【完結】【R18】結婚相手を間違えました

鷹槻れん

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4.結婚を前提に

キミの気持ちの整理がつくまでは

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「行けそうですか?」

 結葉ゆいはの戸惑いを察してくれたらしい偉央いおから優しくそう尋ねられて、結葉ゆいはは一瞬だけ不安いっぱいの目で両親に視線を流した。

 だけど母美鳥みどりは「頑張れ」と声に出さずにそんな結葉ゆいはを応援してくるばかりで。
 父茂雄しげおに至っては、世話人をしてくれた上司や、偉央いおの両親との会話に忙しいらしく、結葉ゆいはの視線に気付いてさえくれなかった。


「緊張、なさってますか?」

 再度柔らかな声音で問いかけられて、結葉ゆいははすぐそばの偉央いおを情けない顔で見上げる。

 オロオロしてばかりの結葉ゆいはと違って、偉央いおの言動は始終落ち着いていて穏やかで。
 眼鏡の奥の柔和な目の光に、結葉ゆいはは少しずつ気持ちが落ち着いてくるのを感じた。

 目の前の偉央いおは、先日病院で見かけたスクラブにドクターコート姿の時とはまた違った雰囲気で、本当にカッコ良くて。

 あの時はそういう目で見てなかったから気付かなかったけれど、立ち姿も姿勢がよくてすごく品があるように見える。

(こんな素敵な人が私のお見合い相手だなんて)

 偉央いお自身に対して初見の時から抱いていた評価の高さを思い出して、結葉ゆいはは今更のようにドキドキしてきてしまった。

「……すみません。緊張はしてますけど……大丈夫です」

 一度だけ深呼吸をしてざわつきをそっと抑えると、結葉ゆいは偉央いおに小さく頷いて見せる。


 少し離れた場で話をしている五人に頭を下げると、結葉ゆいは偉央いおとともに予約されているレストランがある最上階へと向かうため、エレベーターに乗り込んだ。


***


「小林結葉ゆいはさん。結婚を前提に僕とお付き合いしてくれませんか?」

 見合い後も特にお断りする理由もなく。

 結葉ゆいはに一目惚れをした、もっと貴女のことを知りたい、と熱烈に求愛してくれる偉央いおの熱意に押される形で交際を開始した結葉ゆいはだったけれど、もともと偉央いお見目みめ自体は嫌いではなかったこともあり、少しずつそうへのやるせない恋心の隙間を侵食するように偉央いおからの愛情が沁み込んでくるのを感じるようになった。

 見合い直後に「結婚を前提に」と偉央いおから言われていたこともあり、交際開始から三ヶ月が過ぎる頃には結葉ゆいは偉央いおとの未来を漠然と思い描くようになっていて。

 結葉ゆいはは幼なじみへの片思いの話を偉央いおにした覚えはなかったのだけれど、何か気付かせるものがあったのだろうか。

 偉央いお結葉ゆいはの気持ちの整理がつくまでは、と結葉ゆいはに手を出すことはなくて、しても触れるか触れないか程度の軽いキス止まりだったし、男性経験のない結葉ゆいはを気遣うようにそれ以上のことも無理には求めてこなかった。
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