【R18】温和はオトメをもっと上手に愛したい

鷹槻れん(鷹槻うなの)

文字の大きさ
上 下
130 / 198
俺の初めて

4

しおりを挟む
 好きな女と肌を合わせるのがこんな幸せな気持ちになれるだなんて俺だって思ってなかったんだよ!

 ただ性欲処理のために抱くのと、抱きたくて抱きたくてたまらなくて恋焦がれた末に抱くのと、こんなに違うって誰が想像できる?

 自覚すればするほど幸せすぎて今更ながら心臓がバクバクしてきて。

 そんな俺をキョトンとして見つめてくる音芽おとめの視線に耐えられなくなった。

 自分でこっち向けとか言っといてアレだけど、いま俺の方見ないでもらえますかね?

 俺は半ば無意識に自分の表情を隠すみたいにギュッと音芽を抱き締めた。

 けど、この幸せな気持ちは音芽にどうしても伝えないといけないと思ったから。

 だから言うけど……音芽、俺の顔見ないで聞けよ?


「心の底から好きだって思う女を抱いたのは……だったんだよ。情けないぐらい余裕なさすぎで……恥ずかしくもなるだろっ」

 お前、俺にとって自分がじゃないの知ってるだろ?
 だからこんなん言い訳に過ぎないって思うかも知んないけど。


 でも……嘘じゃねぇから。


「本当は……もっと時間をかけてゆっくりほぐしてやりたかったのに……悪かったな。痛かっただろ?」

 言葉こそ気遣いマックスで、その実、俺は音芽おとめの頭を押さえる力を緩められずにいる。

 ばかりか、照れ隠しで、さらに一層力を込めてしまって。

 俺の手の下で音芽がモゴモゴと動いているけれど、絶対に顔、上げさせてやんねぇよ。

 こんな顔、恥ずかしくて見せられるかっ。


 結果、音芽がジタバタともがくに至って、慌てて手を離す羽目になった。

 やべ。
 危うく可愛い音芽を窒息させちまうところだったぜ。

 恐る恐る手を離してから「すまん」と謝ると、音芽が喘ぐように肩で息をして。

 それを見ていたら、さすがに申し訳なさで照れとかそういうのが吹っ飛んで行って。
 音芽には悪いが、内心ホッとしたのも事実だ。


***

 結局ひとりでシャワーを済ませた音芽おとめは、俺に隠れるようにしてこそこそと着替えを済ませて、「あの、支度あるし……帰るね」と言ってきて。


 音芽の帰る先は隣室だからすぐそこなのに、正直俺はまだ音芽を手放すのが名残惜なごりおしかったんだ。

 それで、部屋まで送ると言ってみたのだけれど。


「あ、でもすぐそこ……」
 とか、そんなん分かってんだよ。
 お前は俺と一緒にいたくねぇのかよ?


 そう思ったら面白くなくて、つれない音芽を睨んで黙らせてみたり。


 結局音芽を押し切る形で部屋まで付いていった俺に、
「えっと、……ば、バイバイ?」

 またしても音芽が存外あっさり自室に入ろうとするもんだから、何となく引き止めたい気持ちに支配されてしまう。

 だからと言って、これといった言葉が見つかるわけでもなく、ただ恨めしげな視線を送るだけだったんだけど。

 鈍感娘な音芽にも感じられる程度には、目に気持ちがこもっていたらしい。


 別れの言葉を告げながらも動作に迷いの出た音芽に、俺は扉が閉まる直前、どうしても抑えきれない衝動に駆られてドアを押さえた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

知らずに双子パパになっていた御曹司社長は、愛する妻子を溺愛したい

及川 桜
恋愛
児童養護施設の学習ボランティアにとんでもない男が入ってきた!? 眉目秀麗、高学歴、おまけに財閥御曹司。 不愛想でいけすかない奴だと思っていたのに、どんどん惹かれていって・・・ 子どもができたことは彼には内緒。 誰よりも大切なあなたの将来のために。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

処理中です...