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ひどい男に徹する覚悟
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音芽をじっと見つめながら、
――お前にとっての俺は恋愛対象に見えているのか?
そう聞こうとしたら、
「――しっ、知ってるくせに。奏芽と温和は私のお兄ちゃん……でしょ?」
へらり、と笑ってそう言われてしまった。
俺は結構真剣に問いかけたつもりだったのに、やはり音芽にとって俺は恋愛対象ではないということか。
そう思ったら、無性に腹立たしくなってきた。
ああ、分かってるよ。これは完全に俺の暴走だ。
俺を兄だと断言して笑顔を浮かべる音芽を見ていたら、自分の感情が抑え切れなくなってきた。
マジでマズイ――。
思うのに、俺は音芽を冷めた目で見つめ返しながら、淡々とした声音で言わずにはいられなかった。
「……妹、か。そうだな。だったら――」
頭の中ではそんなことしたら終わりだと警鐘が鳴り響いているというのに。
なんでだろう。自分で自分を律することができないんだ。
俺は苛立ちのままに濡れて身体に貼りついてくる鬱陶しいシャツを乱雑に脱ぎ捨てると、音芽を睨み付けながら言葉を続けた。
「だったら――、俺の裸を見るのも、俺にお前の裸を見せるのも、平気だろ? 風邪ひく前に濡れたもの全部脱げよ。ついでに風呂も入って帰ればいい」
もちろんこれ、俺の本音だけど、言ったらダメなやつだというのは自覚している。
それなのに俺は二重人格者なのではないかと思うぐらい、自分の言動をコントロールできなくて――。
俺だって分かってるさ。
普通兄妹だからってある程度年齢を重ねたら、血の繋がりなんてない異性さながらに――場合によってはそれ以上に――距離を置くということぐらい。
でも、俺は音芽がいう兄妹という枠を利用してでも、彼女に俺のことを異性だと認めさせたかったんだ。
「背中ぐらい流させてやる」
敢えて流してやる、とは言わずに流させてやる……と告げて、音芽を冷ややかに見下ろした。
少しは俺のことを男として意識しろ、バカ音芽。
そう思って見つめる俺の目の前で、何故か伏し目がちに恍惚とした顔をする音芽がいて――。それに気付いた俺は、正直戸惑った。
オイ、ちょっと待て。
お前、そういうのが好きなタイプなのか?
即座に「温和のバカ! 何言ってるのよ!」と返ってくるものだとばかり思っていた俺は、案外満更ではなさそうに見える音芽の様子に、ドキッとしてしまう。
だから……! 俺がひるんでどうする!
このまま音芽が俺の要求をはにかみながら飲んだりしたら、俺、さすがにさっき言ったように兄として接するのは無理なんだけど。
そう思って内心ドギマギしていたら、
「あ、あのっ、温和さん? 何をご冗談を」
音芽が先ほどの表情とは裏腹に、至極まともな反応をしてくれて――。
俺はホッと胸を撫で下ろす。
視線を逸らしながら敬語でしどろもどろになる音芽を見ていたら、俺はやっと自分のペースを取り戻せた。
――お前にとっての俺は恋愛対象に見えているのか?
そう聞こうとしたら、
「――しっ、知ってるくせに。奏芽と温和は私のお兄ちゃん……でしょ?」
へらり、と笑ってそう言われてしまった。
俺は結構真剣に問いかけたつもりだったのに、やはり音芽にとって俺は恋愛対象ではないということか。
そう思ったら、無性に腹立たしくなってきた。
ああ、分かってるよ。これは完全に俺の暴走だ。
俺を兄だと断言して笑顔を浮かべる音芽を見ていたら、自分の感情が抑え切れなくなってきた。
マジでマズイ――。
思うのに、俺は音芽を冷めた目で見つめ返しながら、淡々とした声音で言わずにはいられなかった。
「……妹、か。そうだな。だったら――」
頭の中ではそんなことしたら終わりだと警鐘が鳴り響いているというのに。
なんでだろう。自分で自分を律することができないんだ。
俺は苛立ちのままに濡れて身体に貼りついてくる鬱陶しいシャツを乱雑に脱ぎ捨てると、音芽を睨み付けながら言葉を続けた。
「だったら――、俺の裸を見るのも、俺にお前の裸を見せるのも、平気だろ? 風邪ひく前に濡れたもの全部脱げよ。ついでに風呂も入って帰ればいい」
もちろんこれ、俺の本音だけど、言ったらダメなやつだというのは自覚している。
それなのに俺は二重人格者なのではないかと思うぐらい、自分の言動をコントロールできなくて――。
俺だって分かってるさ。
普通兄妹だからってある程度年齢を重ねたら、血の繋がりなんてない異性さながらに――場合によってはそれ以上に――距離を置くということぐらい。
でも、俺は音芽がいう兄妹という枠を利用してでも、彼女に俺のことを異性だと認めさせたかったんだ。
「背中ぐらい流させてやる」
敢えて流してやる、とは言わずに流させてやる……と告げて、音芽を冷ややかに見下ろした。
少しは俺のことを男として意識しろ、バカ音芽。
そう思って見つめる俺の目の前で、何故か伏し目がちに恍惚とした顔をする音芽がいて――。それに気付いた俺は、正直戸惑った。
オイ、ちょっと待て。
お前、そういうのが好きなタイプなのか?
即座に「温和のバカ! 何言ってるのよ!」と返ってくるものだとばかり思っていた俺は、案外満更ではなさそうに見える音芽の様子に、ドキッとしてしまう。
だから……! 俺がひるんでどうする!
このまま音芽が俺の要求をはにかみながら飲んだりしたら、俺、さすがにさっき言ったように兄として接するのは無理なんだけど。
そう思って内心ドギマギしていたら、
「あ、あのっ、温和さん? 何をご冗談を」
音芽が先ほどの表情とは裏腹に、至極まともな反応をしてくれて――。
俺はホッと胸を撫で下ろす。
視線を逸らしながら敬語でしどろもどろになる音芽を見ていたら、俺はやっと自分のペースを取り戻せた。
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