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Epilogue

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 妊婦健診は、最初に妊娠を確認して頂いたとき同様、うちの病院の紅一点、杉本先生にお願いしています。

 やっぱり頼綱よりつなにっていうのはいくら夫とはいえ――いや、夫であるがゆえに?――恥ずかしかったし、ましてやお義父とうさまや、同僚の男性医師に、なんていうのは論外でっ。

 お腹の上から経腹けいふくエコーが掛けられるようになってからならまだしも、初期の経膣けいちつエコーの時はさすがにちょっと、と思ってしまったの。


「――それでいいよね?」

 早くも始まっていた悪阻つわりの症状に戸惑いながら、妊娠していることを告げた日。

 母子手帳を手に喜びに震える頼綱にそう問いかけたら、彼を主治医に選ばなかったことを少し不満そうにしつつも、「花々里かがりの意思を尊重するよ」と了承してくれた。

 そんな頼綱が、「ビタミンAの過剰摂取になっても困るし、そもそも滋養が付きすぎるのは花々里かがりの症状からすると余りよくなさそうだから。……とりあえず産むまではうなぎ、やめておこうね」と言ってきたのには思わず「えっ」と声が出て。

 初期は胎児の奇形にも繋がるから控えるのは分かるけど……頼綱さん、いま出産までお預け的なこと言いませんでした!?

 私、妊娠で太りやすそうだから大好物の鰻、我慢しなさいって意味で合ってますか!?

 何だか主治医を頼綱にしなかったことへの意趣返しをされたようにも思えた私だったけれど、彼の言うことは一理も二理もある気がするし……きっと考えすぎ、だよね?


 そう思い直して、私、ヨダレなみだをグッと堪えて素直にうなずいて。

 心の中でをしたの。


***


 予定日を5日ほど過ぎた、快晴予報の朝。

 その頃にはさすがに仕事も産休に入っていて、家でのんびり過ごさせてもらっていたのだけれど、私ってば夏の暑さにもお腹の圧迫にも負けず、食い意地が元気に健在で。
 食べ悪阻つわりこそ妊娠中期の半ば頃には落ち着いたけれど、食欲は衰えなかったから我ながら凄いって思った。

 結果、太り過ぎないよう毎日のウォーキングが日課になって。

 最近では夏の射るような日差しを避けて、早朝にお散歩するようにしていたの。

 薄暗い日の出前とは言え、歩けばそれなりに汗をかいて。
 それを流したくてシャワーを浴びるために服を脱いだら下着を薄らと汚す〝おしるし〟に気が付いた。
 「わわわ、ついに!?」って思いながらも、冷静にシャワーを浴びて。

 髪をタオルドライしながら頼綱よりつなに、「おしるしが来たからそろそろかも知れない」って話したの。

 私がそう言った途端、ソワソワしながら「何かあったらすぐに連絡するんだよっ? いいね!? 分かったね!?」って、目に見えて狼狽うろたえる頼綱に、いつも仕事で赤ちゃんを取り上げていても、いざ我が子のこととなるとただの心配性のお父さんになっちゃうんだなぁって可笑しくなった。
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