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■特典②『花々里の瓶詰め』
瓶詰め1
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それで私、あの直後意識を失って――。
気がついたら〝瓶詰め〟になっていた。
「あーん、私のバカっ」
小さくつぶやいたら、一緒に詰められている花々にクスクス笑われた気がして。
花々と花々里。
字面が似ているだけにシャレにならない気がしてしまう。
「頼綱、心配してるかな」
いや、それよりも私にお使いを頼んだ八千代さんの方が困っていそうだ。
私が帰らないと、今夜の夕飯の食材も御神本家に戻らない。
「――を探していらっしゃるのですね? そんな貴方にピッタリの商品がございます」
と、向こうのほうから久遠さんの声がして。
木枠の中に入れられていたらしい私入りの球形の小瓶がふわりと持ち上げられた。
ここに至ってようやく私、事態の重さに気づいたの!
ひょっとして私、めちゃくちゃ小さくなってない!?
一緒に瓶詰めされている花たちが、私と同じようにサイズダウンしていたから気づかなかった。
木枠の中とはいえ、全体が覆い尽くされていたわけじゃない。
もっとしっかり周り――瓶の外を見回していれば気づけたのかもしれないけれど、グラグラするのが怖くて、私、足元ばかり見ていた。
華奢な指に挟まれて運ばれている小瓶の中の私は、まるで観覧車に乗っている時に強風に煽られて、ゴンドラごとグワングワン揺り動かされてるような居心地の悪さを覚える。
酔いそう……。
それに……怖い。
いつ手が離れて床に落っことされてしまうか分からないという心許なさに、身体が震えてしまう。
それに耐えきれなくなって、私はへなへなと花たちの間に両手をついてへたり込んだ。
――頼綱っ、助けてっ。
無意識にそんなことを思ってしまって、自分でもびっくりする。
でも、きっとこれは仕方ないことよ。
私、頼綱に雇われてるんだもんっ。使用人が、自分のライフラインを握る雇用主に全幅の信頼を寄せていたって不思議じゃない、はず。……多分。
でも……。
こんなに小さくなってしまった私じゃ、家事なんて出来ないし、例え見つけてもらえてもお払い箱にされてしまうかも。
そう思ったらにわかに不安になった。
頼綱に要らないって言われたら私、住むところもないし……どうしたらいいんだろう。
いつの間にか、こんなにも頼綱に依存していたのだと気付かされて、それが心許なさに拍車をかけて涙目になる。
そんな私の気持ちなんて知らぬげに私入りの小瓶を手にしたまま、久遠さんの声がする。
気がついたら〝瓶詰め〟になっていた。
「あーん、私のバカっ」
小さくつぶやいたら、一緒に詰められている花々にクスクス笑われた気がして。
花々と花々里。
字面が似ているだけにシャレにならない気がしてしまう。
「頼綱、心配してるかな」
いや、それよりも私にお使いを頼んだ八千代さんの方が困っていそうだ。
私が帰らないと、今夜の夕飯の食材も御神本家に戻らない。
「――を探していらっしゃるのですね? そんな貴方にピッタリの商品がございます」
と、向こうのほうから久遠さんの声がして。
木枠の中に入れられていたらしい私入りの球形の小瓶がふわりと持ち上げられた。
ここに至ってようやく私、事態の重さに気づいたの!
ひょっとして私、めちゃくちゃ小さくなってない!?
一緒に瓶詰めされている花たちが、私と同じようにサイズダウンしていたから気づかなかった。
木枠の中とはいえ、全体が覆い尽くされていたわけじゃない。
もっとしっかり周り――瓶の外を見回していれば気づけたのかもしれないけれど、グラグラするのが怖くて、私、足元ばかり見ていた。
華奢な指に挟まれて運ばれている小瓶の中の私は、まるで観覧車に乗っている時に強風に煽られて、ゴンドラごとグワングワン揺り動かされてるような居心地の悪さを覚える。
酔いそう……。
それに……怖い。
いつ手が離れて床に落っことされてしまうか分からないという心許なさに、身体が震えてしまう。
それに耐えきれなくなって、私はへなへなと花たちの間に両手をついてへたり込んだ。
――頼綱っ、助けてっ。
無意識にそんなことを思ってしまって、自分でもびっくりする。
でも、きっとこれは仕方ないことよ。
私、頼綱に雇われてるんだもんっ。使用人が、自分のライフラインを握る雇用主に全幅の信頼を寄せていたって不思議じゃない、はず。……多分。
でも……。
こんなに小さくなってしまった私じゃ、家事なんて出来ないし、例え見つけてもらえてもお払い箱にされてしまうかも。
そう思ったらにわかに不安になった。
頼綱に要らないって言われたら私、住むところもないし……どうしたらいいんだろう。
いつの間にか、こんなにも頼綱に依存していたのだと気付かされて、それが心許なさに拍車をかけて涙目になる。
そんな私の気持ちなんて知らぬげに私入りの小瓶を手にしたまま、久遠さんの声がする。
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