【R18】温和はオトメをもっと上手に愛したい

鷹槻れん(鷹槻うなの)

文字の大きさ
上 下
3 / 184
可愛い妹

1

しおりを挟む
 俺にはふたつ年下の可愛い妹がいる。
 と言っても、血の繋がりはない妹だ。
 たまたま、住んでいたマンションの隣に住んでいる一家と、うちの一家が家族ぐるみで付き合いがあっただけ。
 その縁で、その家に住む俺の同級生の妹が、俺にも本当の兄妹きょうだいのように懐いているというだけの話。

「ハルにいぃ~。カナにいがオトメはかわいくないから、だれのおヨメさんにもなれないっていうのっ」
 目に涙を一杯浮かべて、小さな女の子が俺の服の端をキュッと握りしめる。

 あれは確か俺が小1、音芽おとめが幼稚園年中の頃だったかな。

奏芽かなめ音芽おとめが可愛くて意地悪してるだけだよ」
 視線を合わせるように彼女の前にしゃがみ込んでそう言ったら、「ほんとう?」と俺を見つめてくる。
 大きな瞳と、くっきりとした二重まぶた。
 髪の毛をふたつにわけて、ちょこんと飾りゴムで結んだ姿が年相応で本当に愛らしい。
 この子の実兄で幼なじみの悪友、奏芽かなめと似た面差しを持つこの女の子が、血の繋がらない俺の妹だ。

「うん、本当だよ。それにね、音芽おとめ。音芽は大きくなったら俺のお嫁さんになるんだろう? だったら奏芽かなめの言うことなんて気にする必要ないじゃないか」
 優しく言って頭を撫でると、ふわっと花開くように音芽が微笑んだ。
 俺は彼女の小さな唇に、触れるか触れないかのかすめるようなキスを落として、近くに咲いていた花で指輪を作って音芽にあげた。

「うん! オトメ、おっきくなったらハルにいのおヨメさんになるっ!」

 可愛い可愛い俺の妹。

 音芽をギュッと抱きしめながら、ママゴトの延長のような生温かさを不意に不安に感じたのを覚えている。
 いつまでこの子はこんな風に俺に甘えてくれるんだろう?って。


 音芽おとめの実兄の奏芽かなめは、気に入った女の子をいじめたい性質のある奴で、クラスでも可愛い女子たちを中心に、あれこれ仕掛けては毎日のように悲鳴を上げさせている。

 やめとけよ、って言っても全然聞く耳を持たない。

 俺はクラスの女子たちはともかく、可愛い妹の音芽だけは……奏芽かなめに泣かされていたら絶対に慰めてやろう、と心に決めていた。
 そうしている限り、音芽おとめは俺を頼ってくれるから。

 ハルにい、あのね……と小さな手で服の裾とか握られると、兄ちゃんが絶対に守ってやるからな、と強く意識させられる。心の底から愛しい、と思わされる。

 奏芽かなめは何でこんな幼気いたいけ音芽いもうとをいじめるんだろう。

 俺はそれが不思議でたまらなかった。

「分かってねぇなぁ、ハル。かわいい女子の泣き顔ってさ、すごくドキドキするもんだろ?」

 一度理由を聞いてみたけれど、奏芽かなめの答えは俺にはさっぱり理解不能だった。


 もしも俺のせいで大好きな子が泣いたりしたら――。
 俺はたぶん、怖くてその子に近づけなくなる。

 大好きな子ほど、笑っていてくれるのがいいに決まってる。

 普通はそういうもんだよな?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...