【完結】【R18】結婚相手を間違えました

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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7.不安と違和感の中で*

偉央さん、どうしちゃったの?

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 偉央いお結葉ゆいはの水着を全部脱がしてしまうと、恥ずかしさに縮こまって震える結葉ゆいはに、即座にタオルを巻き付けてくれた。

 それが意外に思えてしまった結葉ゆいはだ。


「ほら結葉ゆいは。タオルで隠したから大丈夫。恥ずかしくないよ?」

 優しい声音とともにふわりとタオルにくるまれた結葉ゆいはは、極度の恥ずかしさからくる生理的な涙で潤んだ瞳で茫然と偉央いおを見上げた。

 偉央いおは、その視線が愛しくて堪らないという風に、タオルで包み込んだままの結葉ゆいはをギュッと抱きしめてくる。

 偉央いおは、結葉ゆいはが抵抗する素振りを見せれば追い詰める。
 だけど、結葉ゆいはが観念して偉央いおの言う通りにすると、途端優しくなった。

 結葉ゆいはは、付き合っている時には感じなかった偉央いおのそういうところに、今日だけで幾度も幾度も触れてしまい、少し違和感を覚えていた。

偉央いおさん……私……」

 寒いわけではないのに身体がフルフルと震えてしまう。

 偉央いおに何か言うことを、「怖い」と感じ始めてしまっている自分に気がついた結葉ゆいはだ。

「ん? もしかして寒くなった? お風呂溜めて温まる?」

 聞かれて、結葉ゆいはは慌てて首を振った。

「だ、大丈夫っ。――あの、偉央いおさん……。私、先に中に入ってても……いい?」

 結葉ゆいはは、部屋に戻って先ほど脱いだ服を着ようと思っていたのに、「うん、いいよ。けど……服は着なくて良いからね」と先手を打たれてしまう。

「あ、あのっ、でも……」

「今からさっきの続きをするんだよ? 服は必要ないよね?」

 結葉ゆいは偉央いおの言ったことに対して「でも」と言うたび、偉央いおの声のトーンが少しだけ低められる気がする。

「何か異論がある?」

 ギュッと唇をつぐんでうつむいた結葉ゆいはのあごをすくい上げると、偉央いおがまるで口答えは許さないよ?とでも言わんばかりの口調で結葉ゆいはの顔を覗き込んでくる。

 結葉ゆいははその瞳に射すくめられたみたいに動けなくなって、その威圧感から逃れたいみたいに「……ないです」と答えいた。

「お風呂のお湯を溜めるついでに僕はサッとシャワーを浴びてくるね。結葉ゆいははベッドで待ってて?」

 言って、何も言えずに偉央いおを見上げる結葉ゆいはの唇に軽い口づけを落とすと、偉央いお結葉ゆいはから離れる。

 結葉ゆいはの足元に落とされたままの水着を偉央いおが拾い上げて、「これ、僕のと一緒に軽くすすいで干しておくね」と言ってきたのへ、結葉ゆいはは「そんなこと自分で出来ます」って答えたかったのを寸でのところでぐっと飲み込んだ。
 何なら肌に直接触れていたものを男性にどうこうされるのは嫌だと思ったくらいだったけれど、それを言うとまた偉央いおの機嫌を損ねそうで言えなかった。

 偉央いおの腕が離れた途端、ペタリとその場にくず折れそうになってしまった結葉ゆいはだけど、一生懸命それだけは堪えて。

 偉央いおの姿が脱衣所の、プールサイドに面した扉の向こうに消えるのを立ち尽くしたままじっと見つめる。

 ここ一時間足らずで何度も何度も感じさせられた、偉央いおからの何とも言えないはなんだったんだろう、と思ってしまう。

 付き合っている時にはこんなことはなかったはずなのに。

 結葉ゆいははギュッとタオルの前を合わせると、「偉央いおさん、どうしちゃったの?」と自問するようにつぶやいた。
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