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送り狼的な彼
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昨日は食事後に徒歩で頼綱に大学までのルートを案内してもらった。
「あまみや」から帰宅するなり歩きのルートが知りたいとごねた私に、頼綱がもう一度車を出そうとして。
私はそれを押し留めるように「歩きの!」って言い張った。
頼綱からはさんざん「車でも助手席に乗っていれば分かるだろう?」ってぶつくさ言われたけれど「分かるわけないじゃない」とバッサリ切り捨ててやったの。
助手席に乗っていたら景色が違うもの。
頼綱にはきっと理解不能なのね。
行きに通ったはずの道、帰りに逆方向から眺めたら全く違う道に見えちゃう私の苦労が。
きっとそう言ったら「そんなの分かりたくもないけどね」って言われちゃうんだろうなぁ。
「何なら俺が毎朝送り届けてやってもいいんだぞ?」と言う頼綱に、「仕事は?」って聞いたら「仕事前に、だよ」とか。
それ、私、毎朝何時に登校することになるんですかね?
うちの大学、1時限9時からだよ?
頼綱の勤務時間は基本8時からって言ってなかった?
それより前に連れて行かれたら私、7時代には大学にいることになるんですけど?
眉根を寄せてそう言ったら「それは良くないな」って考え込んで。
やっと徒歩で案内してくれる気になったみたい。
***
今朝は私、頼綱に教えられた道をおっかなびっくり一歩一歩踏みしめながら大学へ向かったの。
昨日頼綱と歩いた時、一生懸命目印にしていたもの――道端の真っ赤な車とか、窓際に猫がいた家とか、壁の埋め込み型ポストから郵便物がはみ出していたのとか――がことごとくなくなっていて、ヤダァー、迷子になるー!と思いつつ。
頼綱は早々と仕事に出掛けてしまっていて頼れないし、八千代さんは私の大学の場所を知らない。
自力で何とかするしかないの。
あやふやな記憶を頼りに御神本家から一番最初の交差点でどっちに曲がれば!?ってキョロキョロしていたら、突如電柱の陰から現れた人物にギュッ!と腕を掴まれた。
「――キ……ッ」
キャーッ!って叫ぼうとしたら「バカッ! よく見ろ! 俺だよ」って口を塞がれて。
新手のオレオレ詐欺は電話の垣根も飛び越えて、電柱の陰から襲ってくるようになったんだ!って泣きそうになったら、目の前にヌッと見慣れた容器を突き出された。
――あ。
「あまみや」から帰宅するなり歩きのルートが知りたいとごねた私に、頼綱がもう一度車を出そうとして。
私はそれを押し留めるように「歩きの!」って言い張った。
頼綱からはさんざん「車でも助手席に乗っていれば分かるだろう?」ってぶつくさ言われたけれど「分かるわけないじゃない」とバッサリ切り捨ててやったの。
助手席に乗っていたら景色が違うもの。
頼綱にはきっと理解不能なのね。
行きに通ったはずの道、帰りに逆方向から眺めたら全く違う道に見えちゃう私の苦労が。
きっとそう言ったら「そんなの分かりたくもないけどね」って言われちゃうんだろうなぁ。
「何なら俺が毎朝送り届けてやってもいいんだぞ?」と言う頼綱に、「仕事は?」って聞いたら「仕事前に、だよ」とか。
それ、私、毎朝何時に登校することになるんですかね?
うちの大学、1時限9時からだよ?
頼綱の勤務時間は基本8時からって言ってなかった?
それより前に連れて行かれたら私、7時代には大学にいることになるんですけど?
眉根を寄せてそう言ったら「それは良くないな」って考え込んで。
やっと徒歩で案内してくれる気になったみたい。
***
今朝は私、頼綱に教えられた道をおっかなびっくり一歩一歩踏みしめながら大学へ向かったの。
昨日頼綱と歩いた時、一生懸命目印にしていたもの――道端の真っ赤な車とか、窓際に猫がいた家とか、壁の埋め込み型ポストから郵便物がはみ出していたのとか――がことごとくなくなっていて、ヤダァー、迷子になるー!と思いつつ。
頼綱は早々と仕事に出掛けてしまっていて頼れないし、八千代さんは私の大学の場所を知らない。
自力で何とかするしかないの。
あやふやな記憶を頼りに御神本家から一番最初の交差点でどっちに曲がれば!?ってキョロキョロしていたら、突如電柱の陰から現れた人物にギュッ!と腕を掴まれた。
「――キ……ッ」
キャーッ!って叫ぼうとしたら「バカッ! よく見ろ! 俺だよ」って口を塞がれて。
新手のオレオレ詐欺は電話の垣根も飛び越えて、電柱の陰から襲ってくるようになったんだ!って泣きそうになったら、目の前にヌッと見慣れた容器を突き出された。
――あ。
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