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音芽の訪問

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「んっ、あ、……」
 俺からの蹂躙じゅうりんに翻弄されるように、潤んだ瞳でたどたどしくも必死に応えてくれる音芽おとめが可愛くて、苦しげに漏らされた吐息でさえも媚薬さながらに俺をたかぶらせる。

 未だ俺の胸に置かれたままの彼女の手指に、時折ギュッと力がこもるのでさえ、俺を煽るかてにしかならなくて――。

 音芽の小さな手のひらには、俺が苦しいぐらいに彼女を求めて騒いでいる鼓動が伝わっているだろうか?

 名残惜しい気もしたけれど、俺は自分の感情をこれ以上暴走させないため、音芽の下唇をむようにして、やっとの思いで音芽を一方的で自己中な口付けから解放してやることが出来た。

 以前、俺がいたずらに音芽の唇を奪ったとき、こいつは「初めてだったのに」と泣いた。
 今回のこれも、酷いと泣かれてしまうだろうか。

 そう思って見つめる先、音芽が驚くほど蠱惑的な表情と、上気した頬をしているのが見えて――。
 おまけにトドメでも刺すみたいに、潤んだ瞳で恍惚と俺を見上げてくるとか。

 バカか、お前。そんな目で見られたら……。

 俺は無意識に音芽の頬を指先で撫で下ろして、濡れたままの唇に触れていた。
 そのまま薄く開いた唇を指先で軽くなぞって、滑るように首筋を辿らせて――。

「あ、――んんっ……」

 そこが女性の性感帯になりうることを多分に知った上で、俺は敢えていやらしく音芽の首筋を撫で下ろす。
 途端、音芽の身体がビクッと跳ねて、愛らしい唇から戸惑いを感じさせる喘ぎ声が漏れて。

 俺はそんな音芽をじっと見下ろしながら、下腹部にどうしようもなく熱が集まっていくのを感じずにはいられなかった。
 そんな抑えきれない劣情を声に乗せて、熱っぽく「音芽……」と愛しい女の名を呼んだら、その声は自分でも分かるぐらい情欲に低くかすれていた。

 そうしてあろうことか、音芽がそんな欲望まみれの呼びかけに応えるように、とろんとした目で俺を見上げるんだ。

 なぁ音芽。まさかお前、ここまで来て踏みとどまれとか言わねぇよな?

 音芽おとめの白くて細い首筋を辿っていた手を、そのまま彼女のシャツワンピにかける。
 音芽が嫌だと言ったら、すぐにでもやめてやりたい。でも、出来ればここまできて拒絶はされたくない。
 そんな気持ちがせめぎ合う中で、俺はなるべく音芽を怯えさせないよう、ゆっくりと丁寧にひとつずつボタンを外していった。

 やべー。すげぇ緊張する。
 もちろん、今までにこんなことをしたことがないわけじゃない。
 女の子の服を脱がしたことだって、1度や2度じゃないし、よもや愛する音芽とこんなことになったって、俺は場数さえ踏んでいればどうにかなると思っていたんだ。

 けど、実際こうなってみるとそんなのは間違いだったと思い知らされた。

 それこそ童貞を捨てた初体験の時みたいに、音芽女の子の服を脱がせる指先が小さく震えて、緊張で手指が冷えてくるとか……自分でも情けないと思う。

 当の音芽はというと、自分が今どんな状況にあるのか、実は分かっていないんじゃないだろうか。

 熱に浮かされたようなとろけた表情は、どう見ても心ここに在らずといった風情ふぜいで。
 これ、絶対何かのきっかけで正気に戻ったら慌てるやつだな。

 そう思ったら、そのスレていない反応でさえも愛しくて、俺は思わず生唾を飲み込んだ。

 音芽の服のボタンは、すでにウエストの辺りまで外し終えている。
 でも、このに及んで俺は、目の前の薄手の布地を左右に押し広げて、彼女の柔肌を外気にさらしていいものか、戸惑っていたりするんだ。

 マジで童貞かよ!
 とか、心の中で自分をののしりつつ――。
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