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不安だから付けさせて?

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 私、結婚に際しては、漠然とお母さんからの同意が要ると言うことは分かっていたけれど、その他の詳細については調べたりしたことがなくて知らないことばかりだった。

 だから私の疑問のあれこれに、頼綱よりつなよどみなく色々教えてくれることに感動して。

 同時に頼綱が、私と結婚することを本当に真剣に考えて下調べしてくれていたんだな、と実感させられたの。


 八千代さんは最初のうちこそ「わたくしなんかが旦那様と同列でそんな重要なお役目をお受けしても宜しいのでしょうか?」と恐縮なさっていたけれど、頼綱が「俺の母親は八千代さんだと思っていますので」と言い切ったことで、ある程度の決心がついたみたい。


「でも……花々里かがりさんはそれで大丈夫でいらっしゃいますか?」

 やっとの事、自分からみんなの視線が逸れたのを感じて、「今しかない!」とロールケーキを小さく切り取ってアーンしていたら、八千代さんからのまさかの不意打ち!

 私はビクッと身体を跳ねさせて、フォークにさしたばかりのロールケーキの欠片をポロリとお皿に落とした。

 クッ。無念!

 八千代さんがそれに気付いて「どうぞ」と視線でうながしてくださって。
 私は小さく会釈してとりあえず取り落とした欠片を口に放り込む。


 ん~。甘くて美味おいしっ♪

 現状を束の間忘れてニンマリしていたら、八千代さんからの視線を感じてハッとする。

 あ、えっと、なんだっけ。
 そうそう。私はそれでいいのか?でしたよね。

 八千代さんったら、こんな私に対しての遠慮が邪魔をしているだなんて、何てご主人様に忠実な人なんだろう。
 私なんかよりよっぽど忠犬じゃないですかぁ~!と思いつつ。「もちろんです」ってにっこり笑って太鼓判を押した。

 先にロールケーキを食べさせてもらったから。私、超絶ご機嫌ですっ!


 そもそも頼綱よりつなの話を聞いたら、頼綱が八千代さんに育てられた、というのは痛いほど伝わってきたし……八千代さんの頼綱への接し方を見ていても、使用人として以上の情愛を感じるもの。

 もちろんそれは頼綱の、八千代さんへの接し方にしてもそうで。

 だから私も、心の底からそれが1番いいと思えたの。
 っていうか、これに関しては、正直私がつべこべ言えた立場じゃないとすら思ったくらい。


「分かりました。では頼綱坊っちゃま、花々里かがりさん。福田八千代、おふたりの婚姻届の証人欄の件、謹んでお受けいたします」

 八千代さんがやっと承服してくださって、私はホッと胸を撫で下ろして2人の顔を交互に見回した。

 そうして満を持して言ったの。


「とりあえず、紅茶が冷めないうちにケーキ、食べちゃいません?」
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