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Epilogue
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「花々里、卒業おめでとう」
卒業式で着付けてもらった袴姿のまま頼綱にギュッと抱きしめられて、これまでの苦労が走馬灯のように頭の中を駆け巡った私は、その感情に押し流されてその場に崩折れてしまいそうになる。
それを頼綱にしがみついて必死に堪えて。
小町ちゃんたち同級生から遅れること丸2年。
みんなが文学部の3年生になる頃、私はようやく大学の編入試験に合格して、頼綱の母校である夏ヶ丘医科大学に1年生として入り直した。
その日の夜に頼綱と初めて結ばれて……とても幸せな一夜を過ごして。以来夜は彼と同じ部屋で眠っていて――。
ってそのことは今は関係なかったっ!
と、とにかくっ。
あの日から4年間。
私は必死に勉強して最短ルートで看護師と助産師の国家資格の両方を、一発合格で取得したんだけど。
頼綱みたいに、やらなくても勉強が出来ると言うタイプではなかった私は、在学中は頼綱先生にかなりスパルタで勉強をみてもらったの。
***
私が医科大学に編入した年、頼綱も29歳で後期研修を終え、晴れて彼の父親が運営している『御神本レディースクリニック』の産婦人科医になって。
立場的には副院長先生。
もちろん産科も健在のまま、お義父さまと協力しながら対応中。
医師が院長先生のワンマン体制で切り盛りされていた頃に比べると、頼綱が加わったことで大分院長先生の負担が減ったみたい。
でも――。
逆に頼綱の方はそこそこの人員が確保された中、交代制で勤務していた附属病院研修医時代より、生活が不規則で忙しくなった。
その中にあって、私の勉強まで見てくれて。
私は頼綱の超過密スケジュールを、すぐそばにいて肌で感じて。
頼綱が倒れてしまわないかすごくすごく心配でたまらなかったの。
それで、少しでも頼綱の負担を減らすため、絶対に最短で国家試験に合格しないと!って思わずにはいられなかった。
もし、資格を最短で取得出来なかったりしたら……頼綱を助けるどころか足を引っ張るばかりになってしまうもの。
そんなのは嫌だ!って、物凄く危機感を覚えたのを記憶しています。
在学時には勉強で分からないところは頼綱が。
夜遅くまで修学に勤しんでいたら八千代さんがお夜食でサポートを。
オマケのように、大学と家との往復以外ほぼ外出をしなかった私を、すっかり元気になったお母さんが「美味しいスイーツを見つけたから」と言っては「一緒に食べよう?」と母屋まで遊びに来てくれる日々。
私、そんな感じでみんなに支えられて学問に打ち込めているんだって、痛感しまくりの4年間でした。
――きっとそのお陰。
凡人な私にはすっごくすっごく大変だったけど、ちゃんと卒業する頃には欲しかった資格を得ることが出来て……。
これで晴れて頼綱の役に立てるんだ!って思ったら、それが嬉しくて嬉しくて堪らなかったの。
卒業式で着付けてもらった袴姿のまま頼綱にギュッと抱きしめられて、これまでの苦労が走馬灯のように頭の中を駆け巡った私は、その感情に押し流されてその場に崩折れてしまいそうになる。
それを頼綱にしがみついて必死に堪えて。
小町ちゃんたち同級生から遅れること丸2年。
みんなが文学部の3年生になる頃、私はようやく大学の編入試験に合格して、頼綱の母校である夏ヶ丘医科大学に1年生として入り直した。
その日の夜に頼綱と初めて結ばれて……とても幸せな一夜を過ごして。以来夜は彼と同じ部屋で眠っていて――。
ってそのことは今は関係なかったっ!
と、とにかくっ。
あの日から4年間。
私は必死に勉強して最短ルートで看護師と助産師の国家資格の両方を、一発合格で取得したんだけど。
頼綱みたいに、やらなくても勉強が出来ると言うタイプではなかった私は、在学中は頼綱先生にかなりスパルタで勉強をみてもらったの。
***
私が医科大学に編入した年、頼綱も29歳で後期研修を終え、晴れて彼の父親が運営している『御神本レディースクリニック』の産婦人科医になって。
立場的には副院長先生。
もちろん産科も健在のまま、お義父さまと協力しながら対応中。
医師が院長先生のワンマン体制で切り盛りされていた頃に比べると、頼綱が加わったことで大分院長先生の負担が減ったみたい。
でも――。
逆に頼綱の方はそこそこの人員が確保された中、交代制で勤務していた附属病院研修医時代より、生活が不規則で忙しくなった。
その中にあって、私の勉強まで見てくれて。
私は頼綱の超過密スケジュールを、すぐそばにいて肌で感じて。
頼綱が倒れてしまわないかすごくすごく心配でたまらなかったの。
それで、少しでも頼綱の負担を減らすため、絶対に最短で国家試験に合格しないと!って思わずにはいられなかった。
もし、資格を最短で取得出来なかったりしたら……頼綱を助けるどころか足を引っ張るばかりになってしまうもの。
そんなのは嫌だ!って、物凄く危機感を覚えたのを記憶しています。
在学時には勉強で分からないところは頼綱が。
夜遅くまで修学に勤しんでいたら八千代さんがお夜食でサポートを。
オマケのように、大学と家との往復以外ほぼ外出をしなかった私を、すっかり元気になったお母さんが「美味しいスイーツを見つけたから」と言っては「一緒に食べよう?」と母屋まで遊びに来てくれる日々。
私、そんな感じでみんなに支えられて学問に打ち込めているんだって、痛感しまくりの4年間でした。
――きっとそのお陰。
凡人な私にはすっごくすっごく大変だったけど、ちゃんと卒業する頃には欲しかった資格を得ることが出来て……。
これで晴れて頼綱の役に立てるんだ!って思ったら、それが嬉しくて嬉しくて堪らなかったの。
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