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わーん、ごめんなさいっ!

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 ――私のことめとるとか何とか言ったから!

 そう続けようとして、でもそう言ったら嫌だ嫌だと言いながらも、そうなることを受け入れていたように思えちゃう?と思いいたって。

「うっ、有無を言わせず押し込んだからっ」

 心に嘘を含んだ理由付けは、間近に迫る頼綱よりつなの顔をじっと見上げたまま言うには重すぎた。

 無意識にふいっと目を逸らしたら、全てお見通しだよ?とばかりにクスッと笑われてしまう。


「まぁ花々里かがりがそう言うのなら、そう言うことにしておこうか。でも――」

 そこで私の耳元に唇を寄せると、

「今日は俺、花々里かがりのこと、助手席そこに押し込んでないからね?」

 って低く甘くささやかれる。

 確かにそれはその通りで、反論の余地なんてなくて――。

「なっ、……」
 
 首をすくめて耳を押さえながら「慣れだもん!」って言ったら、「光栄です、姫」って頬にチュッと口付けられた。

「ひゃわっ!」

 驚きのあまり変な声が出て、頼綱にクスクス笑われてしまう。

 笑わないでよぅ!
 だってだってだって!
 いきなりほっぺにキスしてくるとか!

 どう考えても反則だもん、頼綱のバカぁー!



***


花々里かがり、お願いがあるんだ」

 まだ心臓がバクバク言って落ち着かない私に、頼綱よりつな強請ねだるみたいに声のトーンをやわらげてくる。

 彼の方を見られないまま、「おね、がい……?」とつぶやいたら、私の上から頼綱の身体が遠ざかって。

 そのままは恥ずかしいとあんなに思っていたくせに、いざ頼綱の温もりが離れたと感じたら途端に後追いしたい衝動に駆られてしまう。

 無意識に頼綱を見つめた私に、「シートに後ろ向きに膝立ちしてもらえるかな?」とか。

 ん?
 これ、今日午前中に鳥飼とりかいさんからも後部シートで言われたやつ?

 ワンコのさがというべきか。
 乞われるまま頼綱の指示に大人しく従いながら、彼が鰻屋うなぎやさんでもしきりに私の足を気にしていたことを思い出す。


「く、靴擦れなら絆創膏貼ってあるし大丈夫だよ?」


 鰻屋さんで中途半端にしか言えなかった言葉を全て吐き出したら、聞いているのかいないのか。
 無言のままに履いていたパンプスをそっと脱がされて。

 かかとに頼綱の指先が触れたのが分かった。

 鳥飼とりかいさんにそうされた時にはこんなに変な気持ちにはならなかったのに、触れているのが頼綱だと意識した途端、下腹部がキュン、とうずいて落ち着かない気持ちになる。

 と、頼綱が「どんな風になってるか、見せてもらうからね?」って言って。

 え?と思っているうちに絆創膏をペリリと剥がされてしまった。
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