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隠れ家的なんとかと言うやつ
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「雨宮、こちらは俺の許婚の――」
「奉公人の!! 村陰ですっ」
許婚、というのをかき消すように被せたら「使用人とふたりきりで料亭にくるとかおかしいだろう」と頼綱に至極まともな駄目出しをされる。
でもっ。
私はあくまでも……あなたとは雇用契約で結ばれただけの存在でいたいの。って言うか、いなきゃいけないのっ!
「婚姻届にもサインしておきながら情ない女だ」
とか……。
話がややこしくなるのでいらないこと言わないでいただけます!?
「御神本先輩、今日は個室でいいんですよね?」
私の心配をよそに、雨宮さんが至ってマイペースにそう言った。
店員さん……いやもしかしたら後輩としての分を弁えた言動なのかしら?と思いつつ。
頼綱との関係性を突っ込まれなかったのは喜ぶべきことなはずなのに、言われなかったら言われなかったで何となく寂しく感じてしまうのは何故だろう。
横に佇む頼綱が聞いたら、「それは俺と許嫁だと、雨宮からキミが認識されたいからに他ならんのじゃないのかね?」とニヤリとされそうだと思って、私は慌ててふるふると顔を振った。
それで結局「花々里。何故水浴び後の犬みたいなことを」と頼綱に笑われてしまって。
その表情にはありありと、「花々里は俺のこと意識してくれてるんだろう?」と書いてあるようで、私は悔しくてうつむいた。
***
「昼間っから奥方を駆り出して悪いね」
うつむく私の横で頼綱がそんなことを言って、私はどういう意味だろう?と不思議に思った。
「構いませんよ」
雨宮さんがすぐにそう返したところをみると2人の間では意味が通っているみたい。
何よ、私だけ〝除け者〟にして。
何となく疎外感にモヤモヤとして、頼綱のスーツの裾をギュッと握って「バカ」という気持ちを込めて2回ほどグッグッと引っ張った。
頼綱は私の突然の奇行に目を見開くと「スキ?」とつぶやいて。
何でそうなるの!と思った私は「違っ!」と慌てて頼綱から手を離す。
でも頼綱は私の手をギュッと握ると、「離して!」とプンスカする私を無視して話し出した。
「あまみやにはね、2人向けの個室がひとつだけあるんだ。完全予約制のそこを使うときは雨宮の奥方の協力が必要不可欠でね」
そう言って、私の手を引いて店の奥手に向けて歩き出す。
「雨宮1人で切り盛りしてる店だから。カウンターが詰まってくると個室への配膳なんかまでは手が回らなくなるんだ。だからって客に取りに来させるわけにもいかないだろう?」
そこで私の瞳をじっと覗き込んでくると
「内助の功ってやつだ。実にうらやましい」
と小さく吐息を落とした。
「奉公人の!! 村陰ですっ」
許婚、というのをかき消すように被せたら「使用人とふたりきりで料亭にくるとかおかしいだろう」と頼綱に至極まともな駄目出しをされる。
でもっ。
私はあくまでも……あなたとは雇用契約で結ばれただけの存在でいたいの。って言うか、いなきゃいけないのっ!
「婚姻届にもサインしておきながら情ない女だ」
とか……。
話がややこしくなるのでいらないこと言わないでいただけます!?
「御神本先輩、今日は個室でいいんですよね?」
私の心配をよそに、雨宮さんが至ってマイペースにそう言った。
店員さん……いやもしかしたら後輩としての分を弁えた言動なのかしら?と思いつつ。
頼綱との関係性を突っ込まれなかったのは喜ぶべきことなはずなのに、言われなかったら言われなかったで何となく寂しく感じてしまうのは何故だろう。
横に佇む頼綱が聞いたら、「それは俺と許嫁だと、雨宮からキミが認識されたいからに他ならんのじゃないのかね?」とニヤリとされそうだと思って、私は慌ててふるふると顔を振った。
それで結局「花々里。何故水浴び後の犬みたいなことを」と頼綱に笑われてしまって。
その表情にはありありと、「花々里は俺のこと意識してくれてるんだろう?」と書いてあるようで、私は悔しくてうつむいた。
***
「昼間っから奥方を駆り出して悪いね」
うつむく私の横で頼綱がそんなことを言って、私はどういう意味だろう?と不思議に思った。
「構いませんよ」
雨宮さんがすぐにそう返したところをみると2人の間では意味が通っているみたい。
何よ、私だけ〝除け者〟にして。
何となく疎外感にモヤモヤとして、頼綱のスーツの裾をギュッと握って「バカ」という気持ちを込めて2回ほどグッグッと引っ張った。
頼綱は私の突然の奇行に目を見開くと「スキ?」とつぶやいて。
何でそうなるの!と思った私は「違っ!」と慌てて頼綱から手を離す。
でも頼綱は私の手をギュッと握ると、「離して!」とプンスカする私を無視して話し出した。
「あまみやにはね、2人向けの個室がひとつだけあるんだ。完全予約制のそこを使うときは雨宮の奥方の協力が必要不可欠でね」
そう言って、私の手を引いて店の奥手に向けて歩き出す。
「雨宮1人で切り盛りしてる店だから。カウンターが詰まってくると個室への配膳なんかまでは手が回らなくなるんだ。だからって客に取りに来させるわけにもいかないだろう?」
そこで私の瞳をじっと覗き込んでくると
「内助の功ってやつだ。実にうらやましい」
と小さく吐息を落とした。
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