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初めての気持ち

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「ん? どうしたのかね、花々里かがり

 小首を傾げるようにして問われた私は「何でもないっ」って慌ててうつむく。

 と、そんな私の方へほんの少し身体をかがめた頼綱よりつなが、耳元に唇を寄せて小声で言うの。

「ひょっとして……もっとゴネて欲しかった?」

 クスッと笑われて、私は真っ赤な顔で頼綱を睨みつけた。

 悔しいけど〝図星〟だったんだもん。

 だってね、さっき頼綱、言ったんだよ?

 ――不安だから頼綱おれのものだという印をつけさせて?みたいなこと。

 それをそんなにアッサリ引き下がられたら、あれは嘘だったのかな?って悲しくもなるじゃない。

「頼綱のバカ! もう知らないっ」


 何だか自分ひとりが勘違いして盛り上がっていたみたいで、泣きたいぐらいに虚しくなって。
 思わずそっぽを向いて彼から離れようとしたら、即座に手をつかまれた。


「ねぇ花々里かがりがゴネないのにはそれなりの理由があるって考えないの?」

 続いてそう問いかけられた私は、涙目のまま頼綱を見上げる。

 視線を上向けたと同時にポロッと涙が落ちて、それに気付いた頼綱が「ごめんね、花々里。意地悪し過ぎたかな? ――許して?」って素直に謝ってくれて。

 ふっと表情をやわらげると、
「花々里が俺のことを好きだって態度で表してくれるのが嬉しくてつい、ね」
 って心底嬉しそうに笑うの。

 ズルイよ、頼綱よりつな

 そんな表情かおされたら私、これ以上怒れないじゃない。


「――頼綱のこと好きって。……私、ちゃんと伝えたもん。バカ」

 それでも何とか頼綱から視線をそらしてそれだけは言ってやった。

 その言葉に、頼綱は「そうだね、言ってくれたね。だけど……何度聞かされても俺はすぐに不安になるんだ。――はね、花々里かがり。キミが思う以上に嫉妬深いんだよ?」って私の頭をそっと撫でてくれて。

 私は頼綱のその言葉に、彼がずっと私がさっき感じたみたいなモヤモヤを心に抱えているのかな?って思ったら、あんなしんどいの、どうにかしてあげなきゃって思ってしまった。


「あのっ、どうやったら……頼綱のモヤモヤ、減らせる?」

 気が付いたら私、頼綱を見上げてそう問いかけていた。

 頼綱は一瞬瞳を見開くと、小さく吐息をついて、「今からひとつ、試してみたいことがあるんだけど……いいかな?」って淡く微笑むの。

「試してみたい、こと?」

 頼綱のことだから変なことを言い出すんじゃないかと思って思わず身構えたら、くすくす笑われてしまう。
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