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私にぴったりの?

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「えっ?」

 その言葉が信じられなくて思わず頼綱よりつなを見上げたら、そのままあごをすくい上げられて、唇に軽い口付けを落とされる。


「あ。よ、り……つなっ」

 小さく吐息を落とすように彼の名を呼んだら、

「そんな熱のこもった目で見つめないで? ――我慢できなくなる」

 ってフイッと目を逸らされてしまった。


 私たちは結局入籍もまだで……何なら添い寝だってあの未遂みすいの日以来1度もない。

 頼綱のお父様へは一度時間を作ってちゃんと紹介して頂いたけれど、家同士の正式な顔合わせはうちのお母さんが元気になってからということになって、色々と順番がごちゃごちゃになっている。


 それでかな?

 あるのは今みたいな軽い口付けだけで、大人がするような、もっと深いキスもなし。


 頼綱はあんなに色々性急に進めたがっていたのに、不自然なくらい二の足を踏んでいる気がして。


 ――一体、どうしちゃったんだろう? これってもしかして。


「あ、あのっ、頼綱っ。わ、私、魅力、ない?」

 不意に不安になった私は、思わず椅子から立ち上がって、顔を微妙に私から背けたままの頼綱の手にそっと触れた。

 途端頼綱がビクッと肩を跳ねさせて、そのことに私は驚かされる。


頼綱よりつな……?」

 ギュッと頼綱の指先を握って彼の前に回り込むと、うつむけられたままの彼の顔を、下から覗き込んだ。


「――にゃふっ!?」

 ちょ、ちょっと待って!?
 嘘でしょ、嘘でしょ!?

 私、いま、驚きのあまり変な声が出てしまったじゃないっ!


 頼綱が真っ赤になって目端を潤ませていたとか……きっと気のせい、だよ、ね?

 恐る恐るもう1度頼綱の表情をうかがい見たら、気のせいなんかじゃなくってドキッと心臓が跳ねる。

 私は頼綱の表情に釣られたように、自分の頬がぶわっと熱くなるのを感じた。


「……何をバカなことを。花々里かがりが魅力ないわけがないだろう?」

 ――実際ありすぎて困ってるんだ。


  ボソリと吐き捨てるように付け加えられた言葉に、私はますます照れてしまう。


 そう。

「なっ、なっ、なっ」

 ――何を言い出すの!?

 が言えなくて、「な」ばかり連呼してしまう程度には。
 私、恥ずかしさに混乱していますっ!



「あのね、花々里かがり。キミは今からすごく大変な時期に入る。俺のせいで変に疲れさせてはいけないと思ってるんだが、察してはくれないか?」

 言われて、頼綱はもしかして私のために〝我慢〟してくれているの?と思って。

「頼綱?」

 恐る恐る彼の名を呼んだら、頼綱がほぅっと溜め息を落とした。

「俺なりの願掛けみたいなもんだよ。キミが無事試験に受かるまで、俺は花々里かがりに手を出したりしない。正直結構しんどいから……一発で合格しておくれね?」

 恨めしそうに釘を刺されて、私は小さく息をのんだ。
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