【完結】【R15】そろそろ喰ってもいい頃だよな？〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません！ 謹んでお断り申し上げます！〜

便利だなんて思えません！

7

「ス、マホなんて高くて買えないっ。そ、それに維持費も……」

　やっとのこと金銭面のアレコレを言い募ろうとしたら、

「雇い主が従業員に電話を持たせることに何か問題があるかね？　会社でも外回りの多い人間には仕事用の携帯が支給されるものだよ。まさか知らないわけじゃあるまい？」

　唇にそっと人差し指を当てられて、口封じをされた上でそう問いかけられて。

　それはつまり、そのスマートフォンは頼綱やといぬしからの支給品で、機種代はおろか通信費も頼綱よりつな持ちということでしょうか？

「で、でもっ」

　それはさすがに困る！と言い募ろうとしたら、「使用人と連絡が取れないのは、雇用主としては大変不便なんだがね？」とトドメを刺される。

「いつまでも花々里かがりに俺のスマホを貸しておくわけにもいかないだろう？」

　私の手の中のスマートフォンに視線を投げかけられて、

「もちろん愛しいキミに俺のものを貸すこと自体はやぶさかではないんだがね。そうしたら俺は何を使ってキミに連絡すればいいんだろう？　花々里だって俺に連絡できないよね？　そんなの悲しいじゃないか」

　溜め息混じりにそう付け加えられた私は、何も言い返せなかった。


＊＊＊


「どこを触ってくれても俺は別に構わないけど、まぁとりあえず電話のことだけ教えておこうね」

　黒くてシンプルな背面に、齧りかけのリンゴが描かれたスマートフォン。

　思わず指示されるままに手にしてしまったものの、こんなわけ分かんない高そうなもの、預かれない。

「あ、あのっ、でも」

　ソワソワしながら頼綱よりつなを見つめたら、まるで聞く耳を持たないみたいにスルーされて

「『夏ヶ丘大附属病院』で登録されている番号から着信があった時だけ応答して？　俺からだから」

　と画面を指差しながら説明された。

「出方は分かる？」

　畳みかけるように聞かれた私が、思わずふるふると首を振ったら、懇切丁寧に電話の受け方まで教えてくれた。

「かける時はここから電話帳を開くんだけど――まぁキミからかけてくることはないかな？」

　言われてコクコクうなずいて、思いのほか頼綱の顔が近いことに驚いて息を飲む。

　頼綱、まつげ長いな。

　家にいる時と違って、仕事モードの時の頼綱は髪をオールバックにしているから、余計に目元がくっきり見えて気になってしまう。