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解除の仕方が分かりません!

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「き、聞いてないっ」

 腹立たしさにぷぅっと頬を膨らませたら、クスッと笑われて。

「今夜はずっと保留になっていたうなぎを食いに行こうかと思ってね」

 と耳打ちされる。

「う、うなっ!?」

 大好きな〝鰻〟という言葉に、思わず身体が弾んでしまうくらい反応して、慌てて背筋をピンと伸ばして座り直す。


「嬉しいかい?」

 聞かれて、私はショップ店員さんの目を気にしながらもコクコクとうなずいた。


「――今日はね、花々里かがりからたくさん嬉しいことをしてもらったから。そのお礼だよ」

 頼綱よりつなにそう耳元でささやかれて、私は思わず彼の方をうかがい見る。

「――特に車の中での……」

 頼綱がそこまで言った瞬間、キスのことを思い出した私は真っ赤になった。

 この人なら、臆面もなく人前でもキスやハグのことを言ってしまいかねない気がして……。

 慌てて「ダメッ!」って頼綱の口を塞ごうと手を伸ばしたのと、

「花々里から食べ物を分けてもらえる日が来るなんて思いもしなかったよ」
 
 と頼綱がクスッと笑ったのとがほぼ同時だった。



「おや? 花々里、何を焦っているのかね?」

 頼綱の方へ手を伸ばした格好でフリーズした私にそう問いかけてきた頼綱の澄ました顔を見て、私は絶対揶揄からかわれた!って確信した。


「よ、頼綱の……意地悪っ!」



 うなぎ、あげたシュークリームの分を取り戻す勢いでたくさん食べてやるんだから!

 何なら頼綱のもつついてやるんだからねっ!?

 覚悟しなさい!



***


 全ての手続きが終わって、元気な花々里かがりに一番似合う色だから、と頼綱よりつなに勧められたレモン色のスマートフォンを手渡された私は、どうしたらいいのか分からずに戸惑ってしまう。


「あ、あの……」

 このままカバーもつけず、裸のままバッグに仕舞っても大丈夫?

 今までの携帯みたいに2つ折りになっていないけれど、画面に傷がついたりしない……?


 何しろ頼綱やといぬしからの貸与品たいよひんだという感覚が拭えない。

 扱いは慎重にしなければ、と思ってしまって。


「カバーとか付けなくてもいいの……かな?」

 ソワソワと手のひらのスマートフォンをこねくり回しながら頼綱を見つめたら、彼より先にショップ店員のお姉さんの目がキラリと輝いた。


「傷防止のために画面保護のフィルムと、ケースを付けられる方が多いですよ」


 言うが早いかすっくと立ち上がって、カウンター内からこちらに出ていらっしゃると、この機種に合うあれこれのオプション品が置かれた棚に導いてくださる。
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