上 下
246 / 317
私にぴったりの?

4

しおりを挟む
***

 今日もナビの言う通りに歩いて、ちゃんと家に帰り着いた私は、八千代さんに帰宅の挨拶をしたついで、手が空いたら部屋に来ていただきたい旨を告げて、自室でファッションショーを開始する。


 時節は、じきに夏休みに入ろうかという頃。

 頼綱よりつなとは夕方からのお出かけだから、日中ほど日差しは強くはないだろう。

 ――けど、それでも着るならサラリとした肌触りの半袖がいい。

 そう思った私は、クローゼットの中から淡い生成きなりのシャツワンピースを取り出して、石鹸の香りがする汗拭きシートで丁寧にぬぐったサラサラの肌に合わせてみた。
 本当はシャワーを浴びられたら嬉しいんだけど、何だかそこまでしたら八千代さんや頼綱に、気合い入りすぎてるって思われそうで恥ずかしくて出来なくて。

 サラサラになる汗拭きシート、持っておいて良かった!


 選んだワンピはウエストがヒモでキュッと締められる様になっているデザインだから、思いのほかスタイルがよく見える。
 それに、何よりスカート丈が短か過ぎなくて、清楚な感じに見えるのがいい。


「これにしようかな」

 迷いを乗せて鏡の前でクルクルと回っていたら、八千代さんがノックをして部屋の前に立つ気配。

「はぁ~い。どうぞ」

 私の声に扉を開けた八千代さんと、鏡越しに目が合って。

花々里かがりさん、とってもお似合いでございますよ」

 と、八千代さんがすぐさま太鼓判を押してくださった。

 頼綱のことを熟知していらっしゃる八千代さんがOKを出してくださったなら安心だ。

「じゃあ、これにしますっ」

 ここ数週間、いつもなら帰宅するなり机に齧り付くのが日課になっていた私だけれど、今日は……今日だけは特別。

頼綱よりつな坊っちゃまとのデート、久々でございますね」

 ニコニコと微笑まれて、私はにわかに照れてしまう。

 何も言わなくても八千代さんは全部お見通しなんだって思ったらくすぐったくて居た堪れない気持ちになる。

 や~ん。恥ずかしいっ。

 そうもだえながら照れ臭く思う反面、だからこそ話が通りやすくていいと言うのもあって。


「あ、あのっ。八千代さんっ。よ、頼綱との久しぶりのお出かけなので……その……か、髪っ。えっと……編み込みとかして頂きたいなって思ったりしたんですが……お願い出来ますか?」

 帰宅後、部屋へ来て頂きたいとお願いした理由は、正にそれ。

 私は不器用で、頼綱にもらったバレッタで横髪を掻き上げてハーフアップにすることはできても、可愛らしく編み込んだりすることは出来ないから。

 今日ぐらい、ちょっとだけ背伸びしてみたいなって思ったの。


「もちろんでございます」

 にっこり笑った八千代さんが、鏡の前に腰掛けるように目線でうながしてきて。
 私はいそいそと八千代さんの前に座った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。 「別れよう。」 その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。 飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。 「男ならキスの先をは期待させないとな。」 「俺とこの先・・・してみない?」 「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」 私の身は持つの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。 ※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【R18・完結】甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~

花室 芽苳
恋愛
【本編完結/番外編完結】 この人なら愛せそうだと思ったお見合い相手は、私の妹を愛してしまった。 2人の間を邪魔して壊そうとしたけど、逆に2人の想いを見せつけられて…… そんな時叔父が用意した新しいお見合い相手は大企業の御曹司。 両親と叔父の勧めで、あっという間に俺様御曹司との新婚初夜!? 「夜のお相手は、他の女性に任せます!」 「は!?お前が妻なんだから、諦めて抱かれろよ!」 絶対にお断りよ!どうして毎夜毎夜そんな事で喧嘩をしなきゃならないの? 大きな会社の社長だからって「あれするな、これするな」って、偉そうに命令してこないでよ! 私は私の好きにさせてもらうわ! 狭山 聖壱  《さやま せいいち》 34歳 185㎝ 江藤 香津美 《えとう かつみ》  25歳 165㎝ ※ 花吹は経営や経済についてはよくわかっていないため、作中におかしな点があるかと思います。申し訳ありません。m(__)m

処理中です...