60 / 194
兄たちの制裁
4
しおりを挟む
「ま、ぶっちゃけ出会えるんならホント、性別は不問でもいいや、俺」
冗談のつもりで言ったのに真剣に受け取るなよ。反応に困るだろ。
後部シートで背もたれにもたれかかるようにして幼なじみから距離をとった俺に、奏芽が笑う。
「ハルのことは兄弟みたいに思ってるから安心しろ。音芽と同列だ」
って、ちょっと待て。俺だってそんなのを心配して背後にすがったわけじゃねぇよ。
***
「おっとハル。そろそろ音芽達、見えてくると思うけど、どうする? 車ん中に隠れて様子を窺う? それとも何してたんだよ!って外で待ち伏せする?」
奏芽が俺に見せてくれたスマホの画面で、赤いピンが駐車場まであと500m余りというところまで差し掛かっていた。
今更車から出て待ち伏せというのも滑稽な気がして、俺は奏芽に車内で待機の方にしようと告げた。
奏芽はどちらでも臨機応変に対応できるやつだ。
俺の決断に「OK」と言ってニヤリとすると、シートを倒してフラットにする。
「おい」
何事かと呼び掛けたら「いくらなんでも普通に座ってたら目立ち過ぎんだろ」って結構乗り気じゃねぇか。
俺は音芽が心配で堪らないというのにこの男。
「なぁ奏芽、お前、何でそんなケロッとしてられんだよ」
気持ちが高ぶりすぎて、思わず怒りの矛先がすぐ近くの悪友に向いてしまう。
奏芽は俺の言葉に一瞬キョトンとすると、
「平気ってわけじゃないさ。ハルがそんなに心配するってことはそれなりにわけありの相手なんだろーとは思うし」
言ってから、寝そべったまま俺の方を振り仰ぐ。
「同僚だし、そんな変なことはしないとは思うけど……何ていうか思い込みの激しそうなやつなんだ」
何となく奏芽の方を直視できなくて、視線をそらしながら「ほら、音芽って押しに弱いところあんだろ? 相手が強く出たらひるむっちゅーか」
高校生の頃、ある事件があって、音芽の心が壊れそうになったことがあるのを、俺は鮮明に覚えている。
多分それは目の前の奏芽にしてもそうだ。
「音芽のやつ、小さい頃から俺が鍛えてやってんのにホント、何であんな弱っちいままなのかね」
奏芽が溜め息混じりに言ったのを見て、もしかしてこいつが妹を必要以上に虐めていたのは、この男なりの愛の鞭だったんだろうかとふと思う。
「……にしても泣かせすぎだ」
独り言のように言った言葉は奏芽の耳に届いたかどうか。
音芽も俺たちもまだ小さかった折に、奏芽があまりに酷いことを言って音芽を傷つけたことがある。
あのとき、俺はどさくさにまぎれて音芽を自分のモノにする約束を取り付けた上に誓いのキスの真似事までしたんだが……恐らく音芽の記憶は彼女が幼すぎて曖昧だろう。
俺の中ではまだ有効な約束なんだけどなぁ。バカ音芽め。フラフラしやがって。
冗談のつもりで言ったのに真剣に受け取るなよ。反応に困るだろ。
後部シートで背もたれにもたれかかるようにして幼なじみから距離をとった俺に、奏芽が笑う。
「ハルのことは兄弟みたいに思ってるから安心しろ。音芽と同列だ」
って、ちょっと待て。俺だってそんなのを心配して背後にすがったわけじゃねぇよ。
***
「おっとハル。そろそろ音芽達、見えてくると思うけど、どうする? 車ん中に隠れて様子を窺う? それとも何してたんだよ!って外で待ち伏せする?」
奏芽が俺に見せてくれたスマホの画面で、赤いピンが駐車場まであと500m余りというところまで差し掛かっていた。
今更車から出て待ち伏せというのも滑稽な気がして、俺は奏芽に車内で待機の方にしようと告げた。
奏芽はどちらでも臨機応変に対応できるやつだ。
俺の決断に「OK」と言ってニヤリとすると、シートを倒してフラットにする。
「おい」
何事かと呼び掛けたら「いくらなんでも普通に座ってたら目立ち過ぎんだろ」って結構乗り気じゃねぇか。
俺は音芽が心配で堪らないというのにこの男。
「なぁ奏芽、お前、何でそんなケロッとしてられんだよ」
気持ちが高ぶりすぎて、思わず怒りの矛先がすぐ近くの悪友に向いてしまう。
奏芽は俺の言葉に一瞬キョトンとすると、
「平気ってわけじゃないさ。ハルがそんなに心配するってことはそれなりにわけありの相手なんだろーとは思うし」
言ってから、寝そべったまま俺の方を振り仰ぐ。
「同僚だし、そんな変なことはしないとは思うけど……何ていうか思い込みの激しそうなやつなんだ」
何となく奏芽の方を直視できなくて、視線をそらしながら「ほら、音芽って押しに弱いところあんだろ? 相手が強く出たらひるむっちゅーか」
高校生の頃、ある事件があって、音芽の心が壊れそうになったことがあるのを、俺は鮮明に覚えている。
多分それは目の前の奏芽にしてもそうだ。
「音芽のやつ、小さい頃から俺が鍛えてやってんのにホント、何であんな弱っちいままなのかね」
奏芽が溜め息混じりに言ったのを見て、もしかしてこいつが妹を必要以上に虐めていたのは、この男なりの愛の鞭だったんだろうかとふと思う。
「……にしても泣かせすぎだ」
独り言のように言った言葉は奏芽の耳に届いたかどうか。
音芽も俺たちもまだ小さかった折に、奏芽があまりに酷いことを言って音芽を傷つけたことがある。
あのとき、俺はどさくさにまぎれて音芽を自分のモノにする約束を取り付けた上に誓いのキスの真似事までしたんだが……恐らく音芽の記憶は彼女が幼すぎて曖昧だろう。
俺の中ではまだ有効な約束なんだけどなぁ。バカ音芽め。フラフラしやがって。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説



イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる