【完結】【R18】結婚相手を間違えました

鷹槻れん

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4.結婚を前提に

本心です

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***

「あ、あのっ。偉央いおさん……っ?」

 真っ赤になって、偉央いおが今しがた唇を寄せたばかりの鎖骨付近に手を当てると、結葉ゆいは偉央いおを見上げてオロオロとした声を出す。

「お願いだから……僕以外の男を見ないで?」

 ギュッと結葉ゆいはの頭を抱き抱えるようにして自分の胸元に押し当てると、偉央いおが小さくそうつぶやいて。
 結葉ゆいは偉央いおの心臓が忙しなく鼓動を刻んでいるのに気付いた。

 途端、胸の奥がギューッと切ないぐらいに痛くなって、結葉ゆいははいつの間にか自分が、幼なじみのそうよりよりもずっとずっと偉央いおのことを好きになっていたことに気付かされた。

 きっと自分が不用意にもそうの名前なんてつぶやいてしまったから、変に偉央いおのことを不安にさせてしまっている。

 そう思った結葉ゆいはは、偉央いおにちゃんと自分の気持ちを伝えないといけない、と思った。

偉央いおさん、私……」

 偉央いおの胸元、くぐもった声で結葉ゆいはが言葉を紡ぐ。

偉央いおさんが心配していらっしゃるように子供の頃からずっと幼なじみのそうちゃんのことが好きでした。でも……今は偉央いおさんのことが誰よりも大好きです。私、もう、偉央いおさんしか見えてません」

 恐る恐る自分を抱きしめる偉央いおの背中に腕を回してキュッと抱きついてみたら、偉央いおが小さく息を呑む気配が伝わってきた。

結葉ゆいはさん……今のは――」

「本心です」

 結葉ゆいはのあごにそっと手を掛けて顔を上向けさせて。
 不安そうに瞳を覗き込んでくる偉央いおに、結葉ゆいははにっこり微笑んでみせる。

「私、偉央いおさんが好きです。ずっとずっとちゃんと言葉に出来てなくてすみません」

 偉央いおはお見合いしたその日からずっと――。

 結葉ゆいはに絶えず愛の言葉をくれていた。

 結葉ゆいははそれを甘んじて享受しながらも、自分からは偉央いおに何も伝えていなかったことに思い至る。


偉央いおさん、私を……偉央いおさんのお嫁さんにしてくださいますか?」

 そう結葉ゆいはが言い終わるか終わらないかのうちに、偉央いお結葉ゆいはの唇を塞いだ。

 それは、今までの軽く唇をついばむ様なふんわりとしたバードキスではなくて、舌先で口中を探るようなフレンチキス。

 結葉ゆいははそんなキスは初めてだったから、どうしていいか分からずに戸惑ってしまう。

「ん、ぁ……っ」

 唇に隙間ができるたびに喘ぐように小さな吐息を漏らして懸命に偉央いおにしがみつく結葉ゆいはに、一旦唇を離した偉央いおが甘やかにささやく。

結葉ゆいは、無理に応えようとしなくていいから……僕に全部ゆだねて?」

 いつものように「さん付け」で呼ばれなかった名前と、微妙に外された敬語。
 いつものように優しいけれど、どこか自信に溢れたその言葉は、酷く結葉ゆいはを安心させた。

 偉央いおは自分よりも八つも年上の大人の男性なのだと。
 自分の至らない点は全てこの人がカバーしてくれるのだと。
 偉央いおの言葉に小さくうなずきながら、結葉ゆいははうっとりと思った。

 小林結葉ゆいはは流されやすいところのある女性だったから。

 引っ張ってくれる男性に強く惹かれるところがあった。
 そうしてそれが、後に結葉ゆいは偉央いおの関係に仄暗い影を落とす原因になるのだと、その時の結葉ゆいはは思いもしなかった。
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