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11.両親からの連絡
〝実家で〟ゆっくり羽を伸ばして?
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『みしょう動物病院』では午後の診察開始時刻こそ十六時からと、利用者にとっては「どれだけ長いことお昼休みを取っているの?」みたいなことになっているけれど、実際には午前の診察が終わるのは大体平均して十三時前後。
そこから、お昼休憩の一時間を足した十四時付近までが休憩時間で、十四時あたりから午後の診察が始まる十六時までの数時間は比較的軽微な手術などをするための時間になっている。
犬猫に関しては避妊や去勢といった不妊手術が大半を占めるけれど、もちろん病気を治療するための手術なども入ってくるから、獣医師や看護師たちはのほほんとしているわけではなく、忙しく立ち働いているというのが実情だ。
手術の混み具合によっては確かにのんびり出来る日もあるにはあるけれど、偉央の場合は往診などもしているからその限りではないはずで。
結葉としては自分のワガママのために偉央の貴重な休憩時間を削るのは申し訳ない気持ちで一杯なのだ。
「でも、あの……」
それで、珍しくさらに言い募ろうとしたら「しつこいよ? 結葉」と冷ややかな声音で言い捨てられて、ビクッとなってしまった。
「ごめん、冷たい言い方になっちゃったね。もちろん結葉が僕のことを心配して言ってくれたんだっていうのは分かってるつもりだよ? けど――。僕の結葉へのこれはある種の趣味みたいなものだから……。僕の楽しみを奪わないで欲しいな?」
少し涙目になりながらチラリと垣間見た偉央の横顔はとても穏やかに見えた。けれど、同時にこれ以上は言わないでね、というオーラも醸し出していて。
結葉は「はい」と小声で答えることしか出来なかった。
それに、実は結葉のなかに、偉央のことを心配している気持ちと同じくらい、少しだけでいいから自由に外を動き回れる時間が持てたらな?という下心があったことも否めなかったから。
結葉は偉央に、それを読み取られたような気がして後ろめたくなったのだ。
***
「じゃあね、結葉。仕事が終わったら迎えに来るから……。それまで実家でゆっくり羽を伸ばしておいで?」
車から降りた結葉に、偉央がそう声をかけてきて。
結葉は偉央からの言葉のなかに、「決して無断で家から出ることのないように」というニュアンスを感じ取って、胸の奥がズキンと疼いた。
それに気付いていないふりをしながら淡く微笑むと、運転席の偉央へ「分かりました」と応える。
そこから、お昼休憩の一時間を足した十四時付近までが休憩時間で、十四時あたりから午後の診察が始まる十六時までの数時間は比較的軽微な手術などをするための時間になっている。
犬猫に関しては避妊や去勢といった不妊手術が大半を占めるけれど、もちろん病気を治療するための手術なども入ってくるから、獣医師や看護師たちはのほほんとしているわけではなく、忙しく立ち働いているというのが実情だ。
手術の混み具合によっては確かにのんびり出来る日もあるにはあるけれど、偉央の場合は往診などもしているからその限りではないはずで。
結葉としては自分のワガママのために偉央の貴重な休憩時間を削るのは申し訳ない気持ちで一杯なのだ。
「でも、あの……」
それで、珍しくさらに言い募ろうとしたら「しつこいよ? 結葉」と冷ややかな声音で言い捨てられて、ビクッとなってしまった。
「ごめん、冷たい言い方になっちゃったね。もちろん結葉が僕のことを心配して言ってくれたんだっていうのは分かってるつもりだよ? けど――。僕の結葉へのこれはある種の趣味みたいなものだから……。僕の楽しみを奪わないで欲しいな?」
少し涙目になりながらチラリと垣間見た偉央の横顔はとても穏やかに見えた。けれど、同時にこれ以上は言わないでね、というオーラも醸し出していて。
結葉は「はい」と小声で答えることしか出来なかった。
それに、実は結葉のなかに、偉央のことを心配している気持ちと同じくらい、少しだけでいいから自由に外を動き回れる時間が持てたらな?という下心があったことも否めなかったから。
結葉は偉央に、それを読み取られたような気がして後ろめたくなったのだ。
***
「じゃあね、結葉。仕事が終わったら迎えに来るから……。それまで実家でゆっくり羽を伸ばしておいで?」
車から降りた結葉に、偉央がそう声をかけてきて。
結葉は偉央からの言葉のなかに、「決して無断で家から出ることのないように」というニュアンスを感じ取って、胸の奥がズキンと疼いた。
それに気付いていないふりをしながら淡く微笑むと、運転席の偉央へ「分かりました」と応える。
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