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■特典①『羽の生えたうさぎ』

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「そうそう。言い忘れていたけどね、ここで俺が花々里かがりに食べてもらいたいのは淡雪卵ウフ・ア・ラ・ネージュだよ。――前に風呂で話したの、覚えてる?」



 覚えてるも何も……石けんの泡で頼綱よりつなが連想したやつですよね!?

 ふわふわメレンゲがアングレーズソースさらさらカスタード?に浮かんでる?とかいうやつ!
 アーモンドがのってたら美味しいって言ってた、確か!




「ふわふわの、ここで食べられるの!?」


 色んな懸念が吹っ飛んで、嬉々として聞いたら「嬉しいかい?」って唇をそっと親指の腹で撫でられた。


 もぉ!
 なんでそんなことさらりと出来ちゃうかな!?


 私は頼綱よりつなと一緒にいるだけで、時々心臓がすごく苦しくなってしまうのに。


 頼綱は私を好きだと言ってくれたけど……それは本当なのかしら。

 からかっているだけじゃないの?

 私が彼のことを好きになったりした途端、「ドッキリでした!」って放り出されたりしないかな?



 そんな有り得ないことを考えてフルフルと頭を横に振る。



 ないないっ。
 頼綱のドッキリはともかくとして、私が彼を好きになることなんてっ!

 あ・り・え・な・い!


***


「めっ、メインはなぁに?」


 頼綱よりつなの指から逃れるように顔を一旦横にそらしてから、気持ちを切り替えるように元気よくそう問いかける。

 頼綱は唇から指を外されたことを気にした風もなく、「今日は白身魚と子羊から選べるみたいだけどどうする?」っていつもどおりの落ち着いた口調で聞いてきて。

 何で顔を背けるんだ?とかいう不満が微塵も感じられないの。


 ほらね。やっぱり頼綱の行動に振り回されて照れたりしたらバカを見るやつだ。
 危ない、危ない。



 メインは白身魚と小羊かぁー。

 子羊ってなんだか生けにえみたいで可哀想って思ってしまって、「お魚」って応えたら、「じゃあ俺は子羊にしようかな」って頼綱が言うの。


「あ、でも……」


 ふと気になって「子羊こどもを食べちゃうなんて可哀想じゃない?」と付け足したら、「でも花々里かがり、実の所キミはどちらも食べてみたいんだろう?」って。

 痛いところを突いてきますね?

 席に着くと頼綱よりつながすぐメニューを指差して店員さんと話して。

 時折「酸っぱいのは平気かい?」だの「食べられないものはあるかね?」だの私に聞いてくるの。


 頼綱が手にしているメニューをチラッと覗いて見たけれど、意味のわからないカタカナがずらりと並んでいて、実際何のことやら?だったので、こんな風に仕切ってもらえるほうが助かるなって思って。



花々里かがり、キミはまだ未成年だからお酒は無理だけど……。ノンアルコールのシャンパンっぽい飲み物にしてみるかい?」

「シャンパンっぽいの?」

 何だろうそれ、って思ったら「ほら、キミの好きなシャンメリーとかそういう系統のものだよ」って。

「それにしますっ!」

 むしろそうさせてくださいっ!

 嬉々として食いつき気味に答えてから、「あれ? 何で頼綱は私がシャンメリー好きだって知ってるの!?」って思った。
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