72 / 194
3人でパンケーキ
5
しおりを挟む
音芽のチョイスに、奏芽がわざとらしく露骨に嫌そうな顔をしたけれど、きっとポーズだ。
奏芽が甘いのも嫌いじゃないの、知ってるしな。
現に実際3種類頼んでみんなでシェアしたわけだが、奏芽はどれも旨そうに食ってた。
***
奏芽とはパンケーキ屋を出たあと、駐車場で別れた。
音芽に、何で一緒の車に乗り合ってこなかったの?って聞かれたけれど、まぁ色々あったんだよ。
元々はそのつもりだったのに出来なかった結果、お前を見失う羽目になって、俺がどんだけ心配したか、分かってんのか? バカ音芽。
思いはしたが、それを言うと俺がどれだけ音芽に執心してんのかバレそうなので、言わずにおいた。
代わりにテキトーな理由を並べ立てて一緒にこなかったのは奏芽のワガママってことにしておいたが、まぁあながち間違いじゃないだろう。
それに――。
今、こうして音芽と2人きりで帰途につけているのは相乗りしてこなかったお陰でもあるわけで……そうなるとまぁ、結果オーライかな、とか思う。
ふと横目で助手席の音芽を見たら、幸せそうに笑みを浮かべていて。
大方さっき食べたパンケーキのことでも思い出してるんだろうな。
可愛いやつめ。
心の中ではそう思っているくせに、口をついて出るのは
「……気持ち悪い」
とか。
全然そんなこと思ってねぇのに何でこんなことしか言えないんだ俺。
せっかくいい笑顔だった音芽が、慌てて口元を引き締めてしまったじゃないか。
本当、俺、馬鹿なんじゃねぇの?
俺の不用意な発言のせいでギュッと口元を力を入れてしまった音芽に申し訳ないと思うのに、その、頑張って真剣な顔をしているのもまた可愛いとか思ってしまって……。
結局のところ、俺は音芽ならどんな表情をしていても好きなんだと実感させられただけだった。
そんな、好きで好きでたまらない音芽を助手席に乗せられるのは、俺的には物凄く嬉しいし、下手したらさっき音芽を馬鹿にしたくせに、自分の口元が緩みそうなくらいヤバいことで。
音芽さえ望むなら俺はこいつのためにいくらでも足になってやるのにって思ったんだ。
けど、音芽自身は奏芽が自分勝手に好きなようにマイカーで動けることを羨ましいと感じている節もあって。
「みんなで一緒に動いたりするのは制約になるから嫌なんだと」
俺が奏芽と乗り合ってこなかったことを、奏芽がそんな風に思っているからだと説明したら、音芽は自分のあれこれと照らし合わせたんだろう。プンスカした様子で「カナ兄、ホント贅沢っ!」と頬を膨らませた。
けどそれって自由に動き回れる兄への嫉妬もあったんじゃねぇか?とか思っちまった。
そう思ったら聞かずにはいられなかったんだ。
「そーいや、お前は車、欲しくないのかよ」
って。
奏芽が甘いのも嫌いじゃないの、知ってるしな。
現に実際3種類頼んでみんなでシェアしたわけだが、奏芽はどれも旨そうに食ってた。
***
奏芽とはパンケーキ屋を出たあと、駐車場で別れた。
音芽に、何で一緒の車に乗り合ってこなかったの?って聞かれたけれど、まぁ色々あったんだよ。
元々はそのつもりだったのに出来なかった結果、お前を見失う羽目になって、俺がどんだけ心配したか、分かってんのか? バカ音芽。
思いはしたが、それを言うと俺がどれだけ音芽に執心してんのかバレそうなので、言わずにおいた。
代わりにテキトーな理由を並べ立てて一緒にこなかったのは奏芽のワガママってことにしておいたが、まぁあながち間違いじゃないだろう。
それに――。
今、こうして音芽と2人きりで帰途につけているのは相乗りしてこなかったお陰でもあるわけで……そうなるとまぁ、結果オーライかな、とか思う。
ふと横目で助手席の音芽を見たら、幸せそうに笑みを浮かべていて。
大方さっき食べたパンケーキのことでも思い出してるんだろうな。
可愛いやつめ。
心の中ではそう思っているくせに、口をついて出るのは
「……気持ち悪い」
とか。
全然そんなこと思ってねぇのに何でこんなことしか言えないんだ俺。
せっかくいい笑顔だった音芽が、慌てて口元を引き締めてしまったじゃないか。
本当、俺、馬鹿なんじゃねぇの?
俺の不用意な発言のせいでギュッと口元を力を入れてしまった音芽に申し訳ないと思うのに、その、頑張って真剣な顔をしているのもまた可愛いとか思ってしまって……。
結局のところ、俺は音芽ならどんな表情をしていても好きなんだと実感させられただけだった。
そんな、好きで好きでたまらない音芽を助手席に乗せられるのは、俺的には物凄く嬉しいし、下手したらさっき音芽を馬鹿にしたくせに、自分の口元が緩みそうなくらいヤバいことで。
音芽さえ望むなら俺はこいつのためにいくらでも足になってやるのにって思ったんだ。
けど、音芽自身は奏芽が自分勝手に好きなようにマイカーで動けることを羨ましいと感じている節もあって。
「みんなで一緒に動いたりするのは制約になるから嫌なんだと」
俺が奏芽と乗り合ってこなかったことを、奏芽がそんな風に思っているからだと説明したら、音芽は自分のあれこれと照らし合わせたんだろう。プンスカした様子で「カナ兄、ホント贅沢っ!」と頬を膨らませた。
けどそれって自由に動き回れる兄への嫉妬もあったんじゃねぇか?とか思っちまった。
そう思ったら聞かずにはいられなかったんだ。
「そーいや、お前は車、欲しくないのかよ」
って。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説




イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる