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俺の立ち位置

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「思っても、いいの?」

 ややして俺の動向を探るみたいに音芽おとめが恐る恐るそう問いかけてきて。

 こちらの出方をうかがうようなその表情を横目に見て、もしかして音芽も俺のひねくれた態度のせいで戸惑っていたのか?と今更のように気付かされた。


「俺、お前に俺の彼女になれって言ったよな? ――お互いの年齢とし考えたら、普通結婚それ前提だろーが」

 ちったぁ言われなくても分かれ、バカ音芽おとめと付け加えたら、音芽が俺の横顔をじっと見つめてくるんだ。

 そうしてちょっぴり唇をとがらせて、
「言ってくれなきゃ……分かんないよ。――だって私、バカだもん」

 こいつ、俺の口癖を逆手にとってきやがった。

 珍しく俺に反抗してくる音芽を言いくるめてやろうと口を開きかけた俺だったけれど、目の端で音芽がポロリと涙をこぼしたのが見えて、思わず言葉を飲み込んだ。

***

 音芽おとめの涙の真意が聞きたくて堪らなかった俺だけれど、丁度車が学校の敷地内に入ったのでグッと我慢した。

 とりあえず車を停めてからゆっくり向き合おう。
 その方がいい。

 はやる気持ちを抑えながら教職員用駐車場の一角に駐車すると、俺はすかさず音芽の小さな手をギュッと握った。

「――何で……泣いてんだよ」

 別に俺は音芽を泣かせたかったわけじゃない。
 なぁ音芽。そいつはどういう涙なんだよ?
 お前の返答次第じゃ俺、身の振り方を考え直さなきゃならねぇだろ?

 内心心臓バクバクで音芽の顔を覗き込んだら、音芽の目に溜まった涙がますます大きく盛り上がってきて。俺は今にもこぼれ落ちそうな涙を前に、どうしたらいいのか分からなくなる。

 と、ややして
「嬉し、かったの……」
 音芽が俺の顔をじっと見つめ返しながら懸命にこぼれ落ちる涙の理由わけを語ってくれて。

「そんなこと思ってないって……嘘ついてごめんなさいっ。本当は……心の片隅でずっとずっと夢見てた。小さい頃、温和はるまさが言ってくれた言葉が生涯有効だったら良かったのに、って」

 俺は、音芽が泣きながら話してくれる、その言葉に胸をギュッとしめつけられる。
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