220 / 317
不安だから付けさせて?
5
しおりを挟む
***
私、結婚に際しては、漠然とお母さんからの同意が要ると言うことは分かっていたけれど、その他の詳細については調べたりしたことがなくて知らないことばかりだった。
だから私の疑問のあれこれに、頼綱が淀みなく色々教えてくれることに感動して。
同時に頼綱が、私と結婚することを本当に真剣に考えて下調べしてくれていたんだな、と実感させられたの。
八千代さんは最初のうちこそ「私なんかが旦那様と同列でそんな重要なお役目をお受けしても宜しいのでしょうか?」と恐縮なさっていたけれど、頼綱が「俺の母親は八千代さんだと思っていますので」と言い切ったことで、ある程度の決心がついたみたい。
「でも……花々里さんはそれで大丈夫でいらっしゃいますか?」
やっとの事、自分からみんなの視線が逸れたのを感じて、「今しかない!」とロールケーキを小さく切り取ってアーンしていたら、八千代さんからのまさかの不意打ち!
私はビクッと身体を跳ねさせて、フォークにさしたばかりのロールケーキの欠片をポロリとお皿に落とした。
クッ。無念!
八千代さんがそれに気付いて「どうぞ」と視線でうながしてくださって。
私は小さく会釈してとりあえず取り落とした欠片を口に放り込む。
ん~。甘くて美味しっ♪
現状を束の間忘れてニンマリしていたら、八千代さんからの視線を感じてハッとする。
あ、えっと、なんだっけ。
そうそう。私はそれでいいのか?でしたよね。
八千代さんったら、こんな私に対しての遠慮が邪魔をしているだなんて、何てご主人様に忠実な人なんだろう。
私なんかよりよっぽど忠犬じゃないですかぁ~!と思いつつ。「もちろんです」ってにっこり笑って太鼓判を押した。
先にロールケーキを食べさせてもらったから。私、超絶ご機嫌ですっ!
そもそも頼綱の話を聞いたら、頼綱が八千代さんに育てられた、というのは痛いほど伝わってきたし……八千代さんの頼綱への接し方を見ていても、使用人として以上の情愛を感じるもの。
もちろんそれは頼綱の、八千代さんへの接し方にしてもそうで。
だから私も、心の底からそれが1番いいと思えたの。
っていうか、これに関しては、正直私がつべこべ言えた立場じゃないとすら思ったくらい。
「分かりました。では頼綱坊っちゃま、花々里さん。福田八千代、おふたりの婚姻届の証人欄の件、謹んでお受けいたします」
八千代さんがやっと承服してくださって、私はホッと胸を撫で下ろして2人の顔を交互に見回した。
そうして満を持して言ったの。
「とりあえず、紅茶が冷めないうちにケーキ、食べちゃいません?」
私、結婚に際しては、漠然とお母さんからの同意が要ると言うことは分かっていたけれど、その他の詳細については調べたりしたことがなくて知らないことばかりだった。
だから私の疑問のあれこれに、頼綱が淀みなく色々教えてくれることに感動して。
同時に頼綱が、私と結婚することを本当に真剣に考えて下調べしてくれていたんだな、と実感させられたの。
八千代さんは最初のうちこそ「私なんかが旦那様と同列でそんな重要なお役目をお受けしても宜しいのでしょうか?」と恐縮なさっていたけれど、頼綱が「俺の母親は八千代さんだと思っていますので」と言い切ったことで、ある程度の決心がついたみたい。
「でも……花々里さんはそれで大丈夫でいらっしゃいますか?」
やっとの事、自分からみんなの視線が逸れたのを感じて、「今しかない!」とロールケーキを小さく切り取ってアーンしていたら、八千代さんからのまさかの不意打ち!
私はビクッと身体を跳ねさせて、フォークにさしたばかりのロールケーキの欠片をポロリとお皿に落とした。
クッ。無念!
八千代さんがそれに気付いて「どうぞ」と視線でうながしてくださって。
私は小さく会釈してとりあえず取り落とした欠片を口に放り込む。
ん~。甘くて美味しっ♪
現状を束の間忘れてニンマリしていたら、八千代さんからの視線を感じてハッとする。
あ、えっと、なんだっけ。
そうそう。私はそれでいいのか?でしたよね。
八千代さんったら、こんな私に対しての遠慮が邪魔をしているだなんて、何てご主人様に忠実な人なんだろう。
私なんかよりよっぽど忠犬じゃないですかぁ~!と思いつつ。「もちろんです」ってにっこり笑って太鼓判を押した。
先にロールケーキを食べさせてもらったから。私、超絶ご機嫌ですっ!
そもそも頼綱の話を聞いたら、頼綱が八千代さんに育てられた、というのは痛いほど伝わってきたし……八千代さんの頼綱への接し方を見ていても、使用人として以上の情愛を感じるもの。
もちろんそれは頼綱の、八千代さんへの接し方にしてもそうで。
だから私も、心の底からそれが1番いいと思えたの。
っていうか、これに関しては、正直私がつべこべ言えた立場じゃないとすら思ったくらい。
「分かりました。では頼綱坊っちゃま、花々里さん。福田八千代、おふたりの婚姻届の証人欄の件、謹んでお受けいたします」
八千代さんがやっと承服してくださって、私はホッと胸を撫で下ろして2人の顔を交互に見回した。
そうして満を持して言ったの。
「とりあえず、紅茶が冷めないうちにケーキ、食べちゃいません?」
1
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
溺愛なんてされるものではありません
彩里 咲華
恋愛
社長御曹司と噂されている超絶イケメン
平国 蓮
×
干物系女子と化している蓮の話相手
赤崎 美織
部署は違うが同じ会社で働いている二人。会社では接点がなく会うことはほとんどない。しかし偶然だけど美織と蓮は同じマンションの隣同士に住んでいた。蓮に誘われて二人は一緒にご飯を食べながら話をするようになり、蓮からある意外な悩み相談をされる。 顔良し、性格良し、誰からも慕われるそんな完璧男子の蓮の悩みとは……!?
イケメンエリート軍団の籠の中
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり
女子社員募集要項がネットを賑わした
1名の採用に300人以上が殺到する
松村舞衣(24歳)
友達につき合って応募しただけなのに
何故かその超難関を突破する
凪さん、映司さん、謙人さん、
トオルさん、ジャスティン
イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々
でも、なんか、なんだか、息苦しい~~
イケメンエリート軍団の鳥かごの中に
私、飼われてしまったみたい…
「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる
他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる