294 / 317
■特典②『花々里の瓶詰め』
何に怒っているの?
しおりを挟む
頼綱が用意してくれていたのは、デニム素材のノースリーブワンピースに、長袖ニットのボレロ。
ご丁寧に値札などのタグは全て取り外されていて、すぐに着られる状態になっていた。
多分お店でそうお願いして包んでもらったんだろうな、って思って。
つくづく至れり尽くせりだなぁって思って感心する。
でも、それだけにこれも何とかならなかったの?と無茶なことを思わずにはいられない。
くるぶしまであるフレアスカートと、厚手の生地のおかげで多分パッと見は問題ない……はず。
でも私も頼綱も知ってるもの。
いま私がこの服の下に、ブラもショーツも身につけていないって。
***
「あ、あの……」
鏡の前で何度もチェックしてみたけれど、ノーパン・ノーブラなんて絶対に分かりっこない。
そう思っていても、そのことを知られている頼綱の前に立つとなると、分かる分からないはまた別の話で。
モジモジしながら頼綱のそばに行ったら「下着つけてないの、分からないね」とか……わざわざ言わないでっ。
真っ赤な顔で頼綱を睨みつけたら、「まぁ、そう睨むなよ。第一今回下着を買わなかったの、ある意味意図的なんだから」って私をじっと見つめてくるの。
「え……?」
下着は買えなかったと謝ってきたのは嘘だったの?
男の人が女性ものの下着を買うのはハードルが高かったのかな、仕方ないよねって自分に言い聞かせていた私としてはそれ、聞き捨てならなくて。
思わず「酷いっ!」って抗議したら、「どっちが?」って右手首をギュッと掴まれた。
「痛いっ」
言ったけど無視されて。
そのことに頼綱の怒りを垣間見た気がして怖くなる。
「さて、僕が何に怒っているのか、と言う話だったよね。花々里、お風呂で答えは出せたかね?」
手首を捕まえられたまま、腰をグッと引き寄せられる。
そのままスカート越しに裸のお尻を撫でられて。
私は「ヤダッ、頼綱、やめてっ!」って泣きそうになりながら彼を見上げた。
「ねぇ、花々里。この可愛い口は憎まれ口しかきけないの?」
お尻を撫でていた手が、背中を這い上ってきて、後頭部から髪の毛を鷲掴んだのが分かる。
そのままギュッと髪の毛を引っ張られて上向かされたところで、深く口付けられた。
「ん、んっ」
私の口中を余すところなく舐め上げた頼綱が、
「今日は口の中、随分と甘いじゃないか。百花蜜の影響がまだ残っているのか……?」
言って、あからさまに不機嫌な顔をして舌打ちをするの。
こんな感情的な頼綱、私、見たこと……ない。
「頼綱、な、んで、そんな……」
怒ってるの?
自分で考えろって言われたけど、皆目見当がつかないよ。
じわりと涙に潤んだ瞳で頼綱を見上げたら、吐き捨てるように言われた。
「僕以外から簡単に餌付けされるとか……ありえないんだけど?」
いつもより明らかに低められた声音で告げられた言葉に、私は瞳を見開いた。
「何のために僕がキミに毎日旨いものを食わせてると思ってる? 誰かに手懐けられたくないからに決まってるよね?」
私は食べ物に弱くて簡単に釣られてしまうところがある。
それを、頼綱がそんな風に心配していたなんて思いもしなかった。
「……ごめ、なさ……」
思わず謝ったら、
「金輪際、俺以外からホイホイ食べ物をもらわないこと。――約束できるね?」
ギュッと抱きしめられて、そう言われた。
私はどんどん頼綱に絡め取られていっている自分を不安に思いながらも、小さくコクリとうなずいた。
これは利害の一致、だよね?
……一方的な享受じゃないから……だからきっと、失くならない、はず?
そう自分に言い聞かせながら。
END(2021/01/08-01/12)
ご丁寧に値札などのタグは全て取り外されていて、すぐに着られる状態になっていた。
多分お店でそうお願いして包んでもらったんだろうな、って思って。
つくづく至れり尽くせりだなぁって思って感心する。
でも、それだけにこれも何とかならなかったの?と無茶なことを思わずにはいられない。
くるぶしまであるフレアスカートと、厚手の生地のおかげで多分パッと見は問題ない……はず。
でも私も頼綱も知ってるもの。
いま私がこの服の下に、ブラもショーツも身につけていないって。
***
「あ、あの……」
鏡の前で何度もチェックしてみたけれど、ノーパン・ノーブラなんて絶対に分かりっこない。
そう思っていても、そのことを知られている頼綱の前に立つとなると、分かる分からないはまた別の話で。
モジモジしながら頼綱のそばに行ったら「下着つけてないの、分からないね」とか……わざわざ言わないでっ。
真っ赤な顔で頼綱を睨みつけたら、「まぁ、そう睨むなよ。第一今回下着を買わなかったの、ある意味意図的なんだから」って私をじっと見つめてくるの。
「え……?」
下着は買えなかったと謝ってきたのは嘘だったの?
男の人が女性ものの下着を買うのはハードルが高かったのかな、仕方ないよねって自分に言い聞かせていた私としてはそれ、聞き捨てならなくて。
思わず「酷いっ!」って抗議したら、「どっちが?」って右手首をギュッと掴まれた。
「痛いっ」
言ったけど無視されて。
そのことに頼綱の怒りを垣間見た気がして怖くなる。
「さて、僕が何に怒っているのか、と言う話だったよね。花々里、お風呂で答えは出せたかね?」
手首を捕まえられたまま、腰をグッと引き寄せられる。
そのままスカート越しに裸のお尻を撫でられて。
私は「ヤダッ、頼綱、やめてっ!」って泣きそうになりながら彼を見上げた。
「ねぇ、花々里。この可愛い口は憎まれ口しかきけないの?」
お尻を撫でていた手が、背中を這い上ってきて、後頭部から髪の毛を鷲掴んだのが分かる。
そのままギュッと髪の毛を引っ張られて上向かされたところで、深く口付けられた。
「ん、んっ」
私の口中を余すところなく舐め上げた頼綱が、
「今日は口の中、随分と甘いじゃないか。百花蜜の影響がまだ残っているのか……?」
言って、あからさまに不機嫌な顔をして舌打ちをするの。
こんな感情的な頼綱、私、見たこと……ない。
「頼綱、な、んで、そんな……」
怒ってるの?
自分で考えろって言われたけど、皆目見当がつかないよ。
じわりと涙に潤んだ瞳で頼綱を見上げたら、吐き捨てるように言われた。
「僕以外から簡単に餌付けされるとか……ありえないんだけど?」
いつもより明らかに低められた声音で告げられた言葉に、私は瞳を見開いた。
「何のために僕がキミに毎日旨いものを食わせてると思ってる? 誰かに手懐けられたくないからに決まってるよね?」
私は食べ物に弱くて簡単に釣られてしまうところがある。
それを、頼綱がそんな風に心配していたなんて思いもしなかった。
「……ごめ、なさ……」
思わず謝ったら、
「金輪際、俺以外からホイホイ食べ物をもらわないこと。――約束できるね?」
ギュッと抱きしめられて、そう言われた。
私はどんどん頼綱に絡め取られていっている自分を不安に思いながらも、小さくコクリとうなずいた。
これは利害の一致、だよね?
……一方的な享受じゃないから……だからきっと、失くならない、はず?
そう自分に言い聞かせながら。
END(2021/01/08-01/12)
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~
けいこ
恋愛
人生に疲れ、自暴自棄になり、私はいろんなことから逃げていた。
してはいけないことをしてしまった自分を恥ながらも、この関係を断ち切れないままでいた。
そんな私に、ひょんなことから同居生活を始めた個性的なイケメン男子達が、それぞれに甘く優しく、大人の女の恋心をくすぐるような言葉をかけてくる…
ピアノが得意で大企業の御曹司、山崎祥太君、24歳。
有名大学に通い医師を目指してる、神田文都君、23歳。
美大生で画家志望の、望月颯君、21歳。
真っ直ぐで素直なみんなとの関わりの中で、ひどく冷め切った心が、ゆっくり溶けていくのがわかった。
家族、同居の女子達ともいろいろあって、大きく揺れ動く気持ちに戸惑いを隠せない。
こんな私でもやり直せるの?
幸せを願っても…いいの?
動き出す私の未来には、いったい何が待ち受けているの?
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~
八重
恋愛
【全32話+番外編】
「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」
伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。
ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。
しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。
そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。
マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。
※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】
まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と…
「Ninagawa Queen's Hotel」
若きホテル王 蜷川朱鷺
妹 蜷川美鳥
人気美容家 佐井友理奈
「オークワイナリー」
国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介
血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…?
華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる