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便利だなんて思えません!

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「ちょっとびっくりすることがあって、思わず」

 恐る恐る言ったら、「せめて持って欲しかったんだけどね」と溜め息を落とされた。

「ごめんなさい」

 別にこの携帯に関しては私がお母さんに買ってもらったものだし、月々の支払いも村陰むらかげ家の通帳から落ちている。
 頼綱よりつなに謝ることなんてひとつもないのだけれど、思わずそう言ってしまっていた。

 だって、これが壊れたから私、今日は自分から頼綱に連絡が取れなかったわけで。


「俺に謝る必要はないよ。これは花々里かがりの私物だろう?」

 まるで私の気持ちを察したみたいにふんわり頭を撫でられて、ついでのように「まぁ連絡が取れないのは不便だがね」と付け足された。

 そうなの。私、まさにそこに対して申し訳ないわけで。

 思いながら頼綱を眉根を寄せて見つめたら、

「とりあえずこれを持っておいで?」

 頼綱が白衣のポケットからいつも使っているスマートフォンを取り出して、オフにしていたらしい電源をオンにして私に差し出してきた。

「画面のロックナンバーはに設定してあるから。――外せるよね?」

 言われて手の中のスマートフォンを見つめたら、真っ暗な画面が鏡面になっていて、私の顔が映っているだけだった。

 ん? 私の誕生日、どこに入れるの?

 そもそも何で私の誕生日?とかアレコレ思ったけれど、それを口にするより前に横から伸びた頼綱よりつなの指先に画面をトントンとタップ操作されて、意識がそちらに引っ張られる。

 それと同時、今度は画面に「FACE IDフェイスアイディー」と出て、何これ!?となって。私、英語は嫌いよ!?

FACE IDこれは俺の顔じゃないと開かないからとりあえず――」

 当然だけど持ち主ではない私と対峙たいじしているスマートフォンは、顔認証ではロック解除にならないらしい。

 頼綱が、自分の顔が認証されない角度から、手を伸ばして「ここをタップして――」と、FACE IDの文字に指先でトン、と触れた。

 と、今度は画面に南京錠のマークと「パスコードを入力」という文言、それから数字が表示されて、「次から次に何!?」と思う。

 目まぐるしく変わる画面を見て戸惑う私に、

「下にキーパッドみたいなのがあるだろ? それを押して花々里かがりの誕生日を4桁で入れてごらん?」

 頼綱がうながしてきて、恐る恐る「0210」と押したら、ロックが解けて画面が開いた。

「ひゃっ」

 何これ、何これ。

 あまりの衝撃に、何故私の誕生日で開いちゃうの?とか、そういう疑問がポォーンと飛んではじけた。
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