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わーん、ごめんなさいっ!

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 そんな折、いつの間にか出迎えてくださっていたらしい八千代さんに、背後からいきなり「お帰りなさいませ」と声を掛けられて、思わずビクッとなってしまった。

「お風呂の支度したくは出来ておりますので」

 ひゃわわっ。
 もしかして、頼綱よりつなに抱っこされてたの、見られたりしましたかっ!?


 だとしたら、めちゃくちゃ恥ずかしい。

 どう言い訳をしたら……と考えているうちに、八千代さんは私がここに初めて来た日のように、お風呂の始末は私に一任する旨を伝えて、
「それではわたくしは先にお休みさせていただきます」
 と言ってから、どこか嬉しげに私と頼綱を交互に見つめて。

 おもむろに
「頼綱坊っちゃま、ファイトでございます」
 何故か頼綱にだけ謎の言葉を残してにっこり笑うと、頭を下げて自室に下がってしまう。


 八千代さん、今のどういう意味ですか!?


 ねぇ、頼綱には意味、分かったの?
 今、貴方は何を応援されたのっ!?


 八千代さんの言動に落ち着かない私だったけれど、頼綱は特に何も変化はなくて。

 去っていく八千代さんの後ろ姿にお休みを言うなり、私の足元にチラリと視線を投げかけてきた。

「風呂上がりに新しい絆創膏を貼ってあげるからね」

 優しい声音で猫撫でるように言われて、やたら恥ずかしくなった私が、

「じっ、自分でできるよっ?」

 慌てて言ったら、「鳥飼とりかいにはやらせたのに、にはさせたくない理由は?」と睨まれてしまった。


 ひぃーっ! これ、絶対貼ってもらった方が良いやつ!


「ま、間違えました! あのっ、わたっ、私っ、ぶっ
不器用なので……やっぱりお願いしますっ」


 手にしたままのパンプスを振り回しながら言って、あ、靴、シューズクロークに仕舞わないと!とか、現実逃避をしてしまったのは……仕方がないよね?



 それに私、八千代さんに重要なことを聞きそびれてしまったのも気になってるのよ?

 頼綱はあんなに敏感に甘い匂いを嗅ぎ取ったくせに、気にならないのかな?
 それとも何ができあがってるか、経験値の差で知ってるとか……かな?


 でも、だったら尚更。
 私、声を大にして言いたいっ!


 八千代さぁーん、家中に甘い匂いが満ち溢れてますけれど、作ったお菓子は何ですかぁー!?

 それ、私も食べられますか!?
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