上 下
212 / 317
この味、覚えてる!

9

しおりを挟む
***

 幸い、アレコレ思い悩んでいた割に、お昼に八千代さんお手製のお弁当に舌鼓したつづみを打って、お腹が一杯になったら、私、割とすんなり眠りに落ちることができて。

 まさに食っちゃ寝を素でいってしまったのだけれど、カーテンの隙間から西日が差し込んできて顔を照らす気配で目が覚めたら、恐ろしいことに17時を過ぎていた。

 食べたのは正午過ぎだったから、実に4時間以上寝ていたみたい!

 食べてすぐに寝たら牛になるよ?って言うのはよく聞く言葉だけど、いまの私は豚さんになるのが怖くて堪りません!

 あ、でもでも私ね、キャラメルは手をつけずにおけたの、自分で自分を褒めてあげたいっ!
 頼綱よりつなにも食べさせてあげたいって気持ちが、お腹の虫を調伏ちょうぶくしたのよ!?

 すごくない?

 布団の中、机に置いたままのキャラメルの箱を眺めて「よし!」とガッツポーズのつもりで拳を握ったら、お腹の虫が不満そうに「ぐぅー!」と鳴った。

 ダメダメ!
 今は食べさせてあげないんだからね?



 あと数時間もしたら頼綱が帰ってくると思ったら、ソワソワとワクワクが止まらなくて口の中に生唾が浮いてきた。

 あ。違う、生唾は間違い! 頼綱は食べ物じゃないっ!

 ――キャラメルから一旦、思考を切り離さなきゃ!


 結局そこからは私、布団の中で右に左にゴロゴロゴロゴロ転がりながら、甘い甘い味に思いを馳せながら過ごしたの。


 八千代さんの手作りキャラメルってば、ホント手強いんだもん!


***


花々里かがり、帰ったよ。ちゃんと良い子にしていたかね?」

 頼綱よりつなは仕事から帰って手洗い・うがいをするや否や、着替えなどそっちのけですぐに私の部屋へ様子を見にきてくれた。

「お帰りなさい、頼綱っ!」

 にっこり笑って言ったら、

「体調は?」

 心配そうに聞かれて、私は心配ない旨をガッツポーズをして懸命に表した。


 鞄を自室に置いてきてすらいない頼綱に、愛しさが込み上げて、ギュッと抱きつきたい衝動を身振り手振りに転嫁したともいう。

 しっかり眠ったお陰で、頭痛はすっかり治まっていて、頼綱を認めるなり布団に身体を起こしたけれど何ともなかったから。

 そのことにホッとしつつ、私はずっと気になっていたことを口にせずにはいられないの。


「疲れたでしょう? 一緒にキャラメル食べよう!?」


 ってちょっと待って。
 違う、そうじゃない。


「あ、あのね、キャラメルも大事なんだけど。私、頼綱にひとつだけ教えて欲しい事があるの。えっと……長くなるかもだし……食べながら話そう?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜

湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」 30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。 一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。 「ねぇ。酔っちゃったの……… ………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」 一夜のアバンチュールの筈だった。 運命とは時に残酷で甘い……… 羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。 覗いて行きませんか? ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ・R18の話には※をつけます。 ・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。 ・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

好きすぎて、壊れるまで抱きたい。

すずなり。
恋愛
ある日、俺の前に現れた女の子。 「はぁ・・はぁ・・・」 「ちょっと待ってろよ?」 息苦しそうにしてるから診ようと思い、聴診器を取りに行った。戻ってくるとその女の子は姿を消していた。 「どこいった?」 また別の日、その女の子を見かけたのに、声をかける前にその子は姿を消す。 「幽霊だったりして・・・。」 そんな不安が頭をよぎったけど、その女の子は同期の彼女だったことが判明。可愛くて眩しく笑う女の子に惹かれていく自分。無駄なことは諦めて他の女を抱くけれども、イくことができない。 だめだと思っていても・・・想いは加速していく。 俺は彼女を好きになってもいいんだろうか・・・。 ※お話の世界は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。 ※いつもは1日1~3ページ公開なのですが、このお話は週一公開にしようと思います。 ※お気に入りに登録してもらえたら嬉しいです。すずなり。 いつも読んでくださってありがとうございます。体調がすぐれない為、一旦お休みさせていただきます。

居場所を無くした孤独女子は、エリート上司に甘く囲われる〜二人で美味しい同棲生活〜《R-18》

清澄 セイ
恋愛
山田来未(くるみ)、二十四歳。 今日、会社を辞めてきました。 さて、明日からどうしましょう。 なんて悩む暇もなく。 「俺の家に、住んでよ」 「不束者ですが」 恋人でもない人と、同棲することになりました。 お互いに、恋愛感情なんてない。 はずなのに。 「可愛い、最高に」 「なぁこっちきて?寂しいから」 「君がいる部屋が一番落ち着く」 こんなの、好きにならないでって方が無理です。 真面目な不憫系女子×不器用甘やかし系男子 同棲から始まるほのぼのラブ。 ※別名義で他サイトにも公開しています。

十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす

和泉杏咲
恋愛
私は、もうすぐ結婚をする。 職場で知り合った上司とのスピード婚。 ワケアリなので結婚式はナシ。 けれど、指輪だけは買おうと2人で決めた。 物が手に入りさえすれば、どこでもよかったのに。 どうして私達は、あの店に入ってしまったのだろう。 その店の名前は「Bella stella(ベラ ステラ)」 春の空色の壁の小さなお店にいたのは、私がずっと忘れられない人だった。 「君が、そんな結婚をするなんて、俺がこのまま許せると思う?」 お願い。 今、そんなことを言わないで。 決心が鈍ってしまうから。 私の人生は、あの人に捧げると決めてしまったのだから。 ⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚ 東雲美空(28) 会社員 × 如月理玖(28) 有名ジュエリー作家 ⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚

処理中です...