20 / 184
大誤算
1
しおりを挟む
俺は自分でも感心するぐらい我慢強い男だったらしい。
音芽からの凶悪な甘え攻撃にも、なんとか理性を保つことが出来たんだから。
ある意味大学生のころに色々遊んでおいて正解だったのかもしれない。
あれがなかったら……もしかしたら。
そう考えると少しゾッとした。
それじゃなくても俺は音芽を前にすると色々歯止めがきかなくなりそうで困るというのに。欲望のままに動いたら、絶対嫌われるだろ。
俺は平常心平常心と念仏のように頭の中で唱えながら、たかだか数歩の距離を無心で音芽を抱えて歩いた。下手に半裸になっていたりしたもんだから、そりゃあもう何ていうか意識するなという方が難しい話で。
腕のなかの音芽が緊張しているのが分かるぶん、その思いはなおさらだった。
音芽にバスタオルを被せておいて正解だったとつくづく思う。
脱衣所のバスマットの上に音芽を下ろした際、よろけられて抱きつかれないために
「立つのは平気か?」
恐る恐る手を離しながらそう聞いた。
もちろん、音芽自身が心配だというのもあったけれど、俺の方の理性の問題も多分にあったわけで。
音芽、純粋に心配してやれなくてホント、すまん。
なのに音芽はどこか嬉しそうに俺の方を見ると、「大丈夫」と可愛らしい声で答えるんだ。
俺は音芽のその仕草にドキッとして、思わず手元にあったタオルを引っ掴むと彼女の頭を無造作にガシガシと拭いた。
が、それがまずかった。
あまりに力任せに拭きすぎて、俺の動きに翻弄《ほんろう》された音芽がよろめいてしまったのだから。
音芽はよろけた拍子に俺の胸元に手をついてきて。
「――っ!」
その瞬間、俺は一気に身体中に血が駆け巡るのを感じた。
ヤバイ。早く音芽から離れねぇと……勃っ――。
俺は苦し紛れに音芽を一瞥して「――自分で拭きながら待ってろっ」と言い残すと、彼女を突き放すようにして大急ぎで脱衣所から逃げ出した。
脱衣所には大事をとって暖房を入れておいたから、多分音芽は濡れた状態でも寒さに震えることはないはずだ。
俺はそれを言い訳に、リビングで身体の熱が鎮まるまでしばしクールダウンをはかる。
(とりあえずアイツに何か着せねぇと身が持たん)
身が、というより理性が持たないというべきか。
俺はたんすを開けると割としっかりした厚手の生地のスウェットを引っ張り出した。
ちょっと季節感が微妙だがこの厚みは重要だ。
多分音芽がきたらダボダボだろうし、ズボンはもとより無理だよな。
そう思って上だけを出してみたけれど……ヤバイな。
アイツがこれを着たところとか想像したら、結構くる。
ふと音芽の華奢な腰のラインを思い浮かべた俺は、鎮まりかけた熱を呼び覚ましてしまって、溜め息を落とさずにいられない。
バカか俺は。何エロい想像してんだよっ!
着せても着せなくても俺の理性、結構ピンチなんじゃねぇの?
これは早々に手当てを済ませて音芽をあっちの部屋に戻さねぇと。
無理矢理押さえつけて手篭めにしてしまうとか、そういう最悪な事態にだけはならないように。
マジで俺の理性、大丈夫かな。
音芽からの凶悪な甘え攻撃にも、なんとか理性を保つことが出来たんだから。
ある意味大学生のころに色々遊んでおいて正解だったのかもしれない。
あれがなかったら……もしかしたら。
そう考えると少しゾッとした。
それじゃなくても俺は音芽を前にすると色々歯止めがきかなくなりそうで困るというのに。欲望のままに動いたら、絶対嫌われるだろ。
俺は平常心平常心と念仏のように頭の中で唱えながら、たかだか数歩の距離を無心で音芽を抱えて歩いた。下手に半裸になっていたりしたもんだから、そりゃあもう何ていうか意識するなという方が難しい話で。
腕のなかの音芽が緊張しているのが分かるぶん、その思いはなおさらだった。
音芽にバスタオルを被せておいて正解だったとつくづく思う。
脱衣所のバスマットの上に音芽を下ろした際、よろけられて抱きつかれないために
「立つのは平気か?」
恐る恐る手を離しながらそう聞いた。
もちろん、音芽自身が心配だというのもあったけれど、俺の方の理性の問題も多分にあったわけで。
音芽、純粋に心配してやれなくてホント、すまん。
なのに音芽はどこか嬉しそうに俺の方を見ると、「大丈夫」と可愛らしい声で答えるんだ。
俺は音芽のその仕草にドキッとして、思わず手元にあったタオルを引っ掴むと彼女の頭を無造作にガシガシと拭いた。
が、それがまずかった。
あまりに力任せに拭きすぎて、俺の動きに翻弄《ほんろう》された音芽がよろめいてしまったのだから。
音芽はよろけた拍子に俺の胸元に手をついてきて。
「――っ!」
その瞬間、俺は一気に身体中に血が駆け巡るのを感じた。
ヤバイ。早く音芽から離れねぇと……勃っ――。
俺は苦し紛れに音芽を一瞥して「――自分で拭きながら待ってろっ」と言い残すと、彼女を突き放すようにして大急ぎで脱衣所から逃げ出した。
脱衣所には大事をとって暖房を入れておいたから、多分音芽は濡れた状態でも寒さに震えることはないはずだ。
俺はそれを言い訳に、リビングで身体の熱が鎮まるまでしばしクールダウンをはかる。
(とりあえずアイツに何か着せねぇと身が持たん)
身が、というより理性が持たないというべきか。
俺はたんすを開けると割としっかりした厚手の生地のスウェットを引っ張り出した。
ちょっと季節感が微妙だがこの厚みは重要だ。
多分音芽がきたらダボダボだろうし、ズボンはもとより無理だよな。
そう思って上だけを出してみたけれど……ヤバイな。
アイツがこれを着たところとか想像したら、結構くる。
ふと音芽の華奢な腰のラインを思い浮かべた俺は、鎮まりかけた熱を呼び覚ましてしまって、溜め息を落とさずにいられない。
バカか俺は。何エロい想像してんだよっ!
着せても着せなくても俺の理性、結構ピンチなんじゃねぇの?
これは早々に手当てを済ませて音芽をあっちの部屋に戻さねぇと。
無理矢理押さえつけて手篭めにしてしまうとか、そういう最悪な事態にだけはならないように。
マジで俺の理性、大丈夫かな。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。



甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】


とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる