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わーん、ごめんなさいっ!
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頼綱は私の顔を見るなり、
「何で風呂から出てこんな場所に迷い込むかなぁ」
すごく疑問符満載な顔をして眉根を寄せて。
私、無駄とは知りながらも必死で言い訳をしたの。
「お、お風呂からじゃないもんっ。一回自室に戻ったから……私の部屋からだよっ!?」
一生懸命言い募る私をさえぎって、「それにしたってキミの自室は割と風呂に近い位置だから、言い訳にはならないと思うよ? ついでに言うと俺の部屋も風呂場から近い」と苦笑されてしまった。
頼綱は私の手をグイグイ引っ張りながら、「ここが風呂場」、「ここが花々里の部屋」とアナウンスをしてくれて。
私の部屋から本当に目と鼻の先――十数歩程度の距離――の自室に着くなり「そしてここが俺の部屋」と言って私を振り返ると、「この距離で迷子になれたの、不思議だと思わない?」って聞いてくるの。
本当、頼綱の部屋、ぐうの音も出ないほどすぐそこで……。
きっと考え事をしていたからだとは思うけれど、この距離で迷子になったと思うと、さすがに私も何にも言い返せませんでした。
***
「さて、じゃあ足の手当てから始めようか」
言われて、寝床を指さされた私はソワソワと視線を彷徨わせる。
「あ、あの、私、あっちの椅子でもよろしくってよ?」
部屋の片隅に机と椅子を発見した私は、そっちでいいよ?と頼綱を見つめた。
緊張のあまりどこのお嬢様ですか!?みたいな言葉選びをしてしまったことにさえも、頓着していられないくらい気持ちがざわついてるの。
ほら、だって、車でも椅子の上に膝立ちだったのよ?
だから頼綱の部屋でもそれで大丈夫だと思うの。
ご主人様のベッドに近づくだなんて、滅相もございません!
頼綱の返事を待たずにいそいそと椅子の方へ行こうとしたら、ギュッと手を掴まれてそのまま有無を言わせずベッドに座らされてしまった。
ひー!
ベッド怖ぁーい!
「車の中ではシートに座るしか無かっただけだろう? 何故広い部屋でわざわざそんな窮屈なポーズを取る必要がある?」
ズイッと顔を近づけられた私は、慌てて顔を背けた。
髪を下ろしたその姿、見慣れてないんですってばぁーっ!
「それにあの椅子は回転椅子だ。花々里のことだから何かするたびにくるくる回りそうで嫌なんだがね?」
私の緊張なんてお構いなし。
頼綱がズンズン近づいてくるから私はどんどんのけぞって。
だってだって! お互いパジャマって……何だか恥ずかしいんだもん!
自分のパジャマ姿に視線を移した私は、ハッとした。
「何で風呂から出てこんな場所に迷い込むかなぁ」
すごく疑問符満載な顔をして眉根を寄せて。
私、無駄とは知りながらも必死で言い訳をしたの。
「お、お風呂からじゃないもんっ。一回自室に戻ったから……私の部屋からだよっ!?」
一生懸命言い募る私をさえぎって、「それにしたってキミの自室は割と風呂に近い位置だから、言い訳にはならないと思うよ? ついでに言うと俺の部屋も風呂場から近い」と苦笑されてしまった。
頼綱は私の手をグイグイ引っ張りながら、「ここが風呂場」、「ここが花々里の部屋」とアナウンスをしてくれて。
私の部屋から本当に目と鼻の先――十数歩程度の距離――の自室に着くなり「そしてここが俺の部屋」と言って私を振り返ると、「この距離で迷子になれたの、不思議だと思わない?」って聞いてくるの。
本当、頼綱の部屋、ぐうの音も出ないほどすぐそこで……。
きっと考え事をしていたからだとは思うけれど、この距離で迷子になったと思うと、さすがに私も何にも言い返せませんでした。
***
「さて、じゃあ足の手当てから始めようか」
言われて、寝床を指さされた私はソワソワと視線を彷徨わせる。
「あ、あの、私、あっちの椅子でもよろしくってよ?」
部屋の片隅に机と椅子を発見した私は、そっちでいいよ?と頼綱を見つめた。
緊張のあまりどこのお嬢様ですか!?みたいな言葉選びをしてしまったことにさえも、頓着していられないくらい気持ちがざわついてるの。
ほら、だって、車でも椅子の上に膝立ちだったのよ?
だから頼綱の部屋でもそれで大丈夫だと思うの。
ご主人様のベッドに近づくだなんて、滅相もございません!
頼綱の返事を待たずにいそいそと椅子の方へ行こうとしたら、ギュッと手を掴まれてそのまま有無を言わせずベッドに座らされてしまった。
ひー!
ベッド怖ぁーい!
「車の中ではシートに座るしか無かっただけだろう? 何故広い部屋でわざわざそんな窮屈なポーズを取る必要がある?」
ズイッと顔を近づけられた私は、慌てて顔を背けた。
髪を下ろしたその姿、見慣れてないんですってばぁーっ!
「それにあの椅子は回転椅子だ。花々里のことだから何かするたびにくるくる回りそうで嫌なんだがね?」
私の緊張なんてお構いなし。
頼綱がズンズン近づいてくるから私はどんどんのけぞって。
だってだって! お互いパジャマって……何だか恥ずかしいんだもん!
自分のパジャマ姿に視線を移した私は、ハッとした。
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