【R18】温和はオトメをもっと上手に愛したい

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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音芽の本心

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 これだからこいつは野放しにしておくと危ねぇんだと再認識させられる。
 ずっと傍にいて、変な男が下心剥き出しで近寄ってきたら、俺が追い払ってやんねぇと絶対すぐ食われちまう。

 ここまで苦労して守ってきたんだ。

 他所の男に掻っ攫われてたまるか!

 俺は音芽の頬を挟んでいた手を緩めると、片手で彼女のあごを軽く持ち上げるようにして、その愛らしい顔を上向かせた。

 そのまま、音芽の柔らかくて滑らかな唇に、優しくむように触れる。

 緊張してガチガチに強張っていた音芽の身体から力が抜けていくようにほぐしてやるんだ。

 ついばむように軽い口付けを何度かして唇を離すと、俺は音芽の顔をじっと見つめた。

音芽おとめ、俺のこと本当に好きなんだったら、俺と付き合えよ。彼女にはなりたくないけど俺のこと好きとか……そんなわけ分かんねぇ主張、俺は認めないから」

 本音はな、音芽。

 俺のこと好きだって言ってくれたの、マジ? 俺の勘違いじゃねぇなら頼むから俺と付き合ってくれ。
 彼女になりたくないとかわけ分かんねぇこと言って、俺を不安にさせんなよ?

 なんだけどな――。

 せめて一言、「俺のこと本当に好きなんだったら、俺と付き合って欲しい」くらい言えない俺は、お前を睨みつけるように不機嫌そうな態度しか取れなくて、鈍感なお前を戸惑わせるんだ。

 分かってはいるんだぜ?

 素直に言わなきゃ伝わるモンも伝わんねぇし、下手したらこじれちまうってことだって。

 でも、長い付き合いだ。俺のそんなところも含めて……お前なら受け留めてくれるだろ?

「で、でも温和はるまさ……」

 俺的にはこれでも結構はっきり意思表示したつもりなんだがな。音芽おとめはまだ何か問いたげに、「でも」とか言ってくるんだ。

 これ以上何か言われたら全部リセットされてしまいそうで怖くなる。

「うるさい、少し黙れ」

 俺は音芽が何も言えなくなるように、彼女を抱きしめてその先の言葉を奪った。
 ――つもりだった。

「あ、あのっ、はるまさ……?」
 なのにまだ何か言おうとしてくるとか……こいつ、本当基本的には従順なくせに時々どうしようもなく強情になるんだよな。

 正面からギュッと抱きしめた音芽の身体はとてもやわらかくて、どこか甘く感じられるいいにおいがする。

「――なぁ、音芽おとめ
 その体勢のまま、俺は熱に浮かされたように音芽に語りかける。

「俺、お前のこと……その……嫌いじゃ、ないから」

 あー、何でまたこういう言い方しかできねぇんだよ、俺!

 頭の中では「俺、お前のこと、すげぇ好きだ」とか、何なら「好き」なんて通り越して「愛してる」とまで嫌になるくらい何度も何度も叫んでるのに、口に出したらコレ。

 どういう変換だよ。他にもっと言いようがあんだろ。

 腹立たしいことに、この素直じゃない口は思っていることをその通り出せないみたいなんだ。
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