【R18】温和はオトメをもっと上手に愛したい

鷹槻れん(鷹槻うなの)

文字の大きさ
上 下
140 / 184
俺の立ち位置

9

しおりを挟む
 特に児童や保護者の感情を荒立てねぇように慎重にことを運ばねぇと、変に反感なんてかっちまったら、後々色々と面倒だ。

 自分だけのことなら、そうなってもやましい事をしてるわけじゃなし、別に構やしねぇかとも思えたりするんだけど……。
 最愛の音芽を巻き込んでしまうのは頂けない。

 
 分かっていてもこの柔らかくてちっこい手を離さなきゃなんねぇと思ったら、ほんの一瞬、すげぇ残念な気持ちがダダ漏れちまって、今の表情かお、絶対音芽に見られたな、と気恥ずかしく思う。

 思った途端、照れ隠しでムスッとした顔になるとか、俺も大概ガキかよ!って内心苦笑しながら、ぶっきら棒に「……だな」ってつぶやいて断腸の思いで手を離す。

 自分から俺に手を離すことを促したくせに、実際そうした瞬間、音芽が悲しそうに瞳を揺らしたのが見えて、すっげぇ嬉しくて顔がニヤけそうになる。
 けど、そこであからさまに喜ぶのは恥ずかしいので、不機嫌な顔は崩さずにおいたんだ。

 ――ああ、もちろん、結構必死に、だよ!



***

 結局あの後、音芽おとめは「気持ちを落ち着かせたいから、下駄箱のところで少し時間をつぶして行くね」と言って。

 俺はそんな音芽を置いて、先に職員室へ入らせてもらうことにしたんだ。



 ややして、

「おはようございます、鳥飼とりかい先生」

 逢地おおち先生の挨拶に、見ていた書類から視線を外してふと顔を上げたら、音芽のやつがやけにしているのが分かって。

 内心で、「しっかりしろよ、バカ音芽」と悪態をつく。


 こう言う時に馬鹿正直な音芽は、色々と誤魔化すのが下手くそで、何だか危なっかしさに目が離せなくなる。

 俺と音芽が付き合っていることは、順序立てて最良の順番でカミングアウトしていこうと話したのに、こんなんじゃ、勘のいい人間には絶対勘繰られちまうぞ?

 どうしてもそんな音芽が気になって、チラチラと目で追ってしまっていた俺に気付いた音芽が、ハッとしたように「おはようございます」と小声で挨拶してきて。

 その態度に、俺は危うく溜め息を落としそうになる。

 ――頼むからもっと自然に出来ませんかね、音芽さん。


 逢地おおち先生から記入を頼まれた、出席簿のクリップボードと自分自身の手荷物を、音芽が机上に置くさまをじっと見つめていたら、どうしても意地悪したくなってきて。


 バカ音芽め。俺の視線にソワソワする様が可愛すぎるのが悪いんだぞ?


 そんなに小動物みたいにプルプルされたら、いじめたい衝動にかられんの、仕方ないだろ?


 なぁ、音芽。どう考えてもこれはお前が悪い。少しぐらい俺にいじられても文句は言えねえよな?

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...