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離さない
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「お弁当とおやつは私が用意しておきましたので、これを持って行ってらっしゃいませ」
時折痛む頭に眉をしかめながらもバタバタと朝食を済ませて身支度を整える。
いつもならお代わりをするご飯が一膳しか食べられなかったのは、時折思い出したようにズキン!と痛む頭のせいかな。
今朝はお弁当を作り損ねてしまったから、学食かどこかで何か調達するしかない?と思いながら廊下に出たところで、八千代さんが和柄の小さな風呂敷包みを手渡してくださった。
これが、八千代さんが先程おっしゃった「手立てを講じる」の一端なのかしらと思って。
「あ、あのっ」
だけど本来ならば私も八千代さんと一緒に朝食作りをしないといけない立場だったのに……昼食までっ!と思ったら恐縮してしまう。
寝坊した挙句、やるべきお仕事をすっぽかしたばかりか、本来ならば私が自分で何とかすべきお弁当まで準備して頂いて……。
しかも今、サラリとおやつまで入っているようなこと、おっしゃいませんでしたか!?
至れり尽くせり過ぎて、素直に甘えていいものか戸惑ってしまう。
受け取ったばかりの可愛らしい包みを見て、思わず眉根が寄って。
本当下っ端の新人お手伝いさんのくせに、何やってるのよ私!ってただただ情けなさが募った。
無意識に溜め息を落とした私に、「花々里さん、私、頼綱坊っちゃまからお聞きしたんでございますよ? 昨晩、とうとう坊っちゃまからのプロポーズをお受けになられたんでございましょう!? おめでとうございます!」とにっこりされる。
だから、坊っちゃまの許嫁である花々里さんに対して、私がアレコレお世話を焼くのは当たり前のことなのでございます、と言いたげな八千代さんに、私は瞳を見開いた。
「で、でもっ」
頼綱とは今後のことについてまだ何も話していないし、八千代さんにそこまでして頂く義理はまだ私にはないのですっ。
そう言い募ろうとしたところで、頼綱が私の背後にやってきて。
「花々里。さっき、八千代さんからも頼まれたし、今日は俺が愛するキミを学校まで送っていくからね?」
とか言って、話をややこしくするの。
空気を読まないのほほんとした頼綱の口調に、思わず責めるような気持ちを込めて、振り返りざま彼を睨みつけたら、「ん? どうしたの? 八千代さんと何かあったかね?」とか!
八千代さんと、というより貴方と!なんですけどっ。
そんな思いで、「何で私に無断で八千代さんに話しちゃったんですかっ」と頼綱に詰め寄ったら、「まずいことなんて何ひとつないと思うけど?」とキョトンとされた。
まずいと言うより、私の気持ちの整理の問題なのに!と思うこちらの心情なんて知らぬげに、澄ました顔で頼綱が続ける。
「お弁当とおやつは私が用意しておきましたので、これを持って行ってらっしゃいませ」
時折痛む頭に眉をしかめながらもバタバタと朝食を済ませて身支度を整える。
いつもならお代わりをするご飯が一膳しか食べられなかったのは、時折思い出したようにズキン!と痛む頭のせいかな。
今朝はお弁当を作り損ねてしまったから、学食かどこかで何か調達するしかない?と思いながら廊下に出たところで、八千代さんが和柄の小さな風呂敷包みを手渡してくださった。
これが、八千代さんが先程おっしゃった「手立てを講じる」の一端なのかしらと思って。
「あ、あのっ」
だけど本来ならば私も八千代さんと一緒に朝食作りをしないといけない立場だったのに……昼食までっ!と思ったら恐縮してしまう。
寝坊した挙句、やるべきお仕事をすっぽかしたばかりか、本来ならば私が自分で何とかすべきお弁当まで準備して頂いて……。
しかも今、サラリとおやつまで入っているようなこと、おっしゃいませんでしたか!?
至れり尽くせり過ぎて、素直に甘えていいものか戸惑ってしまう。
受け取ったばかりの可愛らしい包みを見て、思わず眉根が寄って。
本当下っ端の新人お手伝いさんのくせに、何やってるのよ私!ってただただ情けなさが募った。
無意識に溜め息を落とした私に、「花々里さん、私、頼綱坊っちゃまからお聞きしたんでございますよ? 昨晩、とうとう坊っちゃまからのプロポーズをお受けになられたんでございましょう!? おめでとうございます!」とにっこりされる。
だから、坊っちゃまの許嫁である花々里さんに対して、私がアレコレお世話を焼くのは当たり前のことなのでございます、と言いたげな八千代さんに、私は瞳を見開いた。
「で、でもっ」
頼綱とは今後のことについてまだ何も話していないし、八千代さんにそこまでして頂く義理はまだ私にはないのですっ。
そう言い募ろうとしたところで、頼綱が私の背後にやってきて。
「花々里。さっき、八千代さんからも頼まれたし、今日は俺が愛するキミを学校まで送っていくからね?」
とか言って、話をややこしくするの。
空気を読まないのほほんとした頼綱の口調に、思わず責めるような気持ちを込めて、振り返りざま彼を睨みつけたら、「ん? どうしたの? 八千代さんと何かあったかね?」とか!
八千代さんと、というより貴方と!なんですけどっ。
そんな思いで、「何で私に無断で八千代さんに話しちゃったんですかっ」と頼綱に詰め寄ったら、「まずいことなんて何ひとつないと思うけど?」とキョトンとされた。
まずいと言うより、私の気持ちの整理の問題なのに!と思うこちらの心情なんて知らぬげに、澄ました顔で頼綱が続ける。
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