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色々と予想外です!
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「そうか。じゃあ、そんな素直な花々里に、帰りが遅くなるのに連絡を入れなかったことについて、責めさせてもらっても構わないよね?」
言って、頼綱が私を腕の中に閉じ込める。
「あ、のっ、頼綱っ」
寛道に抱きしめられた時には鼻水のことしか頭になかったのに、頼綱のそれはただただ私の心をざわつかせて。
慌てて喘ぐように息を吸い込んだら、鼻腔を頼綱のにおいが満たしたことにも戸惑いを覚えて身体が跳ねてしまう。
その拍子。肩にかけていたトートバッグがバランスを失って、床にドサッと落ちてしまった。なのにそれにも気が回せないぐらい、心臓がうるさく騒いでいる。
きっと寛道と同じことがあったら「カボチャ!」ってなってたはずなのに、それすら気にならないぐらい今の状態に動転しているのは、八千代さんの作る夕飯の香りがここまで香ってきていてカボチャへの関心が薄れてしまったから、なんて理由じゃないと思う。
「遅くなるならそう連絡をしないと。――八千代さんにも迷惑を掛けてしまうと思わなかったの?」
その言葉にハッとして身じろいだら、私を抱きしめる腕に力が込められて、
「俺も……何かあったんじゃないかと心配したんだよ? 分かってる?」
耳元に静かな声音で落とされた言葉に、全身が粟立った。
「ごめ、なさ……」
耳まで一瞬で熱くなってしまったことに気が付いて、それを頼綱に気付かれたくなくてうつむいたままそう言ったら、
「――明日は大学、何時に終わる?」
と問いかけられて。
明日は1コマほど最後の講義が休講になっていたことを思い出して
「17時前には――」
そう答えたら、
「俺は19時には帰れるから。寄り道しないで家で待っておいで? 連れて行きたいところがある」
と言われて。
思わず顔を上げて「え?」と問いかけたら「いいね?」と念押しされてしまった。
――連れて行きたいところってどこ?
そう思ったけれど、結局聞けず終いで……。
そればかりか、溜め息まじりに「明日も多分キミの幼馴染み殿は花々里を送り迎えするつもりなんだろうね」と話題を変えられてしまう。
いくらなんでも寛道だってそんなに暇じゃないだろうし、それはないと思うよ?、って答えたら「花々里は本当、鈍感だね」って苦笑されてしまった。
「――けど、その鈍さなら大丈夫かな。明日もう1日だけ、幼馴染みの君に俺の花々里を預けることにしよう」
とか。
ねぇ、頼綱。
それ、本気で言ってる?
寛道、そんなに暇じゃないと思うよ?
明日私、迷子になっちゃうかもよ?
いいの?
言って、頼綱が私を腕の中に閉じ込める。
「あ、のっ、頼綱っ」
寛道に抱きしめられた時には鼻水のことしか頭になかったのに、頼綱のそれはただただ私の心をざわつかせて。
慌てて喘ぐように息を吸い込んだら、鼻腔を頼綱のにおいが満たしたことにも戸惑いを覚えて身体が跳ねてしまう。
その拍子。肩にかけていたトートバッグがバランスを失って、床にドサッと落ちてしまった。なのにそれにも気が回せないぐらい、心臓がうるさく騒いでいる。
きっと寛道と同じことがあったら「カボチャ!」ってなってたはずなのに、それすら気にならないぐらい今の状態に動転しているのは、八千代さんの作る夕飯の香りがここまで香ってきていてカボチャへの関心が薄れてしまったから、なんて理由じゃないと思う。
「遅くなるならそう連絡をしないと。――八千代さんにも迷惑を掛けてしまうと思わなかったの?」
その言葉にハッとして身じろいだら、私を抱きしめる腕に力が込められて、
「俺も……何かあったんじゃないかと心配したんだよ? 分かってる?」
耳元に静かな声音で落とされた言葉に、全身が粟立った。
「ごめ、なさ……」
耳まで一瞬で熱くなってしまったことに気が付いて、それを頼綱に気付かれたくなくてうつむいたままそう言ったら、
「――明日は大学、何時に終わる?」
と問いかけられて。
明日は1コマほど最後の講義が休講になっていたことを思い出して
「17時前には――」
そう答えたら、
「俺は19時には帰れるから。寄り道しないで家で待っておいで? 連れて行きたいところがある」
と言われて。
思わず顔を上げて「え?」と問いかけたら「いいね?」と念押しされてしまった。
――連れて行きたいところってどこ?
そう思ったけれど、結局聞けず終いで……。
そればかりか、溜め息まじりに「明日も多分キミの幼馴染み殿は花々里を送り迎えするつもりなんだろうね」と話題を変えられてしまう。
いくらなんでも寛道だってそんなに暇じゃないだろうし、それはないと思うよ?、って答えたら「花々里は本当、鈍感だね」って苦笑されてしまった。
「――けど、その鈍さなら大丈夫かな。明日もう1日だけ、幼馴染みの君に俺の花々里を預けることにしよう」
とか。
ねぇ、頼綱。
それ、本気で言ってる?
寛道、そんなに暇じゃないと思うよ?
明日私、迷子になっちゃうかもよ?
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