だけど、結葉には眼前の幼馴染みが誰よりも優しいお兄ちゃんだと分かっている。
「――想ちゃんには……やっぱり敵わない、な」
泣きそうになるのを必死で堪えながらつぶやいて。
「実は……朝からちょっと体調が良くなくて」
と嘘をついた。
「大丈夫なのか?」
結葉の嘘に、想が思わず立ち上がって結葉の方へ身を乗り出してくるのを、「平気」と制すると、結葉はゆっくりと言葉を紡いだ。
「でも……このところずっとこんなだから……。えっと……申し訳ないんだけど家のことで何かあったら、主人に……伝えて欲しいの」
ふっと視線だけで動物病院のある方を見つめると、想が小さく頷いた。
今現在、偉央が管理しているキッズ携帯を必要に応じて持たされている結葉だけど、そんなのは恥ずかしくて言えなかった。
「そっか。だから電話してこなかったんだな」
ふっと少し寂しそうな顔をして想が結葉を見詰めてきて。
結葉は想の表情に、ギュッと胸が締め付けられる。
「ごめんね。想ちゃん、心配してくれてたのに」
連絡出来なかった非礼を詫びて頭を下げたら、「馬鹿。――んなの俺の自己満で番号渡しただけだろ。気にすんな」って下げたままの頭にそっと触れられた。
その感触に、偉央からの暴力を思い出した結葉は、思わずビクッと身体を跳ねさせてしまう。
「あっ、スマンっ、つい」
それを、不用意に夫がある女性に触れたことへの警戒だと思ったらしい想が、慌てて手を引っ込めて謝ってきて。
結葉は、ただただ昔のように優しいだけの想に、気を遣わせて謝らせてしまう自分のことが嫌になった。
「ごめんね、想ちゃん」
想は結葉を傷つけたりしないのに、条件反射のように怯えた所を見せてしまったことがたまらなく恥ずかしくて申し訳なかった結葉だ。
「バカ。だから謝んなって。人妻相手に軽率だった俺が悪いだけだろ?」
なのにやっぱり想はどこまでも結葉に優しくて。
結葉は久しぶりに感じる他者からの優しさに、ついホロリと泣きそうになってしまう。
「あ、りがと。想ちゃん。――想ちゃんは全然変わらないね」
自分はこんなにも変わってしまったのに。
そう胸の中でつぶやきながら、一生懸命ニコッと笑ったら「なぁ結葉。俺の前では無理して笑わなくてもいいんだぞ?」って吐息を落とされた。
「え……?」
思わず想の方を見つめたら、「俺が知ってる結葉の笑顔はそんなんじゃねぇんだわ」って眉根を寄せられる。
三白眼で目つきが鋭いからどうしても怖そうに見られがちな想だけど、結葉には眼前の幼馴染みが誰よりも優しいお兄ちゃんだと分かっている。
「――想ちゃんには……やっぱり敵わない、な」
泣きそうになるのを必死で堪えながらつぶやいて。
「実は……朝からちょっと体調が良くなくて」
と嘘をついた。
「大丈夫なのか?」
結葉の嘘に、想が思わず立ち上がって結葉の方へ身を乗り出してくるのを、「平気」と制すると、結葉はゆっくりと言葉を紡いだ。
「でも……このところずっとこんなだから……。えっと……申し訳ないんだけど家のことで何かあったら、主人に……伝えて欲しいの」
ふっと視線だけで動物病院のある方を見つめると、想が小さく頷いた。
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