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俺の初めて
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答えあぐねている音芽を見ていたら、彼女の、汗で首筋に張り付いた襟足が目について、思わず指先にクルクルと絡めたくなる。
「……やんっ、くすぐったい」
そう抗議の声を上げて首をすくめる音芽が可愛くて、この身体の主導権を全部俺が握ってしまえたら、しんどい時に無理させなくて済むのに、という衝動に駆られて。
なかなか風呂の返事をしてこない音芽に、
「だるくて一人で入れそうにないなら一緒に入ってやるけど……? ――身体ももちろん俺が洗ってやるし」
敢えて下心なんてないのだと〝お兄ちゃん〟面をしてそう言って、心の奥底では「どんなふうに俺に抱かれた痕跡が残っているか、身体の隅々まで調べさせろよ」とか思っていたりする。
けど残念。
「あっ。あのっ。ひ、ひとりで入れる、からっ」
音芽がソワソワしながらそう言ってきて、ギュッと身体を縮こめた。
聞き分けのいい兄を装った以上、ここで食い下がれなくなっちまった俺は内心舌打ちをしながら音芽を抱き締めていた手を緩めた。
それでもやっぱりどうしても悔しくて、言わずにはいられない。
「な、音芽。お前いい加減こっち向けよ」
吐息が音芽の前髪を揺らすくらい間近でそう乞えば、
「え、えっと私、いま、きっと酷い顔になってそうでっ。……それに……それに……温和とあんな……って考えたらすごく恥ずかしくてっ」
とか。
――だから無理だとでも言いたいんだろうか?
うつむいたまま俺の胸元に額を押し当ててイヤイヤするとか。
可愛すぎてこっちが悶絶しちまうだろ!
「……いや、お前……恥ずかしかったのは……お互い様なんだけど」
何かさ、俺まで照れるからそう言う反応、やめてもらっていいですか?
あー、マジでやべぇ。意識したら顔が熱くなってきた……!
そんな状態なのに。
まるで俺の現状を確認するみたいに恐る恐るこっちを見上げてきた音芽の大きな目と、彼女の前髪越しに目が合って。
瞬間、音芽が瞳を見開いて息を飲んだのが分かった。
「は、温和も……恥ずかしい、の?」
ややして、窺うように小声でそう問いかけてきた音芽に、俺は「お、お前とは……初めてだろーが」ってぶっきら棒に応えるので精一杯だった。
答えあぐねている音芽を見ていたら、彼女の、汗で首筋に張り付いた襟足が目について、思わず指先にクルクルと絡めたくなる。
「……やんっ、くすぐったい」
そう抗議の声を上げて首をすくめる音芽が可愛くて、この身体の主導権を全部俺が握ってしまえたら、しんどい時に無理させなくて済むのに、という衝動に駆られて。
なかなか風呂の返事をしてこない音芽に、
「だるくて一人で入れそうにないなら一緒に入ってやるけど……? ――身体ももちろん俺が洗ってやるし」
敢えて下心なんてないのだと〝お兄ちゃん〟面をしてそう言って、心の奥底では「どんなふうに俺に抱かれた痕跡が残っているか、身体の隅々まで調べさせろよ」とか思っていたりする。
けど残念。
「あっ。あのっ。ひ、ひとりで入れる、からっ」
音芽がソワソワしながらそう言ってきて、ギュッと身体を縮こめた。
聞き分けのいい兄を装った以上、ここで食い下がれなくなっちまった俺は内心舌打ちをしながら音芽を抱き締めていた手を緩めた。
それでもやっぱりどうしても悔しくて、言わずにはいられない。
「な、音芽。お前いい加減こっち向けよ」
吐息が音芽の前髪を揺らすくらい間近でそう乞えば、
「え、えっと私、いま、きっと酷い顔になってそうでっ。……それに……それに……温和とあんな……って考えたらすごく恥ずかしくてっ」
とか。
――だから無理だとでも言いたいんだろうか?
うつむいたまま俺の胸元に額を押し当ててイヤイヤするとか。
可愛すぎてこっちが悶絶しちまうだろ!
「……いや、お前……恥ずかしかったのは……お互い様なんだけど」
何かさ、俺まで照れるからそう言う反応、やめてもらっていいですか?
あー、マジでやべぇ。意識したら顔が熱くなってきた……!
そんな状態なのに。
まるで俺の現状を確認するみたいに恐る恐るこっちを見上げてきた音芽の大きな目と、彼女の前髪越しに目が合って。
瞬間、音芽が瞳を見開いて息を飲んだのが分かった。
「は、温和も……恥ずかしい、の?」
ややして、窺うように小声でそう問いかけてきた音芽に、俺は「お、お前とは……初めてだろーが」ってぶっきら棒に応えるので精一杯だった。
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