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私にぴったりの?
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「花々里。指輪が出来たみたいだよ。明日は俺、早番で少し早く帰れるし……夕方一緒に取りに行こうか」
大学を辞めるにせよ何にせよ、今すぐというわけにはいかなくて。
もちろんお母さんにも相談しないといけなかったし、色々な手続きもある。
頼綱に、胸のうちに秘めていた思いをぶつけてから3週間。
宝石店から電話があったとかで、頼綱が私の部屋の扉をノックして顔を覗かせるなりそう言って微笑んだ。
その笑顔にうっとり見惚れて反応が少し遅れてしまって、
「花々里?」
頼綱に怪訝そうな表情をされてしまった。
編入試験に向けて勉強だけは開始しておこうと思った私は、頼綱が用意してくれたテキストを使って時間を見つけては少しずつ勉強しているのだけれど、明日ほんの少し頼綱とお出かけをするぐらいは許されるよね。
「う、うんっ」
シャーペンをノートの上に転がして伸びをしながら言ったら、「進んでるかね?」と聞かれて。
「えっと……。まぁまぁ、かな」
実際捗っているかと聞かれたら可もなく不可もなくと言ったイメージ。
「大学を辞めて丸1日勉強に使える環境になったら、どこかしっかり勉強を見てもらえる師に付ける環境を用意しようね」
頼綱にふわりと頭を撫でられて、私はそこまでしてもらわなくても……という言葉を寸でのところで飲み込んだ。
「……頼っても……いい?」
椅子に腰掛けたまま、私のノートをパラパラとめくる頼綱を見上げて恐る恐る問いかける。
「当然だよ。花々里の夢は俺の夢でもあるからね」
頼綱がにっこり微笑んで私の頭を再度そっと撫でてくれる。
その優しい表情と、頭に乗せられた大きな手の温もりに、私はドキドキしてしまう。
家にいるときの頼綱はお出かけしている時と違って髪を下ろしている。
お風呂上がりの彼からはふんわりと優しい石鹸の香りがして――。
その姿も大分見慣れたとはいえ、やっぱりオールバックの時より頻度が低くて落ち着かないの。
「花々里のハーフアップ姿、やっぱり馴染みが薄くて何か照れるね」
耳に揺れるイヤリングごと、耳朶にそっと掠めるように触れて、頼綱がつぶやいた。
大学を辞めるにせよ何にせよ、今すぐというわけにはいかなくて。
もちろんお母さんにも相談しないといけなかったし、色々な手続きもある。
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その笑顔にうっとり見惚れて反応が少し遅れてしまって、
「花々里?」
頼綱に怪訝そうな表情をされてしまった。
編入試験に向けて勉強だけは開始しておこうと思った私は、頼綱が用意してくれたテキストを使って時間を見つけては少しずつ勉強しているのだけれど、明日ほんの少し頼綱とお出かけをするぐらいは許されるよね。
「う、うんっ」
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「えっと……。まぁまぁ、かな」
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「当然だよ。花々里の夢は俺の夢でもあるからね」
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お風呂上がりの彼からはふんわりと優しい石鹸の香りがして――。
その姿も大分見慣れたとはいえ、やっぱりオールバックの時より頻度が低くて落ち着かないの。
「花々里のハーフアップ姿、やっぱり馴染みが薄くて何か照れるね」
耳に揺れるイヤリングごと、耳朶にそっと掠めるように触れて、頼綱がつぶやいた。
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