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2.みしょう動物病院

好みのイケボ

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 声の感じからすると、第三の先生の方が第一の落ち着いた雰囲気の響きを持つ声の主より、若干若い気がした結葉ゆいはだ。

 とはいえ、第一の御庄みしょう先生も、中年男性な印象ではない声の張りで、どう考えてもせいぜい壮年といったところ。

(どの道お若いことに変わりはないよね)

 まだお顔を拝見したわけではないし、いくつぐらいの先生かは声からの、結葉ゆいはの自由気ままな憶測でしかないけれど、あの感じからするときっと三〇代そこそこだと思う。
 そんな若さでこんな大きな病院を切り盛りできるなんてすごいなぁと、手持ち無沙汰なのをいいことに、想像力豊かに勝手にあれこれ思い浮かべて感心してみたり。


 そんなアレコレを夢想しながら見つめた第一診察室のプレートの空きスペース――担当医の文字の上――には、ハムスターとウサギとフェレットのシルエットが描かれていた。

 目を凝らしてみれば、第二、第三にも同じ種類の札が付いていて。
 だけど各々担当医の文字上の生き物が、第二は小鳥とトカゲ、第三は犬と猫……とデザインが違っていることに気がついた。

 そう認識して見ると、各診察室に呼ばれて入っていく患者達が連れている生き物が、ほぼ室名札のシルエット通りに見えてきて。

(もしかして……先生方ひとりひとり、得意分野の生き物が違うってことなのかな?)

 考えてみれば、人間は身体の部位ごとに眼科、内科、皮膚科、耳鼻科など専門分野が分かれている。
 獣医師はこれらを総合的にこなし、なおかつ診る対象も種類がバラバラなのだから大変に違いない。
 こんな風に得意な生き物ごとに担当医が設けられていても、何ら不思議ではない気がした結葉ゆいはだ。

 ハムスターと一緒に来ている結葉ゆいはが呼ばれるのは、第一診察室だろうか?


 土曜日だからか、待合室は結構混み合っていて、診てもらえるまでに時間を要するかな?と思った結葉ゆいはだったけれど、自分が思っていたより大分早く呼ばれた気がする。

「小林さ~ん、福助く~ん、第一診察室へお入りください」

 結葉ゆいはと福助が呼ばれたのは予想通り第一診察室で。

 好みのイケボだと脳が認定してしまった声で――苗字だけとはいえ――自分の名前を呼ばれるのは、何だか結構照れ臭くて。
(ハムスターやウサギやフェレットを連れた飼い主さんが少なかったのかな?)
 結葉ゆいははまるでその照れを誤魔化すみたいにそんなどうでもいいことを思ってしまった。
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