上 下
165 / 168
いわゆるデートとか言うやつ

お前が鈍いのは知ってたけど、ここまでだったなんてな

しおりを挟む
「き、金曜にねっ、飲もうかって」

 とか、マジか!

 ――なぁ、それ、いくらなんでも今週の話じゃねぇよな?

 そんな淡い期待を込めて「今週?」とぼそっと聞いたら、バカ音芽おとめめ。
 あっけらかんと頷きやがった。

 こいつは本当……!
 一回〝男心〟を勉強してこい!


 そんなことを思って、不機嫌さを隠さないままに

「お前さ、それ冗談抜きで言ってる?」

 抑揚よくようのないムスッとした声音で問いかけたら、俺に腰を抱かれたまま「え?」と小さくこぼして後ろを振り返ってくんの。

 マジむかつくんだけど?

 あんまり腹立たしかったから、わざと不機嫌さマックスな顔で冷ややかに見下ろしてやったら

「はる、まさ?」

 ってつぶやいて〝意味分かりません〟みたいな顔をしてきて。

 おまけにそれを裏付けるみたいに小首を傾げやがるから、さすがに溜め息が出た。


「お前が鈍いのは知ってたけど、ここまでだったなんてな」


 俺は音芽の腰から手をほどくと、玄関先に置いたままにしていた荷物を手に取って、無言でリビングへ向かう。


「な、何で怒ったの?」

 慌ててそんな俺の後を追いかけて来てオロオロする音芽を、俺は思いっきり睨みつけてやった。

(あー、マジでイライラする!)

 そんな感情を隠さないままに憮然とした声音で「本当に分かんねぇの?」って問いかけたら、「……ごめんなさい。分かりません」って……誰か嘘だと言ってくれ!

 発された声音がしゅん、とした様子で小声なのは、一応申し訳なく思ってるからだろうか?

 けど……鈍すぎるにも程があんだけど?

 そう思ったら、自然と盛大な溜め息が漏れ出てしまう。

(何か俺ばっかり音芽おとめに夢中みたいで、すっげぇ寂しいじゃねぇか)


「バカ音芽」

 我慢できなくなってポツンとつぶやいたら、

温和はるまさ……もしかして……」

 音芽がリビングに突っ立ったままの俺の手をギュッと握って。

「――拗ねてる?」

 まるで真理に気が付いた学者みたいに瞳を輝かせながら、俺の顔を覗きこんできやがった。

(悪いかよ!)

 俺は盛大に毒吐どくつきながら、そんな音芽の視線から逃げるようにサッと目を逸らせる。


温和はるまささん、すごく分かりづらいんですけど……」

 掴んだ手をギュッと握ってしつこく言い募ってくる音芽に、俺は苦し紛れ。
 「分かれよ」って小さく吐き捨てた。

 音芽が俺の気持ちに気付かない事に散々腹を立てて拗ねていたくせに。
 分かった!と言われた途端、子供じみた自分の考え方を音芽に知られたのが恥ずかしくなって逃げたくなる。

 俺も大概天邪鬼あまのじゃくだよな。


「付き合い始めて初めての週末だろーが」

 それでも、俺がこんなになっているのには一応、理由があるのだと、聞こえるか聞こえないかの声でそう続けたら、音芽が一瞬驚いたように瞳を見開いて。

 今度こそ申し訳なさそうに俺を見つめて口を開いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...